【編集後記】 

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◎いま、尖閣・竹島をめぐる中・韓との摩擦、石原・安倍・橋下などの動きやこ
れを伝える日本のメディアについて中韓両国だけでなく英国の「エコノミスト」、
米国の「ワシントン・ポスト」、AP通信、CNN・TVなど欧米のメデイアも、
しきりに日本の右傾化を指摘している。内容は大体私たちが常識的に感じている
ことだが、問題は日本のマスコミがそれを伝えない姿勢にある。それらのうちの
一つに『日本のメデイアは「ならず者のナショナリスト石原慎太郎」を甘やかし
てきたため、彼に尖閣騒ぎの火を付けさせてしまった』というのがあった。

 確かに原子力安全神話の崩壊で馬脚を現した日本のマスメデイアの劣化は領土
問題でも、本質や歴史的背景を冷静に分析せず、ひたすら国民感情を煽るだけの
ように見える。ただこのなかでマスメデイアとは言えないが6万部という部数な
がら指導層に影響があると言われる会員制雑誌「選択」の『「日中険悪化」の火
付け人「似非愛国者」石原慎太郎の終焉』と前防衛大学学長五百旗頭真氏の『領
土問題は米国が埋め込んだ「氷塊」』は目立った。

 石原批判では腰が引けていた朝日新聞が、ピユリツアー賞など数々の賞をとっ
た名著『敗北を抱きしめて』の著者で米国の碩学ジョン・ダワー氏の『日本の領
土紛争尖閣・竹島・北方領土すべてはサンフランシスコ条約に起因すること。ド
イツの戦後処理と日本との違いは冷戦のため米国が日本を利用したため日本の戦
争責任をあいまいにしたことが歴史認識の問題を残した』との正確な指摘を10
月30日、また31日には英国の高名な日本をよく識る社会学者ロナルド・ドー
ア氏の『競い合う米中の間で、日本は米の衛星国をやめよ』をそれぞれ1頁使っ
てのインタービューは好企画だった。

◎東アジアでの中国の急速な台頭と米国の後退という歴史的な事実に目を背ける
石原的妄想ではなく、冷静に領土問題を考えるためオルタ105号で『国有化と
「棚上げ」は均衡化するか』、106号で『今、領土問題を考える』と論じ、読
者から強い支持が寄せられた共同通信客員論説委員岡田充氏が、11月20日蒼
蒼社から『尖閣諸島問題―領土ナショナリズムの魔力』を緊急出版された。これ
は石原・安倍などや無責任なマスコミに煽られず冷静に考えるための必読書とし
て強くお勧めしたい。本号では巻頭に日本における中国関係の論客として多数の
著書がある矢吹晋横浜市立大学名誉教授に推薦文をお願いした。

◎原子力規制委員会は大飯原発敷地内の活断層の存在を巡って結論を出せずにい
る。私たちは原発ゼロを目指すにしてもすべての廃炉には時間と手続きがいる。
確りとした規制・監視のシステムは絶対必要である。これについて濱田幸生氏が
フランスに学ぶことを提唱された。重要な提起なので今月は濱田氏の連載欄から
移したことをご了承願いたい。

◎【米大統領選報告】激しい大統領選は米国社会が持つ矛盾を世界に露わにしつ
つもオバマの勝利で幕を閉じた。オルタはアメリカに在住する武田尚子さんに文
学者の視点で1月の予備選挙から選挙情勢を11回報告していただいた。とくに
最終回は先の台風で自宅が甚大な被害を受け、さらに、ご夫君が重篤な病床にあ
るなかで送稿いただいた。あらためて長期連載のご苦労に謝意を表するとともに、
ご夫君の一日も早い快癒をお祈りしたい。

◎【エッセー】荒木重雄氏のご紹介で作家の林郁さんから『賢治とモリスの環境
芸術/文明転換』を頂いた。【投稿】北方領土問題について元毎日新聞論説委員
田中良太氏から「日本の領土問題を問う」とのご意見が寄せられた。そのなかで
雑誌「世界」12月号を批判されているが、私は現在の状況下で雑誌「世界」は
領土ナショナリズムなどと独自に闘うメデイアとして高く評価している。

◎【日誌】10月20日中目黒・正覚寺で亡妻茂代の3回忌。21日生活クラブ
生協や労働組合の支援で再建されたハイム化粧品会社の第五回事業報告会で祝辞。
22日飯田橋で莫逆の友矢野凱也君と会食。23日神田神保町で石郷岡建日大教
授とインタービュー。26日仏教に親しむ会で荒木重雄氏講話。後竹中一雄氏と
懇談。11月2日生活クラブ連合会蛯谷氏と懇談。9日ソシアルアジア研究会で
鈴木不二一氏の「貧富格差の国際動向」を聞きあとパリから帰国中の鈴木宏昌氏
や井上定彦・小暮剛一・初岡昌一郎氏などを交え懇親会。10・11日娘と信州
で真田一族興亡史跡、戦没画学生の無言館を訪ねる。12日夜篠原令氏から最新
の北京情報を聴く。14日御茶ノ水で講演のため英国から帰国中のオルタ執筆者
小野まりさん歓迎昼食会。あと生活クラブ神奈川顧問横田克己氏と懇談。夜京王
プラザホテルで保坂展人世田谷区長出版記念会。

◎【追悼】『河上民雄20世紀の回想』をまとめた『日本社会党―その組織と衰
亡の歴史―』の著者岡田一郎氏に『河上先生が伝えようとしたこと』を頂いた。

◎【お詫び】今号は領土問題など緊急な原稿で輻輳したため石郷岡建日大教授の
「インタービュー」、貴志八郎氏の「闘病記」、木村寛氏の「中途障碍者の作業
所25年をふりかえって」などを次号に回わしました。執筆者・読者にお詫びし
ます。
                            (加藤宣幸 記)

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