確かな根拠に基づいた「健康に良い食品」とは?

【コラム】風と土のカルテ(17)

確かな根拠に基づいた「健康に良い食品」とは?

色平 哲郎


 現代ニッポンの「摂食感覚」がどうもおかしい。うら若き乙女が、テレビカメラの前でご飯をてんこ盛りにしたどんぶりにかき揚げを何十枚も載せて一気食いをして喜んでいるかと思えば、無茶なダイエットから生命の危機に瀕している人もいる。「好物だけ食べて10キロ痩せる方法」などという本が読まれていたりもする。

 こうした感覚が横行するのは、食べ物と健康について通説、俗説がまかり通り、科学的思考法が欠けているからなのではないか。食べたい、痩せたいという欲求に一直線に突き進み、わが身を顧みない。どか食いや無謀な減量は、食べ物と健康への洞察力・想像力の欠如に根ざしている。

 一方、年間に日本全体で1900万トンの食べ物が廃棄されているという。根本的に何かが狂っている。

◆「EBN」の知見が紹介された一冊
 そんな現代日本に、「人間栄養学」の研究で明らかにされた情報から確度の高い情報を厳選して伝える「EBN」(evidence based nutrition、根拠に基づく栄養学)の流れに沿った書籍が出版された。佐々木敏・東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授が著した『佐々木敏の栄養データはこう読む!』(女子栄養大学出版部)だ。「栄養疫学」の観点から、何をどの程度食べたらよいのかという情報を明示している。

 改めて気づかされたのは「節塩」の大切さだ。国連は、生活習慣病対策の5つのアクションを発表している。第一はタバコ。2つ目は食塩。肥満、不健康な食事、運動不足や有害飲酒はその次にくる。塩分の取り過ぎは高血圧につながり、血管障害へと進む。

 そもそも塩は、食べ物の腐敗を防ぎ、人類の健康を支えてきた。しかし、冷凍、冷蔵の技術が普及してその任務の大方を終え、高血圧症だけが残ったという。では、体にやさしい摂取量とはどのくらいなのだろうか。

 「多めに見積もっても、体にやさしい食塩摂取量は、1日あたり5gか6gまでのようです。ノーソルト・カルチャーの食事を見習おうとはいいませんが、毎日なにげなく食べている食塩で毎日少しずつ血圧が上がっていきます。健やかに過ごすには『うす味』から始めるのはいかがでしょうか」と著者は提言している。

 そして、日本人の食塩摂取量については、次のように記す。

 「国民栄養調査(現在は国民健康・栄養調査)によれば、1人1日あたり14gから10gへとかなり減ったようです。しかし、エネルギー摂取量も同時に減っているので、塩味の濃さという観点で見れば、減塩はあまり進まなかったと考えるほうが正しそうです。さらに、24時間蓄尿を使った研究では、この25年間、1日あたり13g程度でまったく変わっていない可能性が示唆されます」

 われわれ医師は、「予防は治療に勝る」という視点からも、患者さん方に「塩分を控え目に」と口が酸っぱくなるぐらい言わねばならないようだ。

 洞察力あふれる欧州発グルメ情報も満載した、そんな魅惑的な一冊。今話題のコレステロール摂取の問題、糖質制限ダイエット等々、実に多くのことを考えさせてくれる。

 (筆者はJA長野厚生連・佐久総合病院 地域医療部 地域ケア科医長)

※ この記事は日経メデイカル5月27日号から著者の許諾を得て転載したものです。


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