【編集後記】

加藤 宣幸


◎安倍政権は圧倒的多数の憲法学者や国民が違憲として反対する安保法案10本ひとからげを衆議院で強行採決し参議院に送付した。この法案は安倍首相がいかに詭弁を使おうが地球のどこででもアメリカの戦争に加わることなのだ。戦後築き上げた民主政治と平和を暗愚な首相の一存で崩させてはならない。首相は国民の猛反対に追い込まれ、数日前まで「国際公約」だと公言していたのを翻し、無責任の表徴・新国立競技場建設計画を白紙に戻した。私達は安保法案阻止をまだあきらめてはならない。今月号巻頭には羽原清雅、三上治、黒澤いつき三氏の論考を揃え私たちの決意を示す。

◎「オルタ」は手づくりの市民WEBメデイアだが、毎号の巻頭部に【沖縄の地鳴り】を据え、私達なりに辺野古新基地反対運動に参加する。今月は沖縄の動きの他、荒木重雄氏による映画『沖縄 うりずんの雨』紹介。そして「砂川平和ひろば」の福島京子さんと執筆者の福岡愛子さんを辺野古の現場に送り、現地の執筆者桜井国俊・河野道夫氏等とも交歓した報告である。オルタがWEBだけでなく現場と連動したのは10年の歴史で始めてだ。『メディアの原点は共感の創出』『雑誌の本質はコミュニティーの創出』にあるも言われるが、オルタがささやかながら「動き」に加われたのは嬉しい。

◎沖縄は6月23日「慰霊の日」を迎え、本土のマスコミも20万人の犠牲者を出した凄惨な沖縄戦の状況を伝えたが、気のせいかどこか遠い島の出来事のような書きぶりに思えた。今上天皇は第二次大戦での『「四つの日」を記憶しなければならない』と発言し、敗戦8.15、広島8.6、長崎8・9、沖縄6・23を上げられた。しかし6・23は他の日と比べ広く国民に知られていない。『その原因は「東京メディア」の冷淡さにある』と沖縄タイムス竹富編集局長は言う。本土メディアの冷たさは基地を沖縄に押しつける差別意識に通じないか。なぜ8.6、8.9を「慰霊の日」と言わず6.23だけ言うのか。6.23を『沖縄の日』として慰霊だけでなく私たちすべてが不戦を誓い沖縄の歴史と万国津梁の明日を考える日にしてはどうか。

◎まさに沖縄敗戦記念日の2日後、自民党本部の安倍親衛隊約40人の勉強会で『沖縄タイムス・琉球新報の二紙を潰せ』『地権者は金のために基地近くに移り住んだ』などの暴言が飛び出した。世論の猛反発に慌て、3バカ議員に責任を転嫁したが、雑誌「選択」は、すでに本年1月号で『官邸内では「衆院選での沖縄惨敗対策として県紙二紙の寡占状態に対し一刻も早く保守系メディアを根づかせなくてはいけない」との危機感が高まっている』(政府関係者)とリークを記事にしている。暴言は突然のものでなく安倍政権の本音だ。解釈改憲と同じく民主政治の根幹を揺るがすものとして断じて許せない。

◎住民に支えられる沖縄や各県紙の健闘に比べ、政権への批判力欠如、調査報道力の弱体、極端な対米追随など、大手マスコミの劣化こそ民主政治の危機だ。オルタに「マスコミ同時代史」を連載する田中良太氏は6月27日を『メディア・リテラシーの日』と書くが、この日は松本サリン事件で無実の河野義行氏をほとんどのマスメディアが犯人扱いにした大誤報の日を「TV信州」が決めたのだという。広辞苑ではメディア・リテラシーとは「メディアの伝える情報を批判的に判断・活用し、それを通じてコミュニケーションを行う能力」とある。私たち自身がメディア・リテラシーを磨くべき時代だが、同時に今は意志さえあれば誰でもメディアを持つことが出来る。市民メディア・オルタは一層自戒して前進したい。

◎【日誌】6月23日:東洋学園大・「東南アジアから見るアジアの未来」・ユスロン・イーザ・インドネシア駐日大使。岩波ホール・『うりずんの雨』。26日:参議院議員会館・院内集会「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」。自宅・仲井。28日:専修大・国際アジア共同体学会「地域統合の現在と未来展望」。自宅・誕生会・斎藤三郎通夜。29日:斎藤告別式・生活クラブ・「ゆう」解散総会。30日:東洋学園大・「東アジアの知的公共性: 朱子学の伝播と変容、今後の課題」・金鳳珍。神楽坂・小林吉雄。

7月1日:学士会館・鈴木不二一。2日:衆院会館・ND沖縄訪米報告会・糸数慶子・猿田佐世・懇親会。3日:ソシアルアジア研究会・及川智洋。7日:東洋学園大・「アジア共同体の理念」・西原春夫。11日:神保町・徐・竹中・荒木・岡田・懇談。13日:検診。14日:東洋学園大・「南アジアから見るアジアの可能性」・モンテ・カセム。九段下・菱山・浜谷懇談。15日:自宅・竹中・早川・園田・浜谷・懇談。16日:自宅・仲井。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎仏教に親しむシリーズ      荒木 重雄


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