【立憲民主党の原発ゼロの中身を問う】

立憲民主党の原発ゼロの中味を問う 2070年代まで原発稼動

仲井 富

【立憲民主党の原発ゼロの中味を問う】

立憲民主党の原発ゼロの中味を問う 2070年代まで原発稼動

仲井 富

① 本気で政権を取りにいく気迫なき野党に苦言 脳科学者の茂木健一郎
② 原発ゼロと言いつつ大間、大通、島根3号機の建設工事再開容認
③ 立憲民主党の原発停止には期限がない、まやかしの原発基本法案
④ 小泉元首相 原発推進論者の「安全」うそ 原発即ゼロが正論
⑤ 民主党政権の悪夢から次々党名を替えてさまよう旧民主党政権幹部
⑥ 投票率10%アップの「108万人国民運動」提案 中村喜四郎・元建設相
 
◆ 本気で政権を取りにいく気迫なき野党に苦言 脳科学者の茂木健一郎

 脳科学者の茂木健一郎氏(57)が8月31日、自身のブログで、安倍晋三首相の電撃辞任の中、士気の上がらない野党に失望の言葉を漏らした。この日、「日本のリベラルの政党の人たちが、ちょっとの意見の違いですぐ分裂して、仲違いするのはほんとうにあきれる」と書いた。

 「考えてみれば、民主党が2009年に政権をとったときも、中心になったのは小沢一郎さんや鳩山由紀夫さんという、もともと自民党から出てきた方々でその小沢さんや鳩山さんを、民主党のセクト主義の人たちは追い出してしまった。もったいない」と続けた。
 その上で「よくわからないのが、共産党との共闘もありえないとかすぐに言う人たちがいることで、冷静に考えれば組織力とか資金力とか考えれば、自民党にとっての公明党的な位置づけで共産党を活かすくらいの胆力がなかったら、政権なんかとれるはずがないと思う。つまり国会議員の地位さえあれば満足で、本気で政権をとりに行こうとはしていないということなのだろう」と結論づけていた。

◆ 原発ゼロと言いつつ大間、大通、島根3号機の建設工事再開容認

 立憲民主党と国民民主党の野党統一会派結成は、原発問題での意見の相違があり、玉木代表は統一会派への参加を保留したという。

 旧民主党時代の末期、2012年だった。野田民主党政権は政権末期「エネルギー・環境戦略」のなかで、「2030年代に原発稼働ゼロを可能にする」とし、原発の運転を40年に制限することや新増設の中止、再稼働は原子力規制委の確認を得たものだけにするなどを打ち出した。しかしこの戦略自体を、アメリカや財界の圧力で閣議決定を行わず、期限も「30年代」というだけ、3つの原発の工事再開まで認めるとなるという誤魔化しを平然とやってのけた。

 現在建設中の大間原発のほか、中国電力の島根原発3号機と東京電力の東通原発1号機(青森県)3つの工事再開を認めたのは、野田民主党政権の枝野通産大臣だった。工事を完成させ、稼働させるとなれば、40年運転の原則を守ったとしても、少なくとも2070年代まで原発の運転が続くことになる。
 枝野経産相は、福井県大飯原発1・2号機の再稼動をも容認した。現在の国会を取り巻くデモは、旧民主党政権の背信行為に対する抗議行動としてはじまった。旧民主党の菅、野田元首相らは「消費税値上げと原発ゼロは正しかった」発言しているが、それも大嘘と言われても仕方ない。旧民主党の残党である立憲民主党の主な幹部はまずそれを謝罪することから始めるべきだろう。

◆ 立憲民主党の原発停止には期限がない、まやかしの原発基本法案

 立憲民主党は最近以下のような原発基本法案をまとめた。東日本大震災、そして福島第一原発の事故以来、各種の世論調査などをみてみても、国民の多くは原発ゼロを望んでいる。いままず必要なのは、原発ゼロを決める政治決断だ。その意思表示として原発ゼロ基本法が提出したという。立憲民主党がタウンミーティングを経てまとめた原発ゼロ基本法案の骨子は、以下の通りだ。

 ① すべての原発を速やかに停止し、法施行後5年以内に廃炉を決定する
 ② 原発の再稼働はせず、新増設・リプレースは認めない
 ③ 使用済み核燃料再処理・核燃料サイクル事業は中止する
 ④ 放射性廃棄物・プルトニウムの管理と処分を徹底する
 ⑤ 原発から省エネルギー・再エネルギーへとシフトする

 だがこの原発基本法案の根本的欠陥は、原発ゼロの期限が明示されていなことだ。当然だろう。旧民主党政権時代に、原発ゼロの目標を2030年代といいつつ、当時の枝野経産業大臣は、大飯原発3・4号機の再稼動を容認した。さらに、東通原発、大間原発、島根3号機など3つの原発の工事再開を認めた。これを契機として国会を取り巻く原発反対のデモが始まった。
 当時日比谷公園に20万人のデモが行われたが、これは民主党政権の原発再稼動と3原発の工事再開に抗議して始まった。それを忘れて、今頃期限を明示しない、原発ゼロ基本法でお茶を濁している。
 
 期限を明示すれば、どう計算しても原発ゼロは2060年代ということになる。要するに政権を取ればすぐに問われる政治責任を棚上げして、こんな原発ゼロ法案でごまかしているに過ぎない。政権を取りにいく気迫も根性も無い。こんな無責任な立憲の原発ゼロ法案に、国会デモの参加者が拍手していると言うからマンガである。

◆ 小泉元首相 原発推進論者の「安全」うそ 原発即ゼロが正論

 いま日本で最も明確な原発即ゼロ論者は小泉元総理だ。かつて民進党時代の「2030年代原発ゼロに小泉元首相がダメ出し」という見出しで朝日新聞が報じている。以下はその要旨だ。
 小泉純一郎元首相が、新潟市で講演し、共産、社民、自由の3野党が推薦した米山隆一・新潟県知事の当選について「野党が一本化し、原発ゼロを争点にしたら与党は負けると分かった。この影響はあまり表面に出てきていないが大きい」と、国政選挙に影響するとの見方を示した。講演後、記者団には「野党がこれに気づけば、自民党も安閑とはできない。野党が変わると自民党も変わらざるを得なくなる」と述べた。

 支持母体の連合に配慮して原発政策を明確に主張できない民進党については、「電力関係、原発推進の労組票は50万もない。500万、5千万の票をどうして獲得しようと思わないのか」と話した。民進が掲げる「2030年代原発ゼロ」も「公約は分かりやすく短く言わなければダメ。30年代ゼロにする? 今認める? わかりにくい。今ゼロを宣言した方が国民も企業も、準備しやすい」と注文を付けた。(関根慎一 朝日新聞デジタル16・11・4)

 小泉元首相は、東京新聞の一問一答でも要旨以下のように述べている。
 「(民進党は)最大の争点が原発だと分かっていない。野党がだらしないから与党は楽だ。野党が原発ゼロを言い出したら、原発再稼働について、自民党から『実は反対』という議員が出て、ごたごたする」
 ―今、現職首相なら原発ゼロで信を問うか。「当たり前だ。野党は真っ青になる。首相が言えば、反対できない」(東京新聞2016年10月26日)

◆ 民主党政権の悪夢から次々党名を替えてさまよう旧民主党政権幹部

 安倍晋三首相の政治的発言で、評価すべき言葉は見当たらない。だが唯一評価できるのは「民主党政権の悪夢」という指摘だ。辺野古移設反対から賛成へ、消費税反対から賛成へ、原発ゼロといいつつ実際は2060年代まで原発稼動を認めた。あまりのひどさに民主党幹部は党名を替えることに、逃げ場を見出した。
 民進党と替え、さらに小池新党に走り、それに反発する人達が立憲をつくった。政権を取りにいくなどまったく考えられない、その場しのぎの政治行動に有権者の支持が集まるはずは無い。ようやく共産党との共闘で菅元首相などが小選挙区で生き延びているだけだ。
 民主党政権の悪夢から、民主党幹部が逃げ出したいために、その場しのぎの離合集散に走ったのである。それが決定的な誤りであった。民主党政権の悪夢をきちんと総括して、国民に面と向かって謝罪して、出直すべきだった。それをしないで、どんなに自民党政権を批判しても、国民の信を取り戻すことは100%不可能だ。

 党名を民主党とすべきとして党首選を争った若手の泉健太郎の主張はその意味できわめて正鵠を得たものだと評価したい。2012年総選挙での歴史的敗北以降、衆参4度の国政選挙で敗北を続けている。なぜそうなったのかをもう一度きちんと反省し出直せと言いたい。民主党政権の悪夢から逃げ出すのではなく、真正面から悪夢の正体と向き合えといいたい。それなしに選挙向けの美辞麗句だけでは有権者とりわけ4割以上の無党派層の信頼は得られない。

 毎日新聞と社会調査研究センターが9月8日に行った全国世論調査では、立憲民主党と国民民主党の新党結成について「もともと期待していない」が65%を占め、「期待は低くなった」が10%も存在した。9月5日と6日に行われたJNN世論調査でも、新党に対して「期待しない」が62%を占めている。それに引き換え、安倍首相辞任表明後の内閣支持率は急上昇している。無党派層を引き付けなければ勝ち目は無いことを自覚すべきだ。

◆ 投票率10%アップの「108万人国民運動」提案 中村喜四郎・元建設相

 低迷する野党にきわめて貴重な提案を元自民党の中村喜四郎氏が行った。(2020年9月10日 毎日新聞 政治プレミアム)

 ――第2次安倍政権の7年8カ月で政治がずいぶん、劣化した。国民を諦めさせる政治になってしまった。森友・加計学園や桜を見る会、公文書を改ざんしたり、隠したり、破棄したりした問題などが続いた。国民の感覚と報道から入ってくる情報が乖離(かいり)し、「こんなことにみんなが怒らないというのならば、自分一人が怒っても仕方がない」という意識から「投票なんか行かないほうがいい」という人が非常に増えてきた。
 また、ここ10年で団塊ジュニアの世代を中心に「自分たちはリスクだけを負わされ、希望などない」という感覚が広がり、政治に対する無関心につながっている。この二つを変えるために「投票率10%アップを目指す108万人国民運動」という署名運動をやっている。

 「108万人」は2019年の自民党の党員数だ。各都道府県で自民党と同じ党員数だけ、問題意識を共有してもらえる人を作ることが、目標としてわかりやすいと考えた。投票率を10%あげることは約1,000万人に新たに投票してもらうことだから、108万人が運動に参加してくれれば決して夢ではない。もちろん、相当な道のりが必要だ。結党以来60年以上をかけて自民党が築いてきた党員数は簡単なものではない。時間をかけながら目標に近づける努力をする。

 「国民運動」としたのは、野党議員の多くは労働組合など組織・団体頼みで、自分の後援会を作ることができていないからだ。いきなり後援会を作ることはできなくとも、その中間の国民運動ならできるし、それをやることで自前の後援会も作れるように変わっていくことができる。(以下略)――

 さすがに保守自民党出身の中村氏の提案は、迫力がある。こういう108万人国民運動にすべての野党議員が目覚めれば、停滞した現状を打破する可能性が見出せるだろう。

画像の説明

  合流新党を巡る主な経過 東京新聞2020・9・11

 (世論構造研究会代表・オルタ編集委員)

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