■ A Voice from Okinawa (22)         吉田 健正

   ~「トモダチ」作戦の実態 ~
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  東日本大震災で在日米軍が行った「トモダチ」作戦が脚光を浴びた。米軍によ
ると、八戸空港を拠点に、沿岸の戦艦や三沢空軍基地から輸送ヘリで被災地にホ
ットドッグやハンバーガーなどの食料、飲料水、衣服、医薬品、トイレット用
品、ケロシンなどを運び、兵士が自衛隊員とともに物資を届け、被災した家屋や
体育館や道路を片付けたりした。
 
  米軍や日本政府関係者は、在沖海兵隊の「抑止力」が証明されたと持ち上げ
た。そして5月には、岡田民主党幹事長(鳩山政権時の外務大臣)や北沢防衛大
臣が、昨年5月末の日米共同声明で確認した普天間基地の名護市辺野古への移設
について沖縄県民の「理解」を得たいと来県した。本稿では、沖縄の視点から、
「トモダチ作戦(Operation Tomodachi)」の概要と目的について論じたい。

 「トモダチ」という名称からして、本土国民に「日米同盟」を強調するプロパ
ガンダの意図が込められていたのも事実である。とりわけ、米軍の「人道支援」
が在沖米軍の「地政学的」位置と「抑止力」の結びつけ、普天間海兵隊航空基地
の辺野古移設を正当化しようという狙いがあったとすれば、沖縄県民にとって
は、「トモダチ」という名の裏切りでしかない。

 ちなみに、「トモダチ」という名称は、日本政府がつけたのだという。鳩山首
相の「国外、少なくとも県外」発言やメア(国務省日本部長の侮辱発言で傷つい
た「日米同盟」を再生して、日本国民に在日米軍の「有難さ」、日本が戦時・災
害時に米軍に守られていることの有難さを印象づける狙いがあってそれが効を奏
したとすれば、本土国民と沖縄住民を「分断」しただけでなく、日本国民の対米
従属関係は今後も続くことになる。

 しかも、下記に述べるように、「トモダチ作戦」では、主として輸送機や給油
機などの飛行機と兵士を積み、何隻もの艦船を引き連れた海軍の原子力空母と空
軍の無人・有人偵察機、輸送機、陸海海兵隊の陸上兵士が活躍した。飛行機、兵
士、物資を積載して海上を走り回る「洋上基地」と数百キロ以内に空港があれ
ば、はるか南の沖縄に基地をおく必要がないことも実証された。

 震災直後から自衛隊を助けて、壊れた建物やガレキに埋もれた学校や駅を片付
け、被災者に物資を届け、12の避難所でシャワー装置を提供し、バンド演奏など
を行ったあと、4月末におよそ100人を残してキャンプ座間や沖縄に戻った陸軍前
線第一軍団のスポークスマン・ボーコム少佐は、「ピンチになれば、艦隊や飛行
機で数時間内に何百人もの兵隊を被災地に送れる」と証言している(『星条旗』)。

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◇米議会調査局(CRS)の報告書
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  以下は、米議会調査局の報告書(「2011年の日本大地震:米国防総省の対応」
3月22日)や他の情報に基づいて、私の感想を交えつつまとめたものである。
「トモダチ」作戦が、真に人道的なものであった、あるいはメディアが述べるよ
うに日本という「トモダチ」のために米軍部隊が「命がけ」で行ったものであっ
たなら、それに対しては心から感謝すべきであろう。しかし、感謝して喜んでば
かりもいられない。

 まず震災翌日の3月12日、ゲーツ国防長官は、太平洋司令部に救済活動を指示
し、海外人道支援のため3500万ドル(約28億円)の支給を承認した。議会調査局
の報告書によると、米軍の活動内容や活動期間がさらに明らかになれば、支給額
は増える可能性がある。
 
  地震が起きた後の最初の活動は、津波から軍艦や飛行機を安全な場所に移し、
軍人・軍属(シビリアン公務員)・家族を守ることだった。在日米軍は、軍人約
50,000(陸上38,000人、洋上11,000人)、シビリアン5,000人、扶養家族43,000
人、で構成し、およそ25,000人の日本人従業員が働いている。そのうち、沖縄本
島のキャンプ・コートニーに司令部を置き、沖縄と岩国を中心に、およそ16,000
人からなる第三海兵遠征隊(MEF)が駐留している。結果的に、施設、装備、隊
員・家族・従業員にも被害はなかった。

 国務省は、3月17日に東北日本を離れたい軍人と政府職員の家族に、無料で自
主的離日(避難)を許可し、国防総省がその任に当たることになった。東京地域
の海軍基地は、その晩から家族の一時帰国を開始することになった。ロバート・
ウィラード太平洋司令部司令官によると、避難計画には、関東地域だけで軍人家
族を含む8万7千人強の米国市民が対象になるという。これだと、国防総省にとっ
て、多数の車両、航空機、艦船を使った一大避難作戦になる。

 結局のところ、一時空路離日を申請した家族は8万人強。出発地は、厚木海軍
航空施設、横須賀海軍基地、三沢空軍基地。妊婦や幼児を優先して日本を離れた
というが、離日した合計人数や行き先は、公表されていない。
 
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◇指揮は海軍第七艦隊
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  「トモダチ」作戦を統括したのは、ハワイに本拠地をおく米太平洋海軍の第七
艦隊であった。米太平洋艦隊司令官の指揮下にある第七艦隊は、前線展開海軍部
隊の一部として日本に13,000人の海兵、18隻の艦船、100機の航空機を配備して
いる。米海兵隊によれば、沖縄から、3月12日と13日、普天間基地駐留の空中給
油機KC-130J スーパー・ハーキュリーズと輸送ヘリコプターCH-46それぞれ4機
が海軍と海兵隊の救助隊員と医療品などの物資を積んで横田基地、岩国、厚木航
空基地へ発ち、14日には高速艇が被災地へ向けて那覇軍港を出発したが、原子力
空母や他の艦船および艦載機の大半は横須賀、厚木などの日本各地に駐留する米
軍基地に属していた。

 4月13日付の「ニューヨーク・タイムズ」によると、その日仙台民間空港を再
開したのは、主として、3月14日に嘉手納空軍基地からやってきてガレキや死体
を片付けた24人からなる米空軍特殊部隊と、清掃工事に加わった260人の海兵隊
員および陸軍兵だったというから、米軍の大半は洋上や米軍基地内に留まってい
た可能性がある。

 仙台空港の駐車場に設けられたテントに陣取った海兵隊補修部隊を指揮したル
ビーノ大佐によると、ハイチやインドネシアのような開発途上国の場合は、何千
もの海兵隊員がトラック、重機、エンジニア、医療隊とともに派遣されたが、日
本には260人の海兵隊員と陸軍兵、空港片づけや救援物資運送のための20数台の
トラックと建設車両を送っただけだという。そして、できるだけ自衛隊を前面に
立てるようにした。ちなみに、議会調査局報告書によれば海兵遠征隊は、およそ
16,000人の隊員で構成され、大半は沖縄と本州南部(岩国)に駐留しているとい
うから、260人といえばそのほぼ60分の1である。

 震災から1週間後の3月18日、米軍と自衛隊は捜索・救出活動から生存者救援活
動に移行した。22日朝の国防総省報告によると、米軍が投入したのは、原子力空
母ロナルド・レーガンや上陸強襲艦エセックスなど20隻、大型輸送ヘリMH-53sや
偵察機P-3オリオンなど140機。それまでに海兵・海兵隊員およそ2万人が被災地
に届けた救援物資は、227トンにのぼった。まもなく第七艦隊が届けた物資は260
トンを超え、空中偵察は160回、探索面積は約5200平方キロに達した。港湾のガ
レキも片付けた。加えて、陸軍と空軍も救援物資を運び、人道支援活動を行った。
津波で分断された気仙沼市湾内の大島では、3月27日、海兵や海兵隊員が強襲艦
エセックスからトラックで上陸して、自衛隊員や東北電力の従業員とともに、電
力を回復した。

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◇空母は朝鮮半島沖、エセックスは南シナ海から
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  沖縄からの探索・救出用機材は、まず東京近郊の横田空軍基地に運ばれた後、
被災地近辺に移送された。普天間から岩国や厚木や東日本への距離(日本本土へ
は、岩国や厚木や横田の方がはるかに近い!)そして普天間海兵隊の役割だけが
強調されて、沖縄における米軍駐留を正当化する発言が、日米両方から相次いだ。
例えば、秋田県沿岸に停泊したエセックスからヘリコプターで救援物資を輸送し
た第31海兵隊遠征部隊(MEU)の作戦を指揮したファーヌム中佐は「沖縄に駐在
していることが、今回の早急な支援につながった」と延べ、北沢防衛大臣は「海
兵隊のプレゼンスは沖縄の地政学的位置から言っても、アジア太平洋地域の不安
定化に対する抑止力は極めて大きい」と同調した。

 しかし、誘導ミサイル巡洋艦チャンセラービル、駆逐艦プレブル、戦闘支援艦
ブリッジ、巡洋艦カウペンスとシャイローなどからなる原子力潜水艦ロナルド・
レーガンの攻撃部隊は、韓国近海での演習から岩手沿岸に派遣された。海兵3200
人、飛行士や航空団スタッフ2500人、航空機85機を積載したロナルド・レーガン
は、自衛隊や海上保安庁のヘリコプターの給油基地となった

 誘導ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド、ジョン・S・マケイン、マクキャン
ベル、カーティス・ウィルバーの4隻も、空母ロナルド・レーガンの攻撃部隊と
行動を共にして、佐世保に接岸して何度も被災地へ救援物資を空輸した。水陸両
用ドック型上陸艇トルトゥガは、佐世保海軍基地に接岸し、北海道から来た90台
を超える自衛隊車両とおよそ300人の隊員を被災地近くに運んだあと、ヘリコプ
ター補修基地に転用された。

 強襲揚陸艦エセックスは、パトロール訓練中の南シナ海から6日かけて秋田県
沿岸に駆けつけた。第31MEUの隊員と輸送ヘリを載せたエセックスは、地震当日
の3月11日、マレーシアのセパンガー港で米国の駐マレーシア大使や米第七艦隊
司令官、マレーシア海軍司令官を含む両国の政府高官を招いた艦上レセプション
を開催するため、セパンガー港に到着した ばかりだった。隊員は、マレーシア
の海軍兵とともに、スポーツ行事や孤児や浮浪児、家庭内暴力に遭った子供たち
のためのコミュニティ行事に参加する予定だった。マレーシアを発った後も、沖
縄に「前線展開」する第七艦隊水陸両用隊ランドルト司令官が指揮する水陸両用
即応隊(ARG)は、南シナ海で中国艦船の動きを警戒するパトロールを続けるこ
とになっていた。

 このように、多くの隊員と輸送機を積んだ空母ロナルド・レーガンもエセック
スも、沖縄から被災地に向かったのではない。しかも、エセックスの母港は長崎
県の佐世保基地である。北沢大臣が言う沖縄の「地政学的な抑止力」は、こじつ
けでしかない。日本本土を守るためなら、沖縄から本土に米軍基地を移せば、は
るかに大きな抑止力になるだろう。今回の「トモダチ作戦」で自衛隊と米軍の作
戦拠点になったのも、青森県の三沢基地であった(日本は米軍に山形民間空港と
自衛隊と一緒にガレキを片付けて再開した仙台空港の使用も許可した)。

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◇事故原子炉の上空から無人偵察機が撮影
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  議会調査局報告書によれば、米軍は陸・海・空から放射線レベルをモニターし、
核物質によって汚染された可能性のある人間と機器を除染できる。3月15日には、
横須賀に停泊中の原子力空母ジョージ・ワシントンが福島の原子炉からの低レベ
ルの放射能を感知した。

 福島第一原発の事故による危機感が増す3月中旬、米国は日本政府を応援して
データと画像を集めるため、グアムを基地とする長距離無人偵察機グローバル・
ホークを原子炉上空で飛行させたほか、沖縄の嘉手納空軍基地から放射線感知機
を装着したU-2偵察機、ネブラスカ州オファット空軍基地からWC-135コンスタン
ト・フェニックスを飛ばした。両機とも、空気中の放射性粒子を検出する機能を
備えている。

 3月17日には、佐世保から5基の高圧ポンプと100個の核・生物・化学物質防護
服とマスクが送られた。米軍は消防車2台、海軍は2000個の放射線線量計を提供
したという。

 しかし、議会調査局報告書によれば、米軍の活動は主に「支援物資、自衛隊の
要員と機材、被災者捜索、活動維持のための飛行場などの復旧」にあり、たとえ
ばガソリンの供給、ガレキの片付け、橋や道路や港湾など生活インフラの復旧で
はなかった。米軍には、戦災地復興や基地建設のための工兵隊や病院船、兵士を
運ぶ大型輸送船などがあるが、被災した住民のためにこれらが動員された形跡は
ない。

 「トモダチ」作戦は、米軍が沖縄で学校に兵士を英語「教師」、老人ホームに
慰問者を送り、兵士が道路を清掃し、それを「大きな輪」というプロパガンダ誌
で宣伝する「よき隣人キャンペーン」に似ている。しかし、米軍機の事故、演習
や燃料漏洩などによる環境破壊、米兵の飲酒運転による自動車事故、強姦や乗り
逃げなどの事件、航空機騒音や事件・事故加害者に対する日米地位協定による
「治外法権的」特例扱いは、「善き隣人」としてのふるまいを裏切り、住民の反
感を招いてきた。「罪ほろぼし作戦」でさえない。米軍は「招かざる客」なのだ。

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◇主役は海軍と空軍
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  すでに見たように、「トモダチ」作戦の主役は空母をはじめとする多くの艦船
を有する海軍と空母や陸上空港から離発着する空軍であった。海兵隊は輸送ヘリ
を積んだ空母、上陸強襲艦などで移動して支援物資輸送やガレキ片づけを手伝っ
たに過ぎない。

 上記のように、海兵3200人、飛行士や航空団スタッフ2500人、航空機85機を搭
載した空母ロナルド・レーガンは、自衛隊や海上保安庁のヘリコプターの給油基
地となった。
  誘導ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド、ジョン・S・マケイン、マクキャン
ベル、カーティス・ウィルバーの4隻も、空母ロナルド・レーガンの攻撃部隊と
行動を共にして、佐世保に接岸し、何百回も被災地へ救援物資を空輸した。佐世
保海軍基地に接岸した水陸両用ドック型上陸艇トルトゥガは、北海道から来た90
台を超える自衛隊車両とおよそ300人の隊員を被災地近くに運んだあと、ヘリコ
プター補修基地に転用された。

 第31海兵遠征部隊を載せた水陸両用攻撃艦エセックスと、2隻のドック型上陸
艇(ハーパーズ・フェリーとジャーマンタウン)は、仙台空港の補修を主目的に
していたが、当初は福島原発からの放射線を懸念して八戸沿岸に留まったあと、
仙台空港の復旧に向かった。
第七艦隊の司令艦ブルー・リッジは、沖縄近海で要員と物資を積んだほか、3月
21日には長崎の近くで物資をさらに補給した。

 これらが示すのは、空母をはじめとする米軍の艦船が、沖縄に代わりうる「洋
上基地」としての役割を担ったということである。第三海兵遠征軍は、山形空港
に司令部と給油ポイントを設置、4つの人道支援部隊が気仙沼方面への救援物資
を運んだ。エセックスで運ばれた第31海兵遠征隊は松島に前線部隊をおいて大船
渡と釜石沿岸で人道援助にとりかかった。海兵隊は、厚木、山形、仙台の近郊で
放射線調査を、厚木で除染・活動を行った。

 4月2日には、米国政府の強い要請で海兵隊の化学生物事態対処部隊(CBIRF)が
来日して、4月9日に横田空軍基地で公開訓練を行った。日本のメディアは「救世
主と書き立てたが、報道によれば、部隊は福島での支援活動は要請されず、公開
訓練のあと引き揚げたという。

 空軍は、震災直後、成田空港に着陸できない航空機の代替施設として横田空軍
基地を使った。厚木海軍航空基地と空母ロナルド・レーガンは、支援を必要とす
る生存者に飲料水、食料、毛布を輸送する基地となった。追加のヘリコプター
が、ガレキから生存者を探索したり、沿岸での探索・救助活動に当たった。やが
て、空軍と海兵隊のヘリコプターと輸送機は、救援活動を支援するため、沖縄か
ら本州の三沢などの米軍基地に移った。

 陸軍は、被災地で通訳や通信員、戦闘医療員を提供するほか、空港などでのガ
レキ撤去を支援した。また東京の相模総合補給廠の後方支援部隊は、仙台空港に
物資補給センターを設けて、物資の流れを助けた。

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◇「トモダチ」作戦とウィキリークスが暴露した日米同盟の実態
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  北沢防衛相は4月4日、三陸沖で「トモダチ作戦」を展開中の空母ロナルド・レ
ーガンを訪問し、約2000人の米軍兵士らを前に、「今回の災害ほど貴国を友に持
つことを心強く思ったことはない。心から感謝申し上げる」という菅首相の謝辞
を代読した。そして、「日米共同の救援オペレーションが両国民の胸に熱く刻ま
れ、今後の日米同盟のさらなる深化につながるものと確信する」と強調した。自
然災害に対する米軍の支援・救援活動は、「戦争行為」とは別のまさに人道的
(ヒューマニタリアン)であり、感謝して当然であろう。

 しかし、沖縄では、ウィキリークスが暴露した、米国政府に「おもねる」(
「沖縄タイムス」)、あるいは「こびへつらう」(「琉球新報」)日本の政治家
と官僚たちの姿が改めて浮き彫りになった。なぜ地元の強い反対を無視して、米
軍基地を沖縄に押し付けるのか、政府は沖縄住民に説明したことがない。沖縄=
抑止力、はすでに説得力を失った。百歩退いて、沖縄に地政学的な抑止力があっ
たにせよ、全国土の0.6%しかない沖縄になぜ在日専用米軍基地の実に74%が置
かれていて、人口過密で小さな沖縄本島の20%近くが北部海兵隊訓練場、嘉手納
空軍基地、弾薬庫、普天間海兵隊航空基地などに占拠されているのか、なぜ普天
間基地を閉鎖することなく県内の辺野古へ移設するのか、納得のいく説明はない。

 政府は在沖海兵隊の規模や日本防衛上の役割についても明示せず、嘉手納空港
や普天間基地の危険性や爆音も「米軍=第三者論」に逃げて、放置する。これで
は他府県が米軍基地を引き受けようとしないのは当然だが、政府は他府県の意向
は尊重しても沖縄には「理解」を求めて押し付ける。差別以外の何ものでもない。

 ヨミウリ・オンラインは、「沖縄の米軍普天間飛行場移設問題で、日米両政府
は、2006年に合意した「移設を2014年までに完成させる」とする期限を正式に断
念する方針を固めた。……両政府は今後、新たな期限設定などについて協議する
が、目標としてきた期限を公式に外すことで、移設問題は機運を失い、同県宜野
湾市にある普天間飛行場の固定化は事実上避けられない見通しとなった」と報じ
た。主要メディアも、政府の「方針」には一切異議を唱えないのだ。

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◇軍事大国・米国を「援助」し続ける日本
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  今回のウィキリークス暴露公電では、在沖第三海兵遠征隊と家族のグアム移転
についても、米側が経費負担の割合を水増ししたことを追認し、移転する隊員数
と沖縄に残る隊員数についてもごまかしていたことを暴露した。日本政府は、住
民の電気・水道・汚染物質処理のインフラを整備し、グアム政府が徴収する利用
料金によって投資の返済を受けることになっている。ただし、返済が実施される
かは不透明だ。すべて、米国に都合のいい話である。

 震災と核燃料露出騒ぎと救援活動真っ最中の3月31日、民主、自民などの賛成
多数で「思いやり予算特別協定」を可決した。民主党政権誕生以来、「財源難」
がいわれ、大震災で被災地域の復興、被災者の救出・救難、賠償、今後の日本経
済再活性化のための増税や災害対策税が論じられる中で、今後5年間、日本は米
軍に現行水準(年間約1880億円)を支払い続けることを決めたのである。   

          (筆者は沖縄在住・元桜美林大学教授)

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