【運動情報】

野田政権のTPP8月参加表明、12月参加もくろみを阻止しよう!

                  濱田 幸生
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  野田首相は、小沢氏が不満分子を引き連れて脱党し、中間派を無力化した今、
ほぼ完全な支配権を握りました。次なる標的は、自民党執行部も条件付き賛成を
しているTPPだと目標を定めたようです。この間の消費税攻防で、野田政権は
自民党野田派と揶揄されるほど自・公と密着しており、この三角同盟の力で一挙
にTPPまで押し渡る可能性が濃厚になりました。

 6月のメキシコでのG20では表明にまで至りませんでした。それは未だ反対
派が民主党の半数を占めていたからですが、そのためにオバマ大統領との会談は
わずか数分の立ち話に終わりました。表面的にはいったんはTPP参加の危機は
去ったかに見えましたが、その舞台裏では着々とTPP参加の裏交渉が進んでい
たのです。その一角が米国からの自動車交渉での譲歩要求として日本に突きつけ
られていることを、民主党TPが明らかにしました(「日本農業新聞」7月6日
による)。

 これに対して、内閣府大串政務官は、「自動車について、いくつかの項目で前
進を得られるということを(米国)議会に通達できるように米国政府は希望して
いる。信頼醸成のための材料・譲歩を求めている」と述べました(同)。おそら
くは、TPP交渉参加事前交渉の場で政府は、「信頼醸成のための材料」として、
外務当局や経済産業省は、米国にいくつもの妥協を既にしているのではないか思
われます。

 これは、国会審議はおろか、内閣会合などの一切の諸手続きを超越してのもの
です。このような事ができるのは、TPPが、国内法を外国によって自由に変え
らることを狙ったものでありながら、外交条約交渉の範疇に入るために憲法73
条により制約を受けないからです。

 このような時に、産経新聞7月10日の衝撃的ともいえる記事が載りました。
同紙によれば、日本政府は既にこのような読みをしているとされています。

「米政府は近く、議会にカナダ、メキシコの参加承認を求めることにしており、
手続きは9月末までに完了する運び。米国で10日まで開かれている9カ国によ
るTPP交渉は今後、9月と12月に予定されているが、両国の正式参加は12
月になる見通し。日本が8月中に関係国に伝達できれば、米議会の承認手続きは
11月末までに終わり、12月の交渉入りが可能になる。」

 来月、野田政権はTPP参加表明を、一切の国会審議を超越して単独で決定し、
これをもって米国議会「90日ルール」の終了する今年末の正式交渉入りを目指
している可能性があります。これは既に参加を求めているメキシコ、カナダとい
うNAFTA(北米貿易自由協定)組と同歩調をとることを考えたものだとされ
ています。ちなみにこの両国に対して、既にTPPに加盟している諸国は、一切
の条約内容の変更は認めないことを通告してきています。

 その場合わが国もまた、TPPによる例外なき関税自由化、国民皆保険制度の
廃止、外国人労働者の受け入れ自由化、JAの金融部門と流通部門の切り離し、
外国企業の国内農業参入、食品安全基準の切り下げ、そして植民地主義的ISD
条項などの市場原理主義の攻撃にさらされることになります。

 野田政権には、消費税党内闘争での勝利の後政治力学的勢いがあり、一挙に8
月中の政府参加表明、12月の正式加盟に突入する可能性が高くなりました。私
たちは日本農業の存亡をかけてこれを阻止しなければなりません。

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TPP交渉参加、来月表明 政府 カナダ、メキシコと歩調
  産経新聞 7月10日

政府は9日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加問題で、8月中に
参加を正式決定し、米国など関係9カ国に通告する方針を固めた。早ければ8月
上旬に消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案が成立するのを待ち、
野田佳彦首相がオバマ米大統領ら関係国首脳との電話会談で正式に伝達。12月
にカナダ、メキシコと同時に交渉入りすることを目指す。

複数の政府関係者が明らかにした。政府内では、9月上旬にロシア・ウラジオス
トクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて参加
を伝達する案も検討されたが、首脳会議にオバマ大統領が欠席することや、6月
のメキシコでの20カ国・地域(G20)首脳会議でカナダ、メキシコの参加が
日本に先行して承認されたことを踏まえ前倒しすることにした。

首相が8月中に決着させる意向を固めたのは、米議会の「90日ルール」が念頭
にある。関係国に交渉参加が承認されたとしても、米議会では最低90日間の協
議を行う必要がある。

米政府は近く、議会にカナダ、メキシコの参加承認を求めることにしており、手
続きは9月末までに完了する運び。米国で10日まで開かれている9カ国による
TPP交渉は今後、9月と12月に予定されているが、両国の正式参加は12月
になる見通し。日本が8月中に関係国に伝達できれば、米議会の承認手続きは1
1月末までに終わり、12月の交渉入りが可能になる。

関係府省には12月の交渉入りを確実にするため7月中に決着させる案もあった
が、首相周辺は民主党内の慎重論を踏まえ、「消費税増税法案の成立まで結論を
出すべきではない」とストップをかけている。

一方、政府・民主党は今月5日、TPPについて協議する党経済連携プロジェク
トチーム(PT)で党内論議を再開。政府の国家戦略会議(議長・首相)フロン
ティア分科会は6日、「TPP参加を通じて貿易や投資の自由化・円滑化を進め
る」と明記した報告書を公表するなど、ここへきてTPP交渉参加に向けた動き
が活発化している。

TPPに慎重姿勢を取ってきた小沢一郎元代表ら50人が離党したことで「党内
の了承を取り付けやすくなる」(首相周辺)との見方もある。ただ、PTには山
田正彦元農林水産相ら慎重派が結集、「TPPを強引に進めればさらに党が割れ
る」との懸念も残されている。
             (筆者は行方市在住・農業者)