■【視点】
雇用差別と老後貧困
非正規は死ぬまで非正規なのか!!
山口 道宏
「人手不足」と非正規雇用
この国では「深刻な人手不足」という傍らで、雇用の調整弁として非正規労働が存在し拡大してきた。雇用関係が不安定だから社会保険加入もあるかないかの労働者群だ。
「働き方改革」(2019.4)は、正規非正規という雇用形態の二重構造はそのままに「改革」を謳った。
「同一労働同一賃金って何だったんですか」「結果的には正規のひとの処遇改善の犠牲者になっただけ」「なにが改正派遣法ですか。雇止めにはいまだっておびえています」「連合なんて非正規は蚊帳の外って感じですから」「結婚なんて、家庭なんて、考えられません」
現場では、過労死は減らず高齢労働者の労働災害が増えている。
「非正規でも生涯保障があればいい」というひとがいる。
しかしだ。その身分は現役時の不遇を老後の入り口まで引きずり、やがて低年金、無年金者となるから、差別は老いにも及ぶのだ。
老後はワーキングプアの非正規にも容赦がない。老後格差は老後破産を誘い、非正規労働者は生活保護受給の予備軍になる可能性は高い。ここにも負の連鎖が潜んでいる。
先頃、生活保護申請が過去最多と発表があった(厚労省)。
25万5897件(2024年)は過去12年で最多となり受給世帯数は165万2199世帯に。低年金の単身高齢者と非正規雇用の若者の増加が目立つ。
今日も、前者は痛い脚をかばい現場へ、後者はネットを使ってのダブルワークだ。
申請に至らない困窮世帯を含めたならその数字は何倍にまで膨らむか。
非正規率(総務省)は37%で全労働者のほぼ4割が非正規の国だ。身分はパート、アルバイト、派遣、契約、嘱託などで、我が国5739万人の全労働者のうち2124万人が非正規労働者とされる。
「手取りを増やす」は非正規の撤廃から
雇用形態の問題だ。非正規をやめよと、野党はなぜ国会審議に挙げないのか。
労働者はすべてにおいて正規雇用のもとで身分保障だ。非正規雇用の不条理を語らずして「103万円」も「高校授業料無償化」のいずれも、木を見て森を見ずといえよう。前記の数字をみれば我が国の深刻な貧困にどれほど反映か!?「103万」も「無償化」も制度のつまみ喰いにすぎない、といわれる所以だ。
4月から暮らしは変わった。電気ガス料金は値上げ、食品4000品目で値上げ、コメ不足は令和の米騒動という始末だ。
「手取りを増やす」は、全労働者の正規雇用で初めて実現に近づく。
この国から非正規をなくせ!! それこそ優先課題に他ならない。いま、生活保護申請が過去最多というのに、非正規問題を見て見ぬふりは許されない。
2025年度の国民負担率は46.2%見込とか(財務省)。健康保険料の値上がる都道府県もある。内訳は租税負担28.2%、社会保障負担18.0%(年金保険料、健康保険料など)、さらに財政赤字2.6%を加えると48.8%になると伝える。
可処分所得を考えない政策提案は弥縫策に過ぎない。ついては雇用問題への関心は必至のはずで、労働者の生活の底上げには安定した雇用が絶対的な要件だ。
「非正規って、死ぬまで非正規なんですか!!」
永田町には、労働者の、生涯における安心安全な暮らしへの視座が欠落している。
逆進性の消費税廃止と並んで、労働者間の雇用差別の撤廃こそ取り組み急務だ。了(2025.4.5)
(2025.4.20)
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