■【北から南から】
『続・中国病院事情 ~ ローカル病院編』 佐藤 美和子
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5月中旬から毎日のように雨が降り、不快指数絶好調の、梅雨真っ盛りな深セ
ンです。
広東省ではこの時期、どんなに気をつけていても家中あちこちにカビが発生し
てしまいます。いつもは木じゃくしとか木製ハンガー、皮製品の靴やカバンなど
が犠牲になるのですが、今年はなんと天井の照明カバーにカビが!
毎日2時間ほどはクーラーで除湿しているのですが、湿度があまりにすご過ぎ
て、空気がさらっとする所までは行きません。毎日数時間おきに降ったり止んだ
りで洗濯物もおちおち干せないし、大雨で道路が冠水するし、毎日雷が鳴り出す
たびに家電のコンセントを抜いて回らなきゃならなかったりと、広東で最も暮ら
しにくくていや~な季節なのです。
さて前号は外国人向けVIP診療室のお話でしたが、今回はそれとは対照的な、
ローカル病院体験談をご紹介しようと思います。
ちょうど2年前の今ごろのことです。平熱34度台、血圧の上が90程度という低
体温・低血圧人間の私には珍しく、39度の高熱のため、夜中の12時を過ぎてから
しぶしぶ近くの救急病院へ行く羽目になってしまいました。
この病院は何度かかかっているのですが、私的にはなるべく避けたい病院の一
つです。それまでも嘘っぱちな診断で高額治療を長期に渡って受けさせられそう
になったり、医者同士が私という患者の奪い合いをやらかしたり、何かと話題の
尽きない病院なのです。すごいんですよ~、検査結果を待合室で待っている時、
そば通りかかった医師を呼び止めて質問をしたのですが、その年配の女医さん、
初めはとっても面倒臭そうで横柄な対応だったんです。ところが私が手にしてい
る診察カルテに書かれた私の名前を見て、私がガイコクジンだと知った途端!イ
キナリ手のひらを返したように、ニコヤカで親切な人に豹変!あなたが診察を受
けているその医師はまだ若い、ぜひ経験豊富な私の診察室に来なさいと、危うく
彼女の診察室へ連れ込まれそうになりました。どんだけストレートな営業活動な
んだー(笑)。「日本人はお金を持っている、ガイコクジン患者なら騙したりぼっ
たくりしやすい」と思われているのですよ。残念ながら、私みたいな貧乏な日本
人もいるんですけどねぇ。
病院に行くことになったのが既に深夜だったため、一番近いということで渋々
その病院に行ったのですが、相変わらず話題に事欠かない病院でした。
まず問診を受けると、
「最近深センでも鳥インフルエンザの発症者がでたので、今はすべての高熱患者
にはレントゲンと血液検査が義務付けられている」
たかだか風邪っぴきな患者だというのに、高~い検査代が徴収できるレントゲン
検査を受けさせるための、なんともうまい口実を思いついたものです。
こちらでは、診察医は患者一人診ると何点、検査を受けさせれば診察医と検査
技師の2人にそれぞれ何点ずつ、という風にポイントが付き、薬を売りつければ
薬剤師にもポイントがプラスされます。
ポイントの点数によって、基本給+お手当てがうんと付くので、患者の身なりや
訛りで出身地域・経済状況を推察し、なるべく高価な薬を売りつけようとする不
道徳な医師がけっこういるのです。この病院、実はそういう医者が多い事で近所
では有名なのですよ・・・・・。
しかも院内レントゲン設備が壊れているとかで、高熱でモーローとしている患
者のワタクシ、深夜で真っ暗な病院の外に停めてある移動レントゲンバスに自分
で行って撮って来いと言われちゃいました。H5N1が疑われる患者を、あちこちフ
ラフラ歩かせていいんでしょうか?
レントゲンの結果は当然ながらH5N1はシロ、フツーのインフルエンザです。と
いうことで熱や炎症を抑えるために点滴を2本打っておきましょう、でも点滴を
打つ前に、点滴でアレルギーを起こさないかどうかの血液検査もしないといけま
せん、あとは消炎剤と解熱剤も処方しておいてあげますね、なーんて言われ、た
くさんお医者さんのポイントゲットに貢献させていただきました。
点滴薬の代金支払いを済ませ(検査を受けたり処置を受けるたびに、いちいち
会計へ行って先払いして領収書を持っていかないと、死にそうでも放置されます
)、ずらーっと椅子が並んだ点滴室へ行くと、大型テレビが中央にありました。
ほほう、点滴中の患者の娯楽のためなのかと思いきや、宿直の医師や看護婦さ
ん、果ては警備員までが、そこでサッカーワールドカップ・ブラジルvsオースト
ラリア戦の観戦中で大盛り上がり。この部屋に10人ほどもいる中で、患者ったら
私一人だけですよ。
さらに点滴中の私が日本人だと知ると、
「ねぇねぇ、あなた中国語わかる?あなたもサッカー好き?私はブラジルの8番
の選手がカッコいいと思うんだけど、どう思う?今日夕方やってた日本vsクロア
チア戦は見た?」
と、看護婦さんたちから怒涛の質問攻めにまで遭っちゃいました。
あのー、高熱でぐったりしている患者に質問をするなら、具合はどうかとか、
テレビの音はうるさくないかとか、そういうこと聞いて欲しいんですけど・・・・・
。
具合がよくなって余裕があるときなら、そんなノー天気な中国人のお仕事ぶり
や、日本人からするとあまりにも気さく過ぎる?彼らの言動もけっこう面白い、
と思えるのですがね(笑)。いや、やっぱり面白くなくてもいいので、なるべくロ
ーカル病院にはお世話にならずに済ませたいものです。
(筆者は在深セン・日本語講師)
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