【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(47)

港町でパキスタンと新潟を知る①

坪野 和子

 みなさま、ワクチン接種、いかがですか? 私は9月7日に二回目の接種を受けた。なかなか予約が取れなかったが、ネットで3回目の予約受付の日の朝から開始を待って取れた。
 先月お伝えしたように、8月はパキスタン出身の友人の事務所がある新潟に滞在していた。東京近郊の団地で育ち、若い頃ヒマラヤのチベット圏で足掛け3年生活し、帰国してからもまた団地暮らしをしていた私の二重の意味での異文化体験だった。

 …ということで今回は新潟での見聞録。ただし、外出は歩いて郵便局に郵便を出しに行ったことと、1人でバスに乗って温泉に行ったことくらいだ。そして車から降ろして貰ってほぼ一日置きの夕方、自分用の食料や日用品の買い物をスーパーセンター(大型スーパー+ホームセンター)に「せんせい、30分ね」と言われて広い店を走るように「娑婆の空気」を吸っていた程度だ。イスラム教の習慣だから、コミュニティで噂になったらここでは暮らしていけなくなるからだとのことだ。

 さらにご近所の地元民は「電気を消し忘れて仕事にでかけると警察を呼ぶ、なにかあると警察を呼ぶ」というくらい、見張られているようなくらい外国出身者に注意を払っているそうだ。「ヒマな人たちなのね」というと嬉しそうだった。「そう、みんなヒマなんだよ、東京とは違う」(東京でもそういう人はいない訳ではないが他人に関心を持つ人は比較的少ないだろうとは思う)ある意味、イスラム奥さんの貴重な疑似体験となった。

 ◆ 0.お断り ※個人差があります

 このテーマは在日パキスタン出身者個人を扱っているように述べているが、ノンフィクションではあるが、本来の個人を特定されないように、当事者を通して知り得たことをもまとめて平均化した。フィクションと同じ感覚でご高覧いただけると幸甚である。また今回のトピックはこの足掛け1年をコンパクトにまとめたものである。また国民性の中には「イトコ婚」による遺伝的な要因もあると考えられる言動の特質を持つ人も少なくない。
※パキスタンではなくオマーンの研究者たちが「イトコ婚」に関する言及とほぼ一致している観察ができることによる私の考察である。

 ◆ 1.ゴミ捨てばなし① 朝の風景から

 この家?事務所?に宿泊すると、朝はものすごく幸せな気分になれる。鶯の声で目覚める、港の汽笛で身体がしゃんとする。自宅だと耳が遠いご近所のかたのテレビの大音声によって起きる。目覚めと起床は別だと知った。
 ここでの生活の午前中は、まるで相撲部屋のおかみのように主婦業が中心となっていた。洗濯物を干している時間帯、午前8時前くらいに町内会のゴミを集めて運搬する当番のような奥様方が、ゴミの車を牽いて前を通りすぎる。日本出身者と思われる日本語話者の奥様方のファッションに驚く。バンダナ、パーカー、エプロン、Tシャツ、Gパン、スニーカー。まるで制服のようだった。1カ月滞在して毎日どのかたも同じだった。日本のドレスコードだと確信した。同じファッションをしていれば、所属一員であるという無意識な無言の意思表示であるように感じた。

 一方、この近隣に住むパキスタン出身者たちはこの地域でゴミを捨てたがらない。ゴミを見張っている人が必ずクレームをつけるからだそうだ。私の友人の場合、私が来ていることをどこかから見張っているらしく、私がいる期間は友人がゴミを捨てに行って、そのゴミを確認してもクレームをつけないらしい。
 「せんせい、ゴミちょうだい」ゴミ収集車が来る直前に「男の家事」のように私に家と事務所のゴミを集めるように言う。それを出して自分の車のヤードへ修理・整備・解体の仕事に向かう。彼は横浜が長い。私の東京在住インド人のオンライン生徒たちも「男の家事」でゴミ出しをして出勤(この1年半は在宅ワーク)をしている。他に身近な東京近郊の日本人主夫も、他の家事を行っていてもゴミ出しをしている。どうやら新潟のこの土地ではゴミ出しは「女の仕事」、東京近郊では「男の家事」なのかもしれない。

 ◆ 2.ゴミ捨て話②

 ではパキスタン出身者はどこにゴミを捨てているのか?
 まず、捨てていない…がある。1年前、友人の自宅兼事務所の敷地内は「ゴミ屋敷」だった。生ゴミはキッチンに放り込んでいたし、ベッドの下からお菓子の包装が出てきたし、いろいろなゴミが家と事務所に散乱していた。またあちらこちらに1円から500円、外国硬貨が落ちていた。日本円だけでも¥6,000以上発見した。

 昨年、主要な?普通ゴミを片付けて大きなゴミ収集所(たぶん事業ゴミ専用)へトラックで運んで捨てに行ってもらった。有料だったが18㎏≒¥900と安かった。家電ゴミは捨てずに奥の「小屋」に入れた。大物のゴミは廃車トラックの中に詰め込んだらしい。家や事務所がキレイになってゴミ捨ての習慣がついたどころか、すぐに捨てないと気になるくらいに変化していた。硬貨は帰宅すぐに貯金箱に入れていた。
 今はこの家のゴミといえば、爪楊枝が足跡のように散らばっていることくらいだ。爪楊枝で友人が家や事務所のどこを歩いたか経路がわかる。西洋の童話でパンを足跡にした子どもたちのようである。

 次に、他のご家庭はどうか? イスラム女性は外に出ないので、やはりゴミ捨ては「男の家事」となる。スーパーセンターまでの経路での目撃から考えて、家庭ゴミはコンビニやスーパー、公共機関のゴミ箱やトイレに投棄しているのではないかと思われる。ご近所のゴミ番人のプレッシャーが気の毒になったが抵抗を感じた。
 横浜在住のパキスタン人の弟分によれば「横浜市では外国人はどんなゴミでも無料で引き取ってもらえる」とのことだ。外国人? ということは彼の実弟は日本国籍取得していると思われるので兄弟でもゴミ処理に関する費用が異なるという訳だ。

画像の説明 

(写真左)現地新潟の郵便局で見つけたパンフレット。全部日本語である。これは、ウルドゥー語(パキスタン)、ロシア語、コリア語(南北朝鮮半島)で多言語表記にしていないのは何故だろうと思った。
(写真右)こちらは私地元の東京近郊。ここでも家庭ゴミを放置する人がいる。やはり日本語のみ。

 滞在中、家事が終わる頃、お昼のサイレンが11時45分に鳴ったのを聞く。この音を聞いて書類の分類をはじめていた。自宅にいる時と同じ時間に遅めのお昼ご飯を食べて、少し休んで洗濯物を取り入れていた。8月16日、空を見上げると自衛隊の飛行機が低空飛行で飛んでいた。「昼間、自衛隊の飛行機が低空飛行していた」と倉庫から戻ってきた友人に言った。

 8月16日以降から、ジェット機やヘリコプターの音が大きくなっていた。タリバンが首都カブールを掌握した影響か? この辺に、テロリストと繋がりがあると言って、強請りタカリを行っている人が住んでいるという話しを聞いている(これは友人ではなく、別の筋からだ)。上空からそういう人を見張っているのだろうかと。もしそうであっても、自衛隊がヒマだからではないだろう。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

(2021.09.20)
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