【オルタの視点】

設立50周年を迎える生活クラブの近況

加藤 好一


◆◆ はじめに

 1965年に、東京の世田谷の一角で誕生した生活クラブは、3年後の68年に生協に組織転換し、来年で生協設立50周年を迎えます。この生活クラブの近況についてご報告します。

 生活クラブ生協は現在、首都圏を中心に北は北海道から南は関西圏まで、1都1道2府17県に組織されています(32会員)。組合員総数は37万人強、15年度の総供給高は850億円弱、組合員が拠出している出資金の総額は400億円弱です。組合員の月平均利用高は、ずいぶんと低下してしまいましたが、それでも日本の生協平均の倍の20,500円ほどです。

 また関連会社が数社あり、乳製品や鶏卵、肉牛などの生産部門やグループの物流などを担っています。生協本体とこれら関連会社の職員(社員)総数は1,300人います。またグループにはワーカーズ・コレクティブ(生産協同組合/以下ワーカーズ)という、働く場づくりの運動があり、その一つの業種として生協業務を担うワーカーズがあります。これらの仲間を加えると全体で2,000人超になりましょうか。

 基本となる事業と運動は、今日においても食を中心とする共同購入事業です。しかし現在の生活クラブでは、この第一の事業に加え、第二の事業としての共済事業、後述する第三、第四の事業である福祉事業や電気事業などに拡がっています。ちなみに先の総供給高には、関連会社や第二から第四までの事業高を含めていません。なお生活クラブ連合会は90年に設立され、09年には生活クラブ共済連を設立しました。

◆◆ 1.現在の事業・運動戦略 ― FEC自給ネットワークづくり

 国連は12年を国際協同組合年としましたが、その際日本でも、生協をはじめ農協、漁協など全国の協同組―合が結集し、そのための全国実行委員会を結成しました。日本生協連は当然のことながら、その実行委員会の構成員として参画しましたが、生活クラブもそこに参画し(でしゃばり)、私が委員として加わらせていただきました。

 この実行委員会の代表に経済評論家の内橋克人氏が選任されました。内橋氏はかねてより共生・協同の価値について訴えられてきましたが、その一環としてFEC自給圏という運動戦略論を提起されていました。内橋氏は代表として、このFEC自給圏構想を、協同組合の使命とすべく全国の協同組合に呼びかけられたのでした。生活クラブ連合会は、これまでの事業と運動の実績と、この内橋氏の問題提起を引き受ける形で、「FEC自給ネットワーク」のさらなる形成を、15年度から始まった中期5カ年計画の主たる方針として掲げました。現在その取り組みを一つひとつ進めているところです。

 蛇足ですが「FEC」の意味について記しておきましょう。これは食料(Food)、エネルギー(Energy)、福祉・介護(Care)の英単語の頭文字で、内橋氏はこの「FEC」の自給圏づくりこそ、協同組合が担うべきものとされたのです。 生活クラブとしては、まさに我が意を得たりの問題提起でした。以下、生活クラブにおけるこの「FEC自給ネットワーク」の現状という形で近況報告をします。

◆◆ 2.生活クラブ原則と遺伝子組み換え食品

 生活クラブでは商品とは言わず、消費材という言い方にいまでもこだわっています。組合員が共同購入している材は今日ではかなりの数になっていますが、その一つひとつの材は、組合員と生産者が話し合って作ってきたもので、食の自給率を高めることや安全性の追求、有害物質の削減、自然資源の持続可能な使用、ごみの削減とリユース、エネルギーの削減、リスクの低減、情報の開示など、追求すべき課題は多岐にわたります。これらは「生活クラブ原則」であり、その結果としてある材を、いまでも商品とは言いたくないのです。

 このような努力を積み重ねてきた結果、これら原則の達成レベルは他生協と比較しても決して引けを取るものはないと自負しています。しかし本稿では、遺伝子組み換え食品の問題と、面的・複合的な産直提携と位置づけている、生活クラブの最大の米の提携先である遊佐町との提携についてご紹介します。

 日本で遺伝子組み換え食品(GMO)の流通を厚生省(当時)が認めたのは96年のことでした。それまでの食の問題は、食品添加物や農薬の問題が中心でしたが、この年には実に様々な問題が噴出しました。BSE(いわゆる狂牛病)、病原性大腸菌O-157、環境ホルモンなど食の問題が大いに変質したのです。私はこれを食問題の複雑化、高度化、グローバル化と評しましたが、その筆頭がGMOの問題でした。何が問題なのかはいまでも論争が続いていますが、生活クラブとしては健康への影響(健康被害)、環境への影響(種子汚染など)の懸念とともに、モンサント社などをはじめとする巨大な多国籍企業による種の支配について、重大な危機感を持ちました。

 国際協同組合同盟(ICA)の80年モスクワ大会で、レイドロー博士は「西暦2000年における協同組合」というレポートを提起しました。博士はこのなかで、1844年に英国で設立されたロッチデール開拓者組合は「混ぜ物をした食品に対し宣戦布告した」と強調しました。そして今日の消費者協同組合どうかと問いかけ、「20世紀型の不純物混入を排除するために何をしているのか」と、博士は生協を叱咤したのでした。合わせて「協同組合は世界経済の支配を強めている巨大な多国籍企業の増大する権力に対抗していかなければならない」とも訴えました。生活クラブはGMO問題を、まさにこのような問題の象徴として受け止め、予防原則に基づき、生活クラブとして精一杯の抵抗と防御の努力を積み重ねてきました。

 抵抗と防御を貫く際の基本原則は、GMOを消費材の原料から(可能な限り)排除することです。とにかくトウモロコシと大豆がその対象となってしまったからには、これは相当に厄介なことです。この二つの農産物だけでも、食品に与える影響は主原料、副原料をはじめ微量な添加物まで実に広範だからです。

 もう一つの基本原則は情報開示です。その材にGMOが含まれるのかどうか、含まれるとしたらどのくらいのレベルなのか、これを徹底的に追跡して明らかにすることです。情報の問題は、消費者が選択する際の唯一の手段という意味において、決定的に重要です。

 生活クラブではGMOについて、かなり早い段階から排除と情報開示について、かなり高いレベルを達成できています。組合員の熱い願いに応えてくれた、提携生産者の努力に感謝申し上げる次第です。

 なお昨今、新たな生命操作技術としてゲノム編集技術が登場し実用化が進んでいます。早急にこの課題について立場を明確にし、対応策を講じる必要があります。ただし厄介な問題になりそうだという予感があります。

◆◆ 3.食料自給力と家族農業を守る ― 遊佐町との産直提携

 生活クラブが遊佐町との産直提携を始めたのは72年のことです。したがって数ある提携関係のなかでも、遊佐町とのそれはかなり長い歴史を持っています。当時は遊佐町農協でしたが、現在はJA庄内みどりとして合併しています。提携が始まる2年前に日本では米の生産調整(減反)が開始されていました。遊佐町との提携の長い歴史は、この政策との格闘という側面を色濃く持ちつつ、今日に至っています。

 生活クラブの組合員が遊佐の米を最も食べたのは90年代の初頭で、その総量は16万俵(1俵=60㎏)に達しました。その当時の組合員総数は20万人位だったでしょうか。現在は37万人になりましたが、米の産地も増えたとはいえ、遊佐の米の消費量は10万俵を割ってしまっています。

 日本の農業は高齢化が深刻ですが、特に稲作ではこれに加えて消費量減の問題が深刻で、生活クラブにおいても残念ながらこの傾向を免れません。日本人の平均だと、東京五輪当時(64年)は118㎏を食していましたが、現在は50㎏そこそこです。そのため減反、転作が必須であることは言うまでもありません。にもかかわらず、日本は農産物の輸入を米国等から強いられ、現にミニマムアクセス米を米過剰のなかで輸入しています。

 さてここでは、生産調整(減反)との格闘の歴史を振り返る余裕はありませんので、格闘の結果がいまどうなっているかについて報告します。遊佐町の減反率は38%に達しています。簡略化して言えば38%の圃場で主食用の米を作ることができません。そのうえすでに記したように、生活クラブの消費量が減ってしまっています。提携ということをふまえるならば、これらの問題について有効に対処しなくてはなりません。

 ちなみにこの減反率は、本年産までは国が数字を決めて全国に配分していましたが、来年から国はこれを放棄します。この事態をどう乗り切るかがいま、稲作の現場に大きく問われている重大な問題になっています。

 こうして減反を強いられた圃場で、生活クラブとしては、生活クラブに必要な転作作物を作ってもらう形で対処することを方針としました。その際、国の助成制度なども有効に活用し、多彩な農産物をつくる輪作体系として確立させることを課題としました。

 まず大豆です。これらは味噌、醤油、納豆、豆腐などの生活クラブの提携生産者につなぎます。煎餅などの原料となる加工用米、さらに酒米、菜種、そば、加工用トマト等も同様に生産者につなぎます。これらは一朝にしてできた関係ではありません。例えば大豆でも品種の向き不向きなどが生産者個々にあるからです。菜種などは作り方もわからない、という場合もあります。

 しかしこれらの努力の結果、現在の生活クラブの遊佐町との提携は、町の全圃場の62%を占めるに至っています。これを米に換算すると16万俵ほどになる計算で、かつての最大量に匹敵します。生活クラブの組合員は、米の消費量こそ落としましたが、米以外の様々な消費材を通して遊佐の農産物を食し、その結果として遊佐町の農地を守っているのです。

 私が面的・複合的な提携と強調しているのはこのことで、この関係こそが持続的な生産と消費を担保し、家族農業を維持し、遊佐町の美しい景観や多面的機能を守ることになると考えています。

 現在の転作作物で量的に最大のものは飼料用米です。日本の稲作は危機的で、現在この飼料用米が唯一ともいえるような希望になっていて、全国に広がっています。この取り組みの先鞭をつけたのも、遊佐町と生活クラブの提携関係からでした。

 飼料用米の仕向け先は生活クラブの豚肉の生産者である(株)平田牧場です。平田牧場が肥育する豚の総数は17万頭/年ですが、この豚たちは現在79㎏の米を米国のトウモロコシに代えて食べています。日本人の平均米消費量よりもはるかに多い量です。昨年は平田牧場の豚だけで、総量にして1万トン以上の米を消費しています。

 飼料用米の取り組みは、食料自給率を高め、また米国に支払っていたトウモロコシ代金を地域に還元させることになります。この取り組みを何としても維持していかなければなりません。決め手は収量の増大と生産-流通のコスト削減、そして助成制度(補助金)の恒久化です。
 いろいろと言いたいことがまだあるのですがこれ以上はあきらめましょう。機会がありましたら、巻末に記した拙稿をご覧いただければ幸いです。

◆◆ 4.電力事業の現状 ― 電気の共同購入

 生活クラブの電力事業は、福島第一原発事故以降において促進されたのですが、脱原発の運動にからめるとチェルノブイリ原発事故にまでさかのぼります。
 特に北海道の仲間は泊原発反対の旗色を鮮明にし、01年に「市民風車」を建設しました。この脱原発に向けた流れは、『「六ケ所再処理工場」に反対し、放射能汚染を阻止する全国ネットワーク』の運動などによってグループ統一的なものになります。この運動は、実は70年代半ばから始まった協同組合間協同とも言える、「せっけん運動」で培われたネットワークが母体になっています。

 その後、福島原発事故を機に、単に反対ではなく再生可能な自然エネルギーをつくり、これを共同購入しようということで、以後急ピッチで進めてきました。現在の基本方針は、①脱原発、自然エネルギーの推進、CO2の削減の3つを、運動と事業の柱として進めること。②「生活クラブエネルギー7原則」にもとづいた事業を進めること。③「電気の共同購入」(通称は生活クラブでんき)への組合員の参加を広げること、の3つです。

 ちなみに「生活クラブエネルギー7原則」についてもご紹介しておきましょう。①省エネルギーを柱とします。②原発のない社会、CO2を減らせる社会をつくります。③地域への貢献と自然環境に留意した発電事業をすすめます。④電気の価格や送配電のしくみを明らかにします。⑤生活クラブの提携産地との連携を深め、エネルギー自給率を高めます。⑥エシカルコンシューマーとして、再生可能エネルギーによる電気を積極的に共同購入します。⑦生産から廃棄までトータルに責任を持ちます。ちなみにエシカルコンシューマーとは「倫理的・道徳的な消費活動に取り組む消費者」というような意味です。

 この7つを原則に、発電施設の建設、そして昨年の6月から電気の共同購入を組合員に呼びかけています。この全体の仕組みは、関連会社の(株)生活クラブエナジーを軸にして統括しています。関連する自然エネルギー発電所は、生活クラブのある地域(生協関連施設等)を中心に順次建設するなどして、現在全体で37カ所あります。そしてこの電力を共同購入する組合員は、この3月の段階で1万人弱になっています。

 今年着工する発電施設についてご紹介します。施設名は「庄内・遊佐太陽光発電所」と言います。前節でご紹介した遊佐町に建設するのです。発電量は年間約18,000メガワットというかなり大きなもので、約5,000世帯の使用量に相当します。建設費は約50億円を見込んでいますが、その資金はグループの直接貸し付けと、JA庄内みどり(この事業の主要な当事者の一つ)や地域金融機関等からの融資、そして約4億円を市民ファンドとして、組合員をはじめ一般から募集します。これにより遊佐町と生活クラブは、食料(F)のみならずエネルギー(E)の共同購入という複合的な提携関係をさらに促進させることになります。

◆◆ 5.コミュニティケアの現状

 生活クラブ・神奈川では、82年にデポー(小型店舗)という業態に着手しましたが、これにともなってワーカーズ運動にも着手しました。このデポーの業務を担う“にんじん”(人人)というワーカーズの設立がこの運動の端緒でした。
 ワーカーズとは、自ら出資して働く場を作り、自らが経営者でもある働き方をめざす運動です。“にんじん”はデポー業務のみならずデポーに併設されたレストラン等も経営します。この“にんじん”が先駆的なモデルとなって、多くの異業種・別人格のワーカーズが設立されてきました。

 当初は、“にんじん”がそうであったように、生活クラブの組合員が事業主体であるため、主力の業種はいきおいレストランのような食関連、例えば総菜やパン等々でした。しかしその後、ワーカーズ事業の主力は地域福祉に移行しました。ちなみに生活クラブ関連のワーカーズは全国に500団体強、組合員総数は17,000人強、総事業高150億円ほどに成長しています。
 90年代に入り神奈川や千葉で特別養護老人ホーム等を建設し、社会福祉法人を設立する等、グループの経営資源を福祉に集中的に投下してきました。これ以降、福祉事業が着実に増加し、介護保険法の施行等ともあいまって、グループの福祉関連事業は飛躍的に発展することになりました。

 ちなみに共済事業も、90年代初頭から単協の事業として始められました。その後、01年に連合会として事業認可を受け、連合事業として位置づけを再編しましたが、その後の生協法改正(悪)によって共同購入事業と共済事業の事業分離を強いられ、共済連の設立を余儀なくされたのでした。16年度末で、共済加入者は日本生協連に連なるCO・OP共済が11万人弱、神奈川が開発した経緯のある生活クラブ独自の共済が4万人弱という実績です。

 現在(15年度)の福祉事業の数字的な概況をご紹介しましょう。訪問介護、通所介護(デイサービス)、居宅介護支援、特別養護老人ホーム、食事サービス、移動サービス、保育・子育て支援、「障害者総合支援法」にもとづく事業等、事業所の総数は全国824ヵ所、就労者数15,000人弱、登録利用者数66,000人弱、総事業高172億円、訪問介護等のケア時間数111万時間という実績です。

 現在のグループ別の状況は、事業高では東京、神奈川、千葉で90%を占めていて、過去5年の実績では千葉の事業伸長が顕著です。事業内容別の事業高シェア(カッコ内の数字は事業所数)では、訪問介護16.3%(139)、デイサービス13.4%(70)、居宅介護支援7.2%(76)、食事サービス6.7%(56)、特別養護老人ホーム6.4%(4)等ですが、ここ数年で伸長著しいのが保育・子育て支援で10.0%(112)と第3位の事業高になっています。

 ただしこれらの事業は連合事業という位置づけにはありません。現在は、共済連を軸に、各地の経験交流や事業発展のための連帯の強化等の後方支援的な機能が連合レベルの役割です。ご紹介した福祉事業の事業規模は、すでに生協陣営では群を抜いたものになっていますが、今後において不可避な少子高齢化、貧困・格差の進行などをふまえると、今後ますます強化すべき課題です。

 なお電気と同様に、福祉・たすけあいにおいても8つの原則を掲げています。項目のみご紹介すれば、多様性、尊厳の尊重、参加型社会、働きがいのある人間らしい仕事、居場所づくり・役割づくり、子育て支援、介護支援、社会的孤立への支援がそれですが、詳しくは生活クラブ共済連の Web ページなどをご覧いただきたいと思います。

◆◆ 6.今後に向けて ― 加藤私見

 最後に今後に向けた加藤の私見を記させていただきます。
 第1の課題は、言うまでもなく以上にご紹介した「FEC自給ネットワーク」の諸テーマごとに、さらに厚みと深みを増していくことです。地域に根差し、人が主人公であり、運動性と事業性が両立可能な協同組合だからこその可能性が、ここで試されると考えています。

 その一方で、東アジアを中心にこの運動を広げていくことです。99年に生活クラブ連合会は、韓国と台湾の生協との間に「三姉妹会議」という連帯関係を築きました。この三者は低すぎる食料自給率、少子高齢化、原発という問題を共通にしています。それぞれが「FEC自給ネットワーク」に取り組み、相互の経験を交流させ、切磋琢磨して運動と事業を発展させていければと思っています。

 第2の課題は、16年1月に発効した国連が定めた「持続可能な開発目標」(SDGs)に、第1の課題を接続させていくことです。SDGsでは30年までに、世界の貧困や飢餓のみならず、エネルギー、気候変動、格差、平和など、17の目標と169のターゲットを定めています。「FEC自給ネットワーク」の諸テーマは「循環」という思想で共通しています。この「循環」こそが「持続可能性」を担保します。

 ICAはSDGsにおいて協同組合こそが貢献できるとの認識から、世界中の協同組合から10組織を選抜し、そのためのアドバイザリーグループと位置づけました。生活クラブはその一つに選ばれましたが、であればこそますます「FEC自給ネットワーク」をSDGsに接続させ、この先導役たることが求められます。

 古沢広祐教授(国学院大学)は、SDGsの実現に向けた取り組みにおいては、経済・環境・社会のバランスを調和させること、環境の限界や貧困・格差などの社会的矛盾に対して、経済を変革し制御していくことの重要性を指摘しています。そのためには協同組合がその自覚をもって、とりわけ「生産と消費の抑制や適正化」という難問を解くべきことを強調されています。とすれば、レイドローが主張した、暴走する資本と政治を制御するものとしての「協同組合セクター」(市民セクター)の登場というテーマが、あらためて想起されるべきでしょう。

 第3の課題は組織率を高めることです。組織率とは協同組合における重要な指標です。これは一定のエリア内の総世帯数に対して、何世帯が組合員かを表す指標です。
 日本の生協は全国でみると組織率が37.7%(15年度)に達しています。兵庫県や北海道では60%に達するほどです。ところが生活クラブは、組織のある都道府県に限定しても0.9%(同年度)にすぎません。生活クラブグループの中核組織は東京、神奈川、埼玉、千葉、長野ですが、この5エリアで1.39%、最も組織率の高い神奈川でも2.11%にとどまります。

 かつて生活クラブは「3%集団」と自らを卑下していましたが、実情は記したとおりです。文字通り「3%集団」となるためには、いま生活クラブがある地域において、組合員数100万人超の生協グループになるということを意味します。
 生活クラブは、以上に記したように、第1と第2の課題を推し進めていく決意です。しかしこれをより確実に、強固にしていくためには、「大ぜいの私」(岩根邦雄)としての仲間が必要です。同時に、多くの皆様からの変わらぬご支援・ご協力が必要です。最後にこのようなお願いをさせていただいて、本稿を閉じさせていただきます。

 (生活クラブ連合会会長)

<参考文献>
・岩根邦雄『生活クラブという生き方』所収の拙稿解題「若き岩根邦雄と生活クラブの『夢の時代』」太田出版、2012年
・村田武編『食料主権のグランドデザイン』所収の拙稿「日本農業と消費生活協同組合」、農文協、2011年
・角田重三郎『「新みずほの国」構想』所収の拙稿解題「消費者と生産者をつなぐ飼料用米生産の可能性」、農文協、2015年
・S.M.ドルーカー『遺伝子組み換え食品のねじ曲げられた真実』所収の拙稿解題「日本の消費者はドルーカー氏の警鐘をどう受け止め、どう生かせばよいか」、日経BP社、2016年
・加藤好一「日本の消費者運動と遺伝子組み換え作物」「農業と経済」2017年3月臨時増刊号「ここまで来た バイオ経済・生命操作技術」、昭和堂
・農文協編『脱原発の大義』所収の拙稿「これからの産直提携とは」2012年
・道場信親『「戦後日本の社会運動」と生活クラブ』解題拙稿「道場さんが私たちに残したもの」市民セクター政策機構、2016年
・道場信親『社会運動としての協同組合』市民セクター政策機構、2017年


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