■編集後記
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◎オルタ18号;編集後記 敗戦60年という節目の年は歴史の重みとして、
私達の生き様に、いろいろと迫ってくる。「オルタ」18号でも、歴史に向き
合い、かつ語り継ぐ義務として「敗戦のあとさき」特集を組み、西村徹・河
上民雄・久保孝雄・富田昌宏・越川ます子の各氏に応じていただいた。御礼
を申し上げるとともにアジア村に生きる者として歴史を確り受け止め、明日
に生きる糧とするよう若い人たちにも伝えていきたい。
やがては、このささやかなメデイアの「オルタ」が成長し、朝鮮半島・中国
の方々からも「8・15記念日のあとさき」について書いて貰えるようになり
たい。
◎戦後60年アンケート特集に関連して工藤邦彦君から締め切りギリギリに
「『あの日――昭和20年の記録』を見て」が飛び込んできた。工藤君が評価
するように、このNHK番組は力のこもったものである。一人でも多くの国
民があの戦争の実相に触れるためにも見てもらいたいと思う。
◎今、自らを「急進的自由主義者」と任じて、「東洋経済新報」に健筆を振
るった石橋湛山の評価はますます高い。彼は、あの軍国主義体制下にあって
「小日本主義」を唱え、非武装・非侵略という現憲法の精神を完全に先取り
した論陣を張ったのである。
この号に載せた「靖国神社廃止の議」は敗戦直後10月号に書いたものだが当
時の雰囲気のなかでここまで踏み込んだ記事は見当たらない。
それどころか、今日でも問題の核心をついていて誤りが無い。こういう先賢
を持ったことは私達の誇りである。
◎小泉首相は参議院で法案を否決され、衆議院を解散するという奇手に出
た。争点を郵政に絞り、造反議員つぶしにマスコミを踊らせ、内政・外交の
行き詰まりをそらし、「猫だまし」戦術をとって、公明とともに過半数を狙
うという。目くらまし解散を仕掛けてきた。対する野党はどう戦うのか?
『4年間の「小泉政権」とは何だったのか』を徹底して質し、その欺瞞性を
明らかにするとともに「郵政」を上回る争点を設定したい。
まず、アジア・太平洋国家として米中両大国とどう向き合うのかという骨
太な国家戦略と長年にわたる自民党政治によって完全に閉塞状況に堕ちこん
だ内政の建て直しを目指す「ビジョン」の提起が必要であろう。
小選挙区制度下、社民党・共産党に期待できないとなれば民主党の奮起が
望まれるわけだが、果たして普段から骨身を削って政党としての「政策提起
能力=智力」を磨いていたのだろうか。果たして現在の民主党は国民の期待
に応えられるのか。
「政権選択」というだけでは「護憲」「護憲」というだけの社民党と同じ轍
を踏まないか。
締め切り直前に、今回の解散について岡田一郎君の投稿があった。「失われ
た10年」に引き続き、小泉に「奪われた4年」を取り戻すため、市民メデイ
ア「オルタ」としてもこの総選挙を市民の視線で注視し続けたい。
◎去る5月、旧友の谷洋二君が居を北京に移した。趣味の中国画鑑賞が嵩じ
てついに“遊学生活”にまで至ったようであるが、日本の年金で十分に暮ら
していけるのだと言う。
編集部ではこれを機会に「北京の街角から」というタイトルで庶民生活の
匂いのある通信を毎月「オルタ」に送って貰う事になった。人と人の触れ合
いから生まれる暮らしの情報を楽しみながら北京市民の実像を知り、草の根
交流を積み上げたい。
いつか、ソウルの町からも便りが欲しいが、初岡昌一郎さんや『妻をめと
らば韓国人』(文芸春秋)・『友をえらばば中国人』(阿部出版)などの著
書がある知人の篠原令さんにでも相談してみようかとも思う。
◎「オルタ」も18号を重ね、少しずつ読者や執筆協力者が増え、嬉しい限り
である。皆さんの御支援を力に何とか創刊の素志を持続したいものだが肝心
な編集内容は友人知己を頼った手作りの域をでないから、まだまだと自戒し
ている。読者の皆様の積極的な御参画をお願いしたい。
それでも次第に評価していただけるようになったのか(そう思いたいが)
編集部を力づけるニュースが入った。
なんと憲法学者で人権問題の権威、萩野芳夫関東学院大学教授のホームペ
ージ管理者高橋さんから先生の御希望で「オルタ」を御自分のホームページ
(http://hagino.eco.to)のリンク先に載せたいという御連絡を頂いたのだ。
萩野先生といえば「外国人の人権」(教育社刊)「アジア憲法集」(明石書
店)など多数の著書を持つ高名な法学者である。
「オルタ」にとっては、そのような方がホームページのリンク先の一つに指
定して下さるとは大変な光栄である。しかし、反面、恥ずかしい内容であっ
てはならないという重い荷物を背負ったことにもなる。一層気を引き締めて
編集に取り組みたい。
◎なお、今月号に予定した九州東海大学名誉教授高宗昭敏先生の「文明の変
わり目、裂け目を突く」と題する御寄稿と田島 正さんの連載「東方快車の
旅」の3回目は今月が「敗戦のあとさき特集」のため次号に掲載させて頂き
ます。
◎編集部からのお願い。
「オルタ」は読者の皆様の御協力で「書評」欄の充実を図りたいと考えてい
ます。どなたからでも最近読まれた本の中から「この1冊」ということで推
薦・書評をお寄せ下さい。勿論自著の御紹介も歓迎します。字数はA-4の
1枚を標準として長短かまわず、ジヤンルも問いません。
(加藤 宣幸 記)