日本の市民活動はなぜ新しいメディア技術を使おうとしないの?

【コラム】日中の不理解に挑む(21)

日本の市民活動はなぜ新しいメディア技術を使おうとしないの?

李 やんやん?


 先月、環境NGOの中間支援を行う団体のリーダーが、国際交流基金の招聘を受けて、1ヶ月程度日本で環境NGOに関する研究活動を行いました。私たちもサポート役として入門講座を担当し、団体データベースの紹介、推薦団体のリストアップ、アポ取りと通訳サポートを提供しました。彼は大変精力的に日本の多種多様な環境NGOを訪問し、できるだけ立体的に、全面的に日本の環境NGOの現状、特徴を捉えようとしました。
 滞在の最終日に、今回の招聘活動の主催者国際交流基金と彼、そして私も加わり、今回の研究活動のまとめを行いました。彼は日本の環境NGOについて、いくつかの課題を指摘しましたが、最も強調したのは、「なぜ日本のNGOは容易に変化を受け入れられないのか」ということでした。世代交代の難しさもそうですが、ことに顕著なのは、情報発信の問題だといいます。

 総じて日本の団体は新しいメディア技術を活用できていないと、彼は指摘します。不特定多数を想定する Web サイトでの発信は、今の中国ではもはや主流ではありません。Web から団体を検索して読む人はそれほどいません。ほとんど WeChat だそうです。日本にも WeChat とほぼ同じ機能を持つ Line が使われていますが、なぜ Line を市民活動のエンパワーメントに使わないのか、彼は不思議がっていました。
 中国では WeChat 上で多くのグループが形成され、そこでは活動のお知らせだけではなく、議論が交わされ、参考になる文章の紹介、テーマに関連する政策、制度的動向の紹介、斬新な取り組みの紹介など、貴重な情報がたくさん得られます。もちろんテーマを共有するグループなので、そこでつながりができて実際連携して活動を行うこともたくさんあります。活動の参加費や寄付も、ネット上ですぐに決済できて便利だと言います。更にグループで紹介された文章をたどっていき、その発信元が気に入れば「講読」に登録しておくことができます。そうすれば雑誌のように、お気に入りのリソースの最新記事を読むことがいつもできるわけで、これなら確かに Web 検索しなくなるなあと、私も思いました。

 日本ではなぜ情報発信を Web メインで考えるのか、彼は疑問に思っていたようです。国際交流基金の方は、Line はもっぱらプライベートの交友関係にしか使われないのは、セキュリティの問題(情報漏れの心配)によるのではないかと話しておりましたが、彼はあまり納得しませんでした。
 私にもよく分からないのです。なぜ日本では便利なIT新技術を市民活動促進に使わないのか・・・FBはあるのですが、Line ほど手軽ではありません。
 日本は30年以上模索しながら活動してきたので、すでに「スタイル」ができあがっているため、新しいスタイルになかなか転換できないのでは?と、彼は指摘しておりました。そうなのかもしれませんね。そもそもここで書いている「メルマガ」も中国ではもはや流行っていないのです。メールそのものも、WeChat に取って代わられようとしています。「メール出したから、見てね」って WeChat で頼まないと、読んでもらえないかもしれない状況です。とほほ。

 (筆者は駒澤大学教授)

※この原稿は著者の承諾を得てCSネットマガジン11月号から転載したものです。


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧