■ 生活クラブが風車を建設した              村上 彰一

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 生活クラブの首都圏の4つの単協(東京・神奈川・埼玉・千葉)は、NPO北海道
グリーンファンドと共同で秋田県 にかほ市に2000kwの風車を建設することにし
ました。今の予定だと2012年の3月には風車が回り始め、発電が始まることにな
ります。

 生活クラブの4単協(東京・神奈川・千葉・埼玉)が出資し設立した、「グ
リーンファンド秋田」が事業主体となります。建設費は約5億円。生活クラブは
「グリーンファンド秋田」に約2億6000万円の融資をおこない、残りは国の補助
金をあてることにします。

 生活クラブ風車で発電された電力は特定規模電気事業会社(PPS)に売電しま
す。その売電量と同じ量の電力と環境価値をPPSから生活クラブが買って、生活
クラブの施設で使用するという仕組みです。風車の出力は2000kwであり、年間の
発電量はおよそ450万kwhとなり、これは対象となる生活クラブ東京・神奈川・埼
玉・千葉の41施設で使う電力の70%に相当します。実に大きくCO2の削減に寄与
することになります。

 地球温暖化が叫ばれている中で2050年までにCO2の50%の削減目標を合意した
2008年の洞爺湖サミット以来、日本では「原発」はCO2を発生させないクリーン
なエネルギーだというキャンペーンが展開されてきました。温暖化、CO2削減と
いう問題に議論が傾いていく中で、原発をはじめとするエネルギーの問題は正面
から議論されてこなかったことが日本の現状だったように思います。

 そういう中で3月11日の大震災とチェルノブイリに匹敵する原発事故となった
東京電力福島第一原発の事故は、これまでの原子力中心のエネルギー政策のあり
かたを根底から問い直し、自然エネルギーを中心とするエネルギー政策へと大き
く転換することを私たちに迫るものでした。

 生活クラブは食料の自給力の獲得を事業と運動の柱にしてきました。自給を継
続していく「力」とは、生産する力と消費する力の双方が備わっている必要があ
り、さらに、生産と消費の繋がりの強さがなくてはなりません。私たちが40年間
にわたってつくってきたことは生産と消費、都市と地方の分断を協同に変えてい
くことでした。1年間に1914回(2010年度)の生産者との交流会、産地視察等を
実施し、庄内地方をはじめ、日本中に生活クラブの生産者や産地と繋がってきま
した。

 同じようにエネルギーに関しても自給力という考えをもつ必要があると考えて
います。繰り返しになりますが、自給力とはただの「国産化」にあらず、関係性
の構築と、その関係性を統治する能力を市民社会が持つことにあります。私たち
市民にとっては、化石燃料を大量に消費する生活、原発という危険を抱え続けな
がらの生活からの脱却です。今までのくらし方、エネルギー消費の考え方の大転
換を求められているのだと思います。

 そういう考え方をもとに、どう行動に移すかを考えていると、食料も同じです
がエネルギーの自給は地産地消では限界があるということに気づきます。需要の
力によってエネルギーを転換していくことを「需要プル」というそうですが、首
都圏という大消費地で暮らす私たちの消費する力をフル回転させることが重要だ
ということではないでしょうか。

 課題は、エネルギーの消費の仕方を変えていくこと、その変え方とは自然エネ
ルギーを生み出す地域と連携してそのエネルギーを共同で購入することによっ
て、自分が使うエネルギーを転換すること、そして、そのことによって自然エネ
ルギーを生み出す地域の利益になるように進めていくことだと思います。都市と
地方の新しい提携の形を模索していくことがエネルギー自給力を獲得するための
鍵になるのではないでしょうか。

 風車をきっかけに、にかほ市の地域の人たちとの交流がはじまっています。10
月には地元でフォーラムを開催し、首都圏からも生活クラブのメンバーが参加
し、交流を深めました。今後も、人と人の関係性の構築を基本として交流をひろ
げていきたいと思っています。食の共同購入によって、つくる人と消費する人が
つながることの大切さを学んだ生活クラブによるエネルギーの自給の実践は、こ
のようにして少しづつですが、着実に進みつつあります。

 また、今後の自然エネルギーの普及戦略については2012年度施行予定の電力の
固定価格買取制度を視野にいれていくことになります。生活クラブの事業所のみ
ならず生活クラブの組合員が全体として自然エネルギーへの転換を実現するため
にどうするか。自給力を獲得するために生活クラブは次の段階に進む準備を始め
たいと思っています。

             (筆者は生活クラブ東京専務理事)

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