【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(37)

「近く」と「遠く」のコロナの話し③

坪野 和子

 今年は長い梅雨、そして暑い日が続いています。コロナの自粛が終わって、また感染者が増えていますね。みなさまご自愛くださいませ。

<マスク寄付のお願い>
 インドでは、コロナ感染者が200万人を超えました。東京ベイインターナショナルスクールでは、インド現地のNPOを通じてマスクの寄付活動を行っております。 ※画像をご利用しての拡散も可能なかたはご協力お願いします。

画像の説明

[郵送による寄付]
  〒136-0071 東京都江東区亀戸1-18-9
  東京ベイインターナショナルスクール 「マスク在中」

 メッセージの有無は問いません。

【情報】
 インドでは、今「ノーマスク」外出は、500ルピーの罰金を科せられます。日本円にすれば700円ちょっとなのですが、日本円の4万円が平均月収で、スラムや貧困層はマスクを買うことも困難で、コロナ禍で仕事がない人もマスクを買うことは困難で、物資が届かない遠隔地の人もマスクを買うことは困難で、そういう人たちは「ノーマスク」にならざるをえません。この中には、被差別の階層や宗教の人たちも含まれます。
 インドのほとんどが今雨季なので、少し涼しいので、イメージで「インドは暑いからマスクなんかしないんじゃない」などと思わないで下さい。

◆ 1.「近く」のコロナの話し ラマダン明けて自粛終わって

 今年のラマダンが早い時期だった上、あまり暑い日がなく、「喉が渇いた」という辛そうな様子をみることがありませんでした。ラマダン明けのイードでは、ここ数年、バングラデシュ人のご家庭に招待されることが多く、今年もお邪魔しました。神様の捧げものが牛で、その料理がビーフカレーなので、インド人のお宅にお邪魔して山羊をいただくよりいいです。インドのイスラム教徒は、宗教上、牛は問題ないのですが、現地で食べなれていない州から来たご家庭もあります。

 8月の連休で、各地のパキスタン人たちが川辺でBBQを大体同じ日に行っていました。「空気読めない」人たちのグループが動画を流しました。参加者全員「ノーマスク」で、いえ、食事中ではなく、食後です。川の近くでぶらぶらしているとか、川に入って遊んでいるとか、遊んでいるシーンでした。呆れたのですが、ご注意申し上げました。
 その逆に別の地域のパキスタン人家族数組は、合同BBQはやめて各家庭で持ち出しして、家族ごとに食事をして、密にならないように距離を置いて座っていたそうです。食後、マスクをして男性同士、日本人の奥様同士、パキスタン人の子どもたち、向き合わずに並んでおしゃべりをしていたそうです。

 こんなに違う!「〇〇人は」は存在しない。ローカルな在日コミュニティで日本文化への配慮に差があります。

◆ 2.「遠く」のコロナの話し カネオクレタノム乞食 その2

 前回書いたラジャスタン州のオンラインで、有料ダンス講座を始めることにしたと連絡があった音楽グループの女性。「民俗舞踊を習いたい女の子がいたら紹介してね」「企画書を送ってね」と言ったらそのままでした。
 しばらくして…足元に包帯を巻いた写真を送ってきました。最初「コロナのしもやけ」か?と思いましたが、よく見ると巻かれていない足の指に切り傷があったので、怪我だとわかりました。しかし…骨折なのに添え木を足先だけつけてぐるぐる包帯を巻きつけ、切り傷がはみ出ている…なんでこんないい加減な治療なんでしょう! 日本だったらギプスを足首まで固定するんですけどねぇ。ラジャスタン州はこんなに医療レベルが低いんだわ。だから感染者の増加が止まらないんだわ。

 そして…「6か月、ダンスが踊れない」…「カネオクレタノム」…また?
 今日、ビデオ電話がきました。また生徒を紹介してほしい。本人はまだ踊れませんが、本人のお母さまがオンラインで指導し、家族で教える、という旨を伝えられました。企画書が欲しいと言ったら「字がかけない(英語が書けない)」「え?」「では、字が書ける家族にディテールだけでも書いてもらって。それとあなたのダンスの写真と動画を送ってね。インターネットで日本人に宣伝するから」「う…バイバイ」「またね」…

 お母さまの英語力でどうなんでしょう?この計画。ですが、日本人も英語はこのレベルですから。文字で伝えられないのであれば、宣伝も難しいのですが。
 ラジャスタン州はロックダウンを実質解除していません。時間制限で外出不能です。

◆ 3.「遠く」のコロナの話し デリー在住のチベット人

 ニューデリーには亡命チベット人居留地域「マジュヌカティラ」があります。ここは、30年前に訪れたときは、住まいと日常生活の自分たちの生活のためだけのいくつかの小さなお店と仏具屋と経典専門店と小さなお寺で、地味な雰囲気だという印象でした。昨年訪れて…同じ場所とは思えないくらい栄えていました。

 居留地の入り口にチベット・デザインのゲートができていて、ホテルやお土産屋やおしゃれなカフェ、ブティック、スパ(マッサージ)、ヘアサロン、エステ、そして路上の洋服屋、バッグ…。しかも、新難民が現地文化を持ち込んで、チベット料理屋のメニューも豊富で驚きました。居留地のお寺もネパールの小さなお参りしやすいお寺のようになっていました。ちょっとした観光スポットになっていました。

 ここに住む日本語の通訳・翻訳者のチベット人男性と、日本語学校を作ろうという計画をしております。私とパートナーティーチャーが日本に帰国してから、彼が南インドへセーター販売のアルバイト出稼ぎに行って音信不通だったこともありましたが、月に2回ほど電話会議をしていました。今年2月下旬のチベット正月に、彼は高僧による新年の法話の動画を送ってきました。その次の電話から仕事の話しにプラスして「チベット人居留地・コロナ実況」加わってきました。電話が長くなりました。

 「今、ここは外出禁止だからね。3日前にコロナ感染者が出た。かかった人は外国から帰って来た。彼が病院に行ってから居留地全部消毒された。食べるものは外から入ってくるからいいけどね」
 少しアルコール依存の彼は「酒が完全に禁止された。居留地から酒がまったくなくなった」
 「居留地だけじゃなくインド全体がロックダウンになった。ゲートの外に出ようとしたチベット人が警官に棒でぶっ叩かれた。2人くらい叩かれたのを部屋から見たことがある」
 「今は、ロックダウンで何もできない」「そんなことないわよ、オンラインで生徒をさがして」「うーん、やってみるよ」(すでにやる気がなくなっていたようです。)

 最近の電話。一応仕事の話しから始まりました。この時はやる気があったようでした。
 「日本はロックダウン終わった?」「自粛終わった」「インド(デリー)も終わったけど、ここ(居留地)だけ、またロックダウンになっちゃったよ」「何人出たの?」「3人」「うーんー。その狭いエリアでそんなに出たらし方ないわね」

 「出られるようになったらダラムサラ(ダライ・ラマ法王の寺院/チベット亡命政府所在地)に行こうと思っている」「あら、いいじゃない?」「リハビリテーションしようと思って」「え? 今、お酒が飲めないからアルコール抜けたんじゃないの?」「いや。あちこち体に悪いことをしていたから影響を感じるんだ。それと生徒を見つけるから、難民パスポートで日本語学校や技能実習生のビザが取れるか、取れるならどんな書類が必要か調べておいてね」
 おお! やっと本気になってきたわね。ロックダウンのおかげでアルコールが抜けたのかしら? インドは自粛ではないから、粛々と生活してくださいね。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

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