【編集後記】 

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◎かつて社会党の左右抗争が激しい時に原彪という立派な党幹部が「豆を煮るに
豆がらを焚く」と戒めたのを覚えている。民主党の党首選はまさにその様相であ
った。当選した菅首相は自分に対する積極的な支持だとカン違いして奢らないで
欲しい。小沢氏に「手腕」への期待はあったが菅氏にそれはなかった。日本の首
相がコロコロ変わりすぎないための消極的支持だったと謙虚に受け止め、官僚依
存・対米追随政治から、非自民政権らしい実績で応えて貰いたい。 菅新代表誕
生を機に毎号「横丁茶話」で健筆を振るわれる西村徹氏に「民主党さん。ドウナ
ッテイルノカ?」と問いかけて頂いた。  

◎自由な表現を規制するものとして弁護士会・映画・演劇・出版界などが猛反対
し、注目を集めた「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案」について、
当初から強い危惧を持ち、反対運動に加われた岡田一郎氏の「表現規制の動きと
国政・都政」という最近の情勢についての報告を載せた

◎大正から昭和にかけ、思想家・宗教者・社会事業家として、八面六臂の活躍を
した賀川豊彦氏は稀有の人物である。当時、ノーベル賞候補になったといわれる
ほど海外では高名であったが国内では、なぜか、その業績について、それぞれの
分野での評価は低い。しかし近年、生協運動関係では、それを再評価する声が非
常に高い。これについて、同じキリスト者・社会民主主義者として晩年の賀川氏
に接した事もある河上氏が【河上民雄20世紀の回想】で取り上げられた。

◎今月からメデイア批評家川西玲子氏による【オルタの映画評】が始まる。映像
分野の寄稿を待ち望んでいた【オルタ】にとっては本当に嬉しいニュースだ。い
ま活字メデイア界では「新聞は滅び、雑誌も死の直前」といわれる。これは単に
ITイノベーションが原因ではない。大資本が情報を操作し、一方的に送りつける
仕組みそのものが問われているのだ。このメデイア大変動に向き合う私たちの「
オルタ」はウエブの文字情報である。映像は文字では伝えきれないものを創り出
し、映画は特にTVと違った役割を果たす。幸い近頃は日本映画が世界で存在観を
示し始めたという。【オルタ映画評】は私たちを優秀な映画に導いてくれるに違
いない。

◎【出版案内】はオルタ執筆者篠原令氏の『中国を知るために』(日本僑報社刊
・1800円)の紹介に「自著を語る」に代え、あとがき全文を載せた。(書評は別
号掲載予定)好著を強くお薦めしたい。

◎【オルタのこだま】では生活クラブ生協・神奈川名誉顧問横田克己氏からの民
主党にたいする緊急政策提言ともいうべき「三つの戦略課題と政策アジエンダ」
――「日本政治」の持続可能性を保全し、社会の構造改革(小泉的「政治優先」
改革に非ず)を実現して時代のオルタナチブに舵をきるために――」という投稿
を載せた。

◎9月9日初岡昌一郎氏が主宰するソシアルアジア研究会の定例会があり、元駐
インド大使野田英二郎氏の「インド経済の発展と諸問題」という報告を聞いた。
9月18日渋谷・アップリンクで映画「ANPO」の上映と米国人監督リンダ・ホーグ
ランド氏・画家朝倉摂氏・映画監督富沢幸男氏のトークショーに出かけた。(映
評は別掲)

【訃報】オルタ執筆者野村カツ子さんが8月21日99歳で亡くなられた。野村さん
は長年国際消費者機構(IOCU)で活躍し、米国のラルフ・ネーダー氏と深い信頼
関係を築くなど、その名声は海外で高い。私は1948年ごろ妻の茂代が婦人有権者
同盟の市川房枝さんや野村さんから教えを受けて以来、ご指導を頂いてきた。と
くに著書「アメリカの消費者運動」の上梓、ハイム化粧品の普及など個人的な想
い出は尽きない。
   
野村さんは1944年同志社大学を卒業し、すぐ賀川豊彦氏の江東消費組合(東京)
に入職した。戦後は日本生活協同組合・婦人有権者同盟・総評オルグなど一貫し
て活動家の途を歩き、個人でも「海外市民活動センター」を創り、堪能な語学力
を生かし「海外の市民活動」を90号まで発行した。野村さんは生涯を一切の個人
的、利己的なものを捨て己を神に捧げようとする社会的キリスト教の精神を貫い
た社会運動家だった。1905年にはもう一つのノーベル賞運動の「世界1000人の婦
人活動家」にノミネートされ私たちは心から祝った。敬愛する野村さん。長い間、
本当にご苦労さまでした。安らかにお眠りください。

                      (加藤 宣幸 記)

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