【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(14)

バングラデシュ人のお肉屋さん
~ Bismallah Halal Food ナズムルさん(1)

坪野 和子


 秋はイベントシーズンです。体育の日に国際交流イベント「あげおワールドフェア」で「NPOチベット教育福祉基金」の展示ブースを出展しました。このイベントの主催団体は今年から食販をやめて、屋内の会場で展示やワークショップなどのみにしました。昨今、国際交流イベントが「食べた・飲んだ・買い物した」で…意義が失われていきつつあるのでかなりの大英断。お子さん中心で良いイベントとして終わりました。…ところで…毎度のことなのですが…チベットってどこ?? 訊いてくださるだけありがたいです。

 学校の文化祭ではパキスタン人生徒が建国の歴史の展示がしたというので一緒に壁新聞作成。大人が足を止めてくださり、ありがたかった。そして、先生ありがとうございます。
 今回はバングラデシュ人のハラールお肉屋さん、ナズムル・ブイヤンさん。

◆ 1.知り合ったきっかけ

 今から3年前、近くの市場でイベントが催されていました。夫とふたりで歩いていたら、チラシを配るベンガル人をみつけました。チラシを見ながら、ハラールお肉屋さんでけっこうお安い。市場の中のお肉屋さんより安い。食材も売っているのかと質問し、食材やスパイスも売っているとのこと。前任校では夏休み前とクリスマスに「多文化共生パーティ」を行っていて…ラッキー…彼から買おう。お店の場所を訊いたら、連れて行ってくださいました。

 夫に日本での苦労話をたっぷりして、日本に来てさまざまな転職の末、現在の仕事であるお肉屋になったとか。売っているお菓子などはハラールだけでなく、「グリーンマーク」即ちヴェジタリアンOKもありました。ヴェジタリアン生徒に日本人に紹介する料理を作らせることができる! その後、食材やインドのお菓子、家庭用にお肉(牛肉安くて…しかも「骨付き」があるのでチベット料理が作れます)、もちろん、南アジアの人ですから、買った売ったではなく、コミュニケーションもたっぷり!! 金曜日以外(礼拝の日)は、買い物がないときも市場の帰りに立ち寄ったりもしています。奥様とも仲良しになりました。彼は私を「おばちゃん」と呼び、私は呼ぶときはナズムルさんですが、「おっちゃん」と言います。

◆ 2.ハラールのお肉…外国人なので…日本人が退く…

 彼のお店は「Bismallah Halal Food」と言います。日本語の店名もあり「一頭屋」。
 二つの名前を持つ理由は「外国人なので…日本人が退く」理由としては、言葉が通じない…と決めつけている、衛生的でなさそう、ハラールがなにか特殊そう(血を抜いての処理)、すべて日本人の無知によるイメージに問題があると私は思っています。私から言わせていただくと、ハラールはヘンな科学的措置を行っていない無添加でお祈り付きなのですから、工場処理のお肉よりずっと信用できます。見ただけではわからない飼料、原材料、保管場所や輸送方法…すべて明確です。私のように非イスラムの仏教徒でも、ハラールであれば、安心して食べられます。私がチベットのラサに住んでいた頃、お肉はすべて回族、すなわち中国人系ムスリムの人たちが処理したものをクチにしていました。旅行に行ったブータンでは出稼ぎインド人やネパール系住民が処理したお肉。仏教徒は殺生しないという原則で、他民族が処理します。すでに死んでいる動物を授かりものとして食材としていただくのですから。

◆ 3.バングラデシュの知恵・言い伝え[伝統文化]

 彼と話していると、すべての教育を学校教育に任せている日本と違います。現在の日本・文部科学省が掲げる「生きる力」とは本来は伝統文化と宗教文化と学校教育の3つの融合が理想なのだろうと確信することができます。彼と会う度に自分の立場だからできる仕事があると勇気が出てきます。

●みかんの方程式
 年末…市場で売っていたみかん…箱売り。試食あり。彼は言いました。「これは美味しいみかんだね。でも、箱で買ったら箱の底から黴が生えるから、みかんは食べたいだけ買ったほうがいい。日本では元旦以外はどこか店が開いているし」ああ…腐ったトマト、もしくはリンゴの方程式って日本でいうところの?? 私にとって複数の意味ある言葉でした。→食べ物が美味しい…それぞれに旬がある。→先のために備えていても意味がない。
 そして…日本の別のいいかたでは、鉄は熱いうちに…かしら? なんでもないことでも、言い方ひとつで深みが出てくるものなのだと感心してしまいました。

●ペットに噛まれると子どもがくる
 息子が一人暮らしをはじめることになったので、息子のペットのシマリスを私たち夫婦に残していきました。油断していたらケージから出てきて私の指を思いっきり噛み、血だらけになりました。「指の怪我、どうしたの?」とナズムルさんに訊かれたので事情を話すと「バングラデシュではペットに噛まれると子どもがくるって言い伝えがあるんだ」
 …本当でした!! その夏、息子と一緒に当時カノジョだった嫁に夫とともに呼び出されて「結婚することにした」「子どもができた」…呼び出されたとき、この展開を簡単に予想することができました。嫁が息子と暮らすことになったとき、遅かれ早かれ結婚するのだろうと思っていました、それとナズムルさんから「子どもがくる」と言っていたので。大して驚くこともなく、喜びすぎることなく、いえ、彼のおかげで心の準備ができていたのかもしれません。(続く)
 次回もバングラデシュ人ナズムルさん。コーランの智慧・ハラール。
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  Bismallah Halal Food ビシュマラー・ハラル・フード
  〒270-2241 千葉県松戸市松戸新田24−6−11
  電話)047-382-5400 ナズムルさん携帯)080-5379-7026
  https://www.facebook.com/BismillahHalalFoodJapan/
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 (高校日本語講師&専門学校時間講師)

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