【編集後記】

加藤 宣幸


◎戦後71年の8月がめぐって来た。私たちは鎮魂と祈りの時から加害・被害の想いを心に刻み不戦・反戦を誓いたい。松井一実広島市長は2016・8・6平和宣言で『今こそ、私たちは、非人道性の極みである「絶対悪」をこの世から消し去る道筋をつけるためにヒロシマの思いを基に、「情熱」を持って「連帯」し、行動を起こすべきではないでしょうか。』と訴えた。 私たちはこれに応え、たとえ一人ひとりの力は小さくても平和のために声をあげ自分一人でも出来ることから取り組みをはじめたい。

◎今年、原爆を落とした国のオバマ大統領が、落とされたヒロシマを訪問した。この実現には様々な政治的曲折があり、彼の「死が空から落ちてきた」という演説には違和感をもつが、核なき世界実現への道筋が少しでもつくのならその一歩として彼の訪問を歓迎し、世界の核削減政策具体化の前進を期待したい。それは私たちがオバマの訪問が一時的な思い付きではなく、彼の核に対する思索がコロビア大学在学中の1983年頃に形成され、大統領になってからも折に触れて核なき世界への思いを発信して来たからだ。オルタは2010年10月号(82号)から、在米の翻訳家でオルタ編集委員武田尚子さんから約60回もアメリカ社会の実相についてレポートを頂いたが、二度の大統領選における民主・共和両党候補の分析、特にオバマ大統領の核発言については詳しく伝えた。つねに「いのち」と「核」を考え続けたい。

◎安倍政権は選挙が終わるや否や、現職の担当大臣を大差で落選させた圧倒的な新基地反対の民意を無視し、沖縄予算の削減までちらつかせながら、かねての目論見どおり、全国各地から機動隊員500人を集め工事を強行してきた。まさに「琉球処分」だが、ますます沖縄の人々を心理的に追い詰める。5年前オルタ仲間6人で沖縄を訪ね、大田昌秀元県知事と懇談したが(オルタ86号)、沖縄人の気質について、普段はおとなしいが追いつめられると爆発するとコザ事件を説明されたのが印象的だった。今号では緊迫する沖縄情勢について、7月30日のオルタ・オープンセミナー『沖縄は自立に漕ぎ出すのか — 自己決定権を考える』(対談・新垣毅×阿部浩己)を載せ【沖縄の地鳴り】では辺野古基地裁判・沖縄タイムス基地特集・地位協定問題を、さらに木村朗鹿児島大学教授には日本と沖縄の民主主義の危機を論じて頂いた。

◎EUからの英国脱退という衝撃的なニュースに次いでフランスからは相次ぐ大規模テロが伝えられ、まさにEUは揺れている。ISを生んだイラク・シリアは依然として混沌を深め、シーア派・スンニ派の宗派対立は激化し、中東情勢はますます混迷する。内戦・難民・貧困・差別・格差・排撃・テロ・恐怖・監視強化の悪循環が続き極右勢力が台頭する。テロ対策に悩むフランスについて在仏の鈴木宏昌早稲田大学名誉教授に緊急報告を頂いた。

◎南シナ海問題についてハーグの仲裁裁判所は中国の主張をほぼ完全に否定し、中国は「完敗」した。北京はこの受け入れを拒否したものの、噂された国際海洋法からの離脱などはせず関係国との「静かな外交」に転じたようだ。安倍政権は裁定に従うよう北京に要求し、フィリピンなどを煽った。ただ裁定の規定する「島」の要件に日本の「沖ノ鳥島」は適合していない。かつて日本国民は大本営発表を信じて国を滅ぼしたが、国際関係は特に事実を客観的に判断したい。これについて日中・日中台関係論の専門家朱建栄・岡田充両氏には実証的に論じて頂いた。

◎【日誌】7月21日:新宿・岩根邦雄サロン。22日:九段・昭和館・暮しの手帖展。自宅・野沢汎雄。23日:連合会館・細谷松太さんをしのぶ会・報告。24日:蒲田・高沢英子「審判の森」出版記念パーテー・挨拶。25日:自宅・動画撮影・卜部ミユキ・小榑雅章。26日:議員会館・プログレス研究会。28日:藤沢・阿部知子・動画撮影。29日:九段・ソシアルアジア研究会。30日:連合会館・オルタオープンセミナー・新垣毅・阿部浩己。

8月2日〜4日:長野県八千穂町・朝陽山荘・色平哲郎・小暮剛一・野沢汎雄・卜部ミユキ・藤田裕喜。5日:自宅・プログレス研究会・納涼会・7人。7日:中目黒・正覚寺墓参。8日:恵比寿・厚生病院・新生会・安田氏見舞い。10日:自宅・野沢汎雄。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube 配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎「沖縄は自立に漕ぎ出すのか—自己決定権を考える」 新垣 毅・阿部 浩己
◎「自著を語る」           小榑 雅章
◎「仏教に親しむ」シリーズ      荒木 重雄
◎「参議院選挙を終わって」      山口 二郎


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧