【編集後記】 

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◎『米軍に普天間基地の代替施設は必要ない!日本は結束して無条件の閉鎖を求
めよ』これは「元CIA顧問の大物政治学者が緊急提言」というダイヤモンド・
オンライン(2010年5月7日)の見出しで、チヤルマーズ・ジヨンソン日本政策研
究所長(「アメリカ帝国への報復」など著書多数・カリフオルニア大政治学部長
・中国研究センター長歴任)の独占インタービューの紹介である。

 記事は『フランスならば暴動が起きている』の小見出しで始まり、『ヘリ部
隊の訓練は何処でもできる、日本にはすでに世界最大の米海軍基地(横須賀)が
あり、各地に空軍基地も十分あって他国から攻撃を受ける恐れはない。沖縄に基
地負担が集中しているのは、日本の政府や国民の態度と無関係ではない。日本人
が結束して主張すれば米国政府も飲まざるを得ない。』と結ばれている。

 ぜひ、鳩山首相や国会議員と大手マスコミの人たちにも読んで貰いたいと思
う。

 今回の「普天間」ほど大手マスコミによる米国忖度報道(朝日の産経・読売化
も含め)の大量垂れ流しは、かつての「大本営発表」のようであった。何故か殆
ど報じられないが、5月10日、与党議員約100人でつくる『沖縄等米軍基地問題議
員懇談会』の川内会長など民主党有志議員6人のグアム・テニアン視察報告記者
会見があった。

グアム・北マリアナ連邦の両知事と会い、基地誘致に前向きな鳩山首相宛親書
を預かってきたという。鳩山首相のいう「5月末」を控え、吉田健正氏に『ジ
ヤーナリズム精神を失った大手メデイア』と『鳩山首相の裏切りとグアム統合
軍事計画』を2本集中執筆して頂いた。

◎連載の【農業は死の床か再生の時か】は宮崎県に発生した口蹄疫について先年
鳥インフルが茨城県で起きたとき当事者であったときの経験を踏まえ、著者の
濱田幸生氏に『宮崎県口蹄疫パンデミックの様相』を緊急にご寄稿を頂き差し
替えました。政府の初動の遅れもあるようですが被害は拡大しており一刻も早
い収束を念じるばかりです。

◎【河上民雄20世紀の回想】は早くも第5回を迎えたが、今月は「勝海舟の遺
言」として明治期の海舟が、日清戦争に反対し、みんぴ暗殺をも鋭く批判し、公
害と闘う田中正造を励まし続けた史実を明らかにし「勝海舟」が持つ現代的意
義を説かれている。

◎【書評】で高沢英子さんが取り上げた「漱石と朝鮮」の著者金正勲氏はオルタ
が出版した『海峡の両側から靖国を考える』の韓国語版を訳された気鋭の日本文
学研究者である。「韓国併合」100年の今年は日韓両国で様々な角度から両国関
係史が検証されている。国民的文豪夏目漱石が日本帝国主義支配下の満州・朝鮮
をどのように見ていたかという視点は、現代の私たちにも大きな関心がある。

◎【運動資料】は<韓国利川五層石塔還収運動>の要望書を載せた。この運動の
責任者はオルタの執筆者で元韓国外国語大学教授朴菖煕氏である。いま世界的に
文化財の返還問題が起きているが所有権の所在などをめぐるトラブルも多い。こ
の件も日韓の長い交流の歴史を踏まえ、あくまで前向きに当事者間での話し合い
解決を望みたい。

◎<研究会など>1)5月1日・2日とオルタ執筆者有志で大阪から社会文学会理事
荒木傳氏を招き『戦前社会運動史勉強会』を学士会館で開いた。テーマは『明治
社会主義運動と政治活動』・『大正デモクラシーと「大阪朝日」』・『「満州事
変」と無産政党・反フアッショ運動』でコメンテーターとして河上民雄氏を迎え、
10数人の研究者が熱心に討論した。

2)第7回公共哲学カフエが5月9日、東工大田町キヤンパスで『友愛革命は可能
か』をテーマに小林正弥千葉大教授の報告・コメント山脇直司東大教授・稲垣久
和ICU教授で開かれ出席者からは鳩山政権の帰趨と「友愛革命理念」の係わり
合いなどが質されていた。

3)5月14日、旧友の全学連OB篠原浩一郎・小島弘両氏から誘いがあり、
「1960年安保世代の対話・これから50年の日米関係」という世界平和研究所主
催の会に出席した。米国側はG.パッカード(米日財団理事長)、日本側は中村
光男(千葉大名誉教授)司会は藤原帰市(東大教授)という錚々たるメンバーで
折からの沖縄問題もあり、大変興味深い対談の実現に会場は盛り上がった。

◎【お詫び】好評連載中の【海外論調短評】は著者の初岡昌一郎氏が海外出張中
のため今月は休載となりましたのでご了承下さい。 

◎【訃報】5月3日、オルタ執筆者太田博夫氏(元朝日新聞政治部記者・社長室長
・93歳)が肺炎で亡くなり、通夜に参列した。数年前まで太田氏はマスコミ各社
政治部OB会会長として活躍の傍ら、オルタ関連の会にもよく出て下さった。

私が始めてお会いしたのは1950年頃、まだ日本社会党が左右社会党に分裂する
前で氏が朝日新聞政治部記者として社会党の左派を担当した時だ。一面トップ
に西尾末広氏との独占インタービューを載せ、それが弾みとなって民社党が結
党されたのを、「記者太田」は後年まで語って止まなかった。

また、早稲田出身の各社政治部記者で作る稲門会でも読売の宮崎吉正会長とと
もに浅沼稲次郎氏を囲み、固く結び合った人間模様も忘れられない。長い間の
ご友誼を謝し、謹んでご冥福をお祈りします。

     (加藤 宣幸 記)

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