■編集後記

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◎ 今月は憲法記念日にちなみ戦争体験者の太田博夫さんから平和憲法への「思い」を寄せていただいたが同時に戦後の「制憲議会」における宮沢俊義氏の速記録を貴重な歴史資料として掲載した。太田さんは89歳ながら矍鑠(カクシャク)として各社政治部OBのクラブである「政治記者OB会」会長を務め、プレスセンターの記者会見などに連日精勤している。「オルタ」とは太田澪々子として社会派?俳句をしばしば頂く深い関係にある。いつまでも、お元気で“朝日新聞の若いもの”も含めて叱咤し続けて欲しい。

◎ お元気で尊敬する先輩といえば、5月7日に野村かつ子さんの『よき師よき友に導かれて』という著書の出版記念会が開かれた。野村さんは「オルタ」に何回も貴重な資料頂いた95歳の社会活動家だが、いまでも毎日必ず1時間以上は歩き、そのあと膨大な内外の社会運動関係資料整理に取り組む。

耳が少し遠くなっただけで健康そのものである。その健康を支えるものは同志社の学生時代から今日に至るまで一貫して揺るがない「社会的基督教」精神であるようにも思う。なにしろ、背筋が一本まっすぐに通っているのである。

私は野村さんが戦時中に大学を卒業してすぐ江東消費組合に就職された時代を除き、戦後の活動ぶりには殆ど触れている。戦後いち早く参加した市川房江さんの「婦人有権者同盟」における政治教育委員長、日本消費者連盟役員、総評主婦の会オルグ、海外市民活動情報センター代表、ラルフ・ネーダー歓迎市民委員会代表、生活クラブ生協顧問などである。

その情熱的で、ひたむきな行動に一貫して流れるものは自らが言うように『国内外のマイノリテーの権利擁護に自分がどれだけ己を空しくして徹し切れるかの自己検察であり、若き日のピユーリタニズムであった。』という思想である。

それは「オルタ」8号でも紹介した『同志社労働者ミッション設立宣言書』(昭和2年)にあるキリスト者の現代における使命感であり、彼女はこの宣言に深く影響を受け、これを、かたくなに自らの行動基準として守り抜いてこられたのである。社会運動家の鑑として、いつまでもお元気で私達後輩の行く手を導いていただきたいと思う。

◎今月の異色の発言は「反日デモ」を日中関係を前向きに転換する契機にして欲しいと言う中国人留学生張麗娟さんの声である。私のような戦争を体験した世代としてはこれを日本の若者にどのように伝えるかの責任を感じないわけにはいかない。 

◎「反日デモ」については仲井 富氏からかつての60年・70年安保デモと比較した「デモ論」の緊急投稿があった。デモの原因は小泉にあって支持するわけではないが「デモのできる中国」を支持し、つきあっていこうという意見には同感である。

◎今月から大阪女子大学名誉教授西村徹先生のコラムを頂くことになった今後に新風を期待したい。

◎書評で取りあげた『日本社会党―組織と衰亡の歴史―』はオルタ編集部岡田一郎君の著作である。評者には気鋭の政治学者である木下真志先生にお願いしたが、的確な御指摘を頂けた。岡田君はこの4月から日本大学で教鞭をとることになり、同時に処女作を世に問うたわけで、いよいよ本格的な研究者生活が始まる。オルタの仲間として心から祝福し同君の一層の精進を願いたいものである。 (加藤 宣幸 記)