【コラム】大原雄の『流儀』
★★★非人情な残暑
★★★ 非人情な残暑
2024年ーー危険な暑さが、世界を襲っている。
気温が高い、という暑さ。
大型台風を迷走させたのも非人情な残暑。
皆、地球温暖化の申し子。
人類は、同じことを繰り返している。
戦争が好き、という時代遅れの熱狂さ。
24年の夏を世界規模(ワールドワイド)で、活躍する、あるいは暗躍する、世界人間たち。戯画風に彼らをスケッチしておくと、こんな風になるか?
戯画の登場人物たち。まず、アメリカから。
アメリカの世界戦略は、軍事同盟の名のもとに、同盟国、同志国という熱き仲間作りに執着している人々のことだろう。その代表者は、このほど「撤退」が決まって、命拾いをしたサングラスの伊達爺さん、アメリカの大統領だ。彼は、自分の選挙が負け戦になりそうだと見て取ると「撤退」に追い込まれたのだけれど、ホッとしているのじゃないかな。
こうしてアメリカの大統領は、引退の花道の面目を保ちながら、ということは、凱旋意識よろしく、「六法」(歌舞伎の「荒事」:江戸歌舞伎の演出方法:の一つ。立役:ヒーローの花道退場のスタイル方式)を踏みながら、撤退した。ああ、まだ、任期が残っていたっけ。
彼は権力の座への執着を諦めたけれど、他国の権力者のなかには権力への執着心むき出しに、権力狙いに精を出す人物も後を絶たない。
アメリカでは、一癖も二癖もある大統領選挙の有力な対抗馬の候補者は、もっと権力を自分勝手に使えるようにしようと狙っている。権力者時代に舐め尽くした飴の甘さが忘れられないのだろう。目の色を変えて、実際、彼も一期4年間の任期の期間中には実践しつくしてきたことだろう。彼の執着心は、粘着性が強く、それも人並み外れている。撤退した大統領は、後継者に自分の下で副大統領を務めていた女性を次期大統領候補として立てたら、大統領選挙そのものの風向きが変わって来たので、世界をややこしくしている。
後輩の男に負けるのは、負けていられないが、後輩の女性に負けるのなら、まだメンツが立つというものだ、とでも思っているのではないか。
★★ アメリカもロシアも、ドイツもコイツも
民主主義を掲げるアメリカも専制権威主義。大統領や政権に関係なく、臨界前核実験を、ほぼ定期的に、しかし、秘密裏に行っているからだと、思って原子力の専門家に聞いてみたが判らなかった。アメリカは、最近も、今年、2024年5月14日、アメリカ・ネバダ州の核実験場において臨界前核実験を実施していたのだ。大統領選挙に関係なく。
専門家によると、アメリカは、実験の前か、後かに、実験については専門家の間で情報の共有化を行なっている、という。少なくとも「秘密裏」ではないらしい。と言っても、積極的には知らせてはいない、というところか。
「臨界前核実験」とは。
「未臨界核実験」とも言う。
核物質を臨界状態に至らない条件に設定して行う核実験のこと。
核兵器の新たな開発や性能維持のために行う。
過去の核実験のデータを蓄積するために核保有国が行う核実験。
実は、アメリカは、2020年代に入ってからだけでも、以下のような実験実績がある、という。2020年11月、21年6月、21年9月と、政権に関わらずに同じような核実験を繰り返しているのだ、という。アメリカの国内政治にも国際政治にも、大統領選挙にも関係なく、核実験という純粋に科学的な、あるいは物理的な理由にのみ従って実験は計画的に粛々として行われているのだろうか。良く判らない。
国際社会では、核軍縮・不拡散への機運の高まりの中で、2021年には核兵器禁止条約が発効しているにも関わらず、このように行われたアメリカの臨界前核実験の実施は条約の趣旨に反する行為であり、絶対に許されないはずだ。なのに、問題なのは、アメリカもロシアもこうした実験を条約に違反しないという認識を未だに持ち続けているということである。
これでは、禁止条約も絵に描いた餅になってしまう。そういう点だけは、アメリカもロシアも同じだというところが、繰り返しになるが、専制権威主義だというのが私の論点だ。
つまり、専制権威主義国家は、イデオロギーを問わず、同種・同根のパワーに棲みつく宿痾の悪性植物なのである。
アメリカの仮想敵国であるロシアの大統領は、独特な選挙制度など専制権威主義そのものだ。それなのに、彼は民主主義を偽装的に艤装したような軍艦に乗り込んでいる表情で、やはり熱き仲間作りに執着している。目下は、ウクライナが侵攻されて、苦しんでいる。
「こっちの水は、甘いぞ!」。プーチンには、今、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている。しかし、9月2日、夜陰に隠れるようにして、ICC加盟国のモンゴルを訪れた。
ICCが、ウクライナ侵攻をめぐってプーチンに逮捕状を出して以降、プーチンが大統領として
加盟国を訪れるのは初めてである、という。
加盟国には、逮捕義務があるが、モンゴル政府は、プーチンを逮捕せず、「歓迎」をした。
「ロシアとの関係を保つ他の加盟国にとって前例となる恐れもある」。(メディア各紙)。
一方、国際慣習法では、現職の国家元首への「免除」制度よって、拘束や逮捕できない原則になっている、という。
政治制度で民主主義を装う必要がない中国や、北朝鮮も、ロシアとの適当な距離感を操りながら、ミサイルを発射させたり、核実験の実施を示唆したりしながら、それぞれの仲間作りに絡んでくる。
ドイツ、フランス、イギリスなどヨーロッパの国々、イスラエルとパレスチナ、イランなど中東諸国の関係。特に、ドイツは、第二次大戦後、80年近くも経つのに、ナチスの精神に縛られているのは、衆知の通りだ。
ユダヤ人を多数殺したナチス。ナチスの後継も混じっているからといって、ユダヤ人、いまは、イスラエル人にヨーロッパの国民たちは遠慮しているのか。
地球は、いまや熱き沸騰に包まれている。この地球の沸騰化は、始まったばかりか。いつまで続くのだろうか。地球は、もう冷えることはないのか?
地球の冷却は、やがてやってくる。
氷河期がやって来て寒さに勝てない人類が冷却され、人類が絶滅するまで続くのか。
厳しい残暑の暑さにボヤけた頭の持ち主(私)は、夢を見ていたらしい。ボヤけた光景が少し鮮明になってきた。寝ぼけ眼の視野に映像が入って来たと、思ったら、まさに、人込みだ。人の波が、大口を開けて迫って来る。
いつから、東京の渋谷の交差点が、川になってしまったのか。
そんなの、不思議なもんか。何十年、いや、何百年も前からあそこは川だよ。渋谷という谷や渋谷川という川があったんじゃないか?
周りに小高い丘陵地があり、地域の川が「しぶたに」(?)の里に水流を寄せ集めて目黒川(?)でも流し込んでいたのじゃないかな。
シブタニ?
シブタミの間違い?
それなら、啄木の故郷。
かにかくに渋民村は恋しかりおもいでの山おもいでの川
地誌を探ると、別説が多いね。盗賊の澁谷某を退治して、褒美として貰ったとか、鉄分の多い川水の色、赤い(渋い)色の水、低地の平たい地形など。に由来とか。k
きのうなんて、渋谷の交差点も四方から雨が降り注いでいたよ。ゲリラ雷雨(豪雨)だって。ゲリラなんていう言葉は、今や死語だろうに。70年代にベトナム戦争後、解放戦線の勝利で、地下の闇に葬られたんじゃなかったのか?
ゲリラ。ナポレオン戦争時代の「小さな戦い」をゲリラと呼んだという。
スペイン語が、語源とか。
「ゲリラ豪雨」、「ゲリラ雷雨」、どっちの表現が実状にあっているのか?
先日の午後、都心を歩いていて、雨に出会ってしまった。メトロの電車の目的地の駅で地上に出たばかりだったのだから、外の様子が判らない。傘を差している女性が、一人前を歩いて行く。暫くしたら、雨粒が私の顔に当たった。あ、やばい。目的地まで着く前に本降りになったら嫌だなと思っているうちに、ヤバい系の心配が強まってきたので、道路脇のシャッターの降りた事務所の庇の下に飛び込んだ。私の行為、差し迫った判断は正解だった。私が庇の下に入ったのを確認したかのように、雨脚が一気に強まってきたのだ。判断、避難。この間、1、2分か。
この時の印象では、ゲリラ雷雨というより、ゲリラ豪雨だった。雷は音も光もない。豪雨は、地面に叩きつけるような雨脚を残して、去って行った。そうだ、ウクライナとロシアは、あの戦争で豪雨のような弾薬の雨を降らせた。ミサイルに襲われているウクライナはロシアによる砲撃の日々が続いた。命を長らえている人々は、台風の何百倍の思いをしながら生きているのだろう。
墓荒らしが出たぞ。他人の墓から「言葉」「歴史」「文化」を盗んできた奴は?
誰だ。!
誰だ。!
以上、小説風に、タイトルをつけると
『ヘイ! バスター』。
どこが小説風だよ!
(いや、べつに。 そっちこそ、どこが、渋谷風だよ。)
「ヘイ!マスター。こちらは、バーボンのロックで、お願いします!」
(バスターなんて。新宿のバスターミナルの名前じゃないの?)
私は、マスターにそう言いながら注文すると、また、瞼を閉じた。
眠りに向かって滑走するように、頭をフラット(平らかに)にして、次に何が聞こえてもいいように耳の穴を広げる。
★ 「分割論」「分散論」「分断論」
分割論は分散論と違って、民主主義的であり、相対主義的である。分割は、関係する両者が、それで良いというのなら、分割も賛成だという。そういう時に使うのではないのか? 分散は、放り投げられて了えば、放られた側は、徐々に力を失うままに四方に飛んで行くだけだ。投げる主は、絶対的な力を持ち、放物線を描いて高度を維持しながら、徐々に頭を下げて行くばかりだ。いずれにせよ、両者、承知のアクション同士。
ならば、今、国際政治の場で盛んに使われる手法の分断論というのは?
これは、第三者の専制権威主義者が、当事国の意思を無視して、強引に力づくで分断するということなんじゃないの。
だからさ、専制権威主義は、非民主主義的であり、絶対主義的である。アメリカの大統領選挙に、このところ、毎回出ている胡散臭い、あの男、遊び道具のような名前じゃなかったかな。どうも、このごろ記憶の粘着力が低下してしまったらしいんだよなぁ。私も。
老いる。
だめになってきたような気がする。これが老いるということなのか?
オレの頭は、もう壊れちゃったのかな?
あそびどうぐだよ。
遊び道具かい。
地球上に、男と女が両立していることが不思議。自然の摂理だね。
★ 閑話休題
栄螺(サザエ)堂って、知っているかい?
外見は、三重塔。その建造物は、二重構造隠し。入口から続く階段を登って行くといつのまにか、塔の天辺を越えて下り勾配の階段を降りていて、そのまま、出口に出てしまうのだ。いわば、一方通行の三重塔ということか。三重塔という外形、さらに、捻れているから、栄螺堂というわけだ。
現代の栄螺堂は、新宿にある「バスター」であるというのが、私の思いつきである。
栄螺堂については、いずれ詳しく語りたい。
さて、私が、今回、新聞の中で目を止めたのは、以下の記事である。
女性コラムニストの眼は、物事を公平に捉えていると思ったのだ。アメリカ大統領選挙に、話は戻る。
彼女はほかのコラムニストのように、アメリカの大統領選挙を論じ、トランプ批判を展開する。一部を引用しよう。
「ニューヨークタイムズ」(「コラムニストの眼」8月8日付「コラム」から概要参照、以下、翻訳記事が掲載されているので、一部引用)
「私が彼に反対するのは、彼が男性だからではない。彼がひどい候補であり、最悪の指導者であり女性に(そして男性にも)ひどい扱いをするとんでもない人間だから、私は彼に反対するのである」。
私は、このコラムニストの人間観察、人権意識に賛成する。反・トランプを論ずるなら、これで十分ではないのか? 世界には、トランプ以下、という権力者は、大勢いるのではないか?
以下、再び、小説風に
★『ヘイ! バスター』2
8月の東京・新宿駅南口周辺。駅の向かい側にある巨大なバスターミナルの乗降場、私が乗ったバスは、信州・諏訪方面から中央道の渋滞に若干巻き込まれていた。新宿着が30分ほど遅れとなったバスから私も降りた。街は、夕方の夏だ。冷房の効いたバスの車中と比べると街は、ぽっかりと温かい。冷やされた体温には、猛暑は保護されている。
高速バスは、背高が高いので車の出入り口に設定されている階段が急だ。一度など持っていた荷物を落とさないようにと思いながら、片手だけでバスの階段の手摺りに捕まるようにしながら、ゆっくり降りて来たら、途中、見えない足元に邪魔をされて、見えない縁石の位置を見誤り、バスの階段の途中から宙を切った足がバスの外に落ちてしまったことがある。幸い怪我をするようなことはなかったが、その時、バスの出口で中から出てくる乗客を誘導する役目の担当者には、大きな声で怒りをぶつけてしまった。明らかに乗客の誘導ミスだろうと思ったからだ。バスの出入口階段からの路面への転落・転倒は、いきなりだったが、頭を直接地面に叩きつけるようなことがなかったのは幸いだった。それにしても、危なかった。とその時を思い出すとゾッとする。 名刺がわりに誘導員が書いた名前と電話番号のメモは、今も私の手元に残っている。
ビルの中に組み込まれた構造物。バスターミナル。人間を食い尽くすような巨大な生物のように見える。あの日と違って、きょう、私の周りには、山行の厳しい残暑の陽射しに日焼けが一段と進んだ若い世代の男女が幾つものグループに分かれて群れ集うていた。
私は、目下、一人住まいなので、自宅のある郊外電車ネットワークの最寄駅に通じるメトロのホームを目指している。新宿から、大都会の巨大な地下都市を通り抜ける。一人で家路に向かうつもりで、バスターミナルから地下の街路を通じてメトロのターミナルへ出ようとしているのだ。バスストップを我が物顔に占拠して己の荷が入ったザックの中身を整理し直す人々の間を抜けて群れの外へ出ようとしていた。若いグループは、荷物の整理ができたら新宿南口近くの居酒屋にでも入って、山行きを歩き切ったという満足感と疲労感を味わいながら、皆でゆるりとした時間を過ごすつもりではないのか?
(何か、声が聞こえた)
なんて言われたのか、もう忘れた。
声は、かけられていることは間違いないだろう。
「飴があります。食べませんか」
「夏まつり、行きませんか」
だっただろうか。
男たちは二人連れだった。半袖のシャツ姿という軽装だったのは、二人が
客引きなどではなく、社会運動家らしい雰囲気を感じさせた。しかし、私が違和感を持ち、警戒したのは、なぜ彼らがいきなり私に目的的に目をつけ、直接声をかけて来たのかが判らない、 判らないことに対するもどかしさゆえであることは私には、判っていた。
でも、それは、飴ともに渡されたチラシに夏まつりのことが印刷されているから、文言(情報)が判るのであって、チラシも飴も手渡されていなければ、私は手元に残された飴以外は覚えていないかもしれない。
チラシには、以下のようなことが書かれていた。
主体は、新宿区の「自立支援センター」。
事業内容は、最大6ヶ月の無料宿泊と仕事探し。
入居資格は、住居がなく、就労意欲のある単身者。
住民票が必要。
就労先は、常雇いのみ。そう言えば、私が子どもの頃、大人の会話から耳に入ってきた言葉に「日雇い」という言葉があったね。差別的な言葉というニュアンスは子ども心にも伝わってきたね。
ハローワークだけで、職探し。
施設は、門限などもある管理型の施設、ほかに、非管理型の施設もある。
受付場所は、新宿区役所内にある第二分庁舎一階の福祉事務所や23区の福祉事務所などと明記されていた。
泊まる場所も働く場所もない、単身者の生活を支援しようという活動をしている組織らしい。
夏まつりは、行政と仕事探しの単身者を結ぶ「連絡会」が主催するということだろう。
慰霊祭は、今年で30回目。だから、「夏まつり慰霊祭」という。
亡くなった仲間たちの30年を悼む。
そういうチラシを私に手渡した二人。
「なぜ、いきなり高速バスを降りたばかり(直後)の私に声をかけて来たのか。どこかから、見ていた。バスを降りてきた私の姿にあなた方は、目をつけていたのか」、私も違和感を感じるので、二人に聞いてみた記憶がある。彼らのうちの一人は、「あなたが、高齢者であるのに、自分たちが関わっている社会運動に関心がありそうな雰囲気、服装をしていたからだ」と答えてくれたのだった。そこで、私が思い出したのは、次のようなことであった。
というのは、この場面より数年前に、同じく新宿駅の西口地下広場で私は制服姿の若い警察官に、一見親しげな口調で声をかけられたことがあるのだった。季節は、いつだったか判らないが、寒い、暑いの記憶が曖昧で印象も乏しいので、穏やかな春か秋だったのではないか。
結局、その時は、西口広場をペアを組まずにパトロールしていた若い警察官が、私の腰に付けた黒いウエストポーチの厚さに警察官特有の勘働きがあり、一見親しげな会話を交わした後、近くの西口交番にでも私の身柄を引き入れて、所持品検査をして、折りたたみ式のナイフでも出て来たら彼にとっては良かったんだろうと気がついたのだ。おまわり、という連中は、時々アルバイトをして小銭を稼ぐんじゃないのか。邪推。そういう彼らの習性に気づくと、私の違和感は、口の中に飛び込み、妙にジャリという感じで残ったものだったのを思い出した。社会活動家とのやりとりは、断片的ながら残っているが、警察官とのやりとりは、もう、ほとんど残っていない。
職務質問は、応じるかどうかは、質問された側の本人の「任意」となっていることをキチンと覚えておこう。日本でも移民、難民が増えている。日本では、毎日のように、路上で、駅で、公園で、人種差別による職務質問が行われているという。
後日、朝日新聞(9月2日付朝刊記事「記者解説 「差別的な職務質問」)で、豊秀一編集委員が、この問題を取り上げているので、違和感を抱いているジャーナリストは、いるもんだと感心した。それによると、記事の概要は以下の通り。
警察官の職務質問をめぐり、差別的な対応が一部で行われていると懸念されている。
特定の人種などを不審者扱いするレイシャル・プロファイリングは、違法で許されない。
国は実態を調査し、差別をしないためのガイドラインの制定を急ぐべきだ。
豊委員は、人種差別的な職務質問を問題があると訴えている。
警察官職務執行法2条1項を根拠としている。
異常な挙動や周囲の状況から、犯罪をしようとしていると「疑うに足りる場合などに実施できる」というが、「疑うに足りる」というのが、曖昧で、主観的だ。私の場合、私は最後まで「疑われるに足りる」という意識は持たなかったからだ。警察官は、私が腰に付けていた黒いウエストポーチの厚さが気になっていたのだと気がついたのは、警察官と別れた後だった。
そう言えば、今回の社会運動家に声を掛けられた時も私は、黒い大ぶりのウエストポーチを腰の周りに巻いていたのだった。ウエストポーチには、何やら人を惹きつけるような機能があるのだろうか?
それとも、交番の警察官や社会運動家に「共通」する目の付け所が、私の風体にあるのだろうか。いずれにせよ、気になる共通点ではないか。
★★ 分割論が「華」なのよ
分割:出発〜終点へ、同じ目標だが、最後までレーンは交わらない。
分散:出発〜終着点へ。目標は、それぞれ違う。一方通行は、多目的であるが、行ったきりで戻るルートはない。
アメリカでは、11月の大統領選挙に向けて、民主党では、バイデン現大統領の後継候補として、副大統領だった女性のハリス氏に一本化された。一方、共和党は、お騒がせ男という印象が強いトランプ氏が、荒波の海上を行く船に乗っているように海面に大きく姿を見せたり、沈んだりしているが、この人は、灰汁の強さが売り物だから、これでいいのだとばかりに存在感を見せていると言えるのだろう。
真逆な言い方を好んですれば、順調にイメージを固めながら、堅実に一本化しようとするバイデン氏も、彼らの流儀ならアメリカのイメージを分割させ、共和党対民主党の二大党派の対立、保守主義と民主主義をという2項目の、判りやすいイメージを構築できれば、と思っているのではないか。できるほど民主党と共和党のイメージは接戦で、最終的な場面まで、大統領選挙は互いにもつれ合うのではないのか。少なくとも、アメリカのメディア戦略は、そういうことだろう。
それだけに有権者の投票行動は今後さらに燃え上がる、というわけだ。
アメリカも、夏まつり。
ハリス氏が、トランプ氏にないものを身につけて踊れば、トランプ氏は、トランプ氏で、ハリス氏に無いものを持ち出してくるのではないか。
その結果、民主党も、共和党も、それぞれ独自の分割論が主張され、分割したまま、最後まで、どっちの仲間が接戦を続けられるのかという光景が続けられるのでは無いのか。
要するに、トランプ氏もハリス氏も今回の大統領選挙戦から見れば、トランプ氏は、バイデン氏の後発候補であり、ハリス氏はトランプ氏の後発候補である。後発候補同士なのだ。二人の心理としては、遅れを取り戻せという心理になっていることには間違いないだろう。いわば「バラマキ論」に甘い政治的な主張が論じられやすい政治状況なのでは無いのか。
★★「真逆の日本」「分散論」
岸田首相の権力が、いわば9等分にされた。9等分の安倍政権。一人で日本国家を支えていたように思われてきたのが岸田文雄首相だったとしても、この人そんなに器用じゃなかったように思う。むしろ一人分のことをやるのに、フウフウ言っていたのじゃないか。ほかの次期権力志向の連中は、いずれ棚ボタ待ちで大人しくしていた。ところが、息がつけなくなった岸田首相が、政権を投げ出す(次期総裁選挙不出馬)を宣言したら、岸田文雄という体内の隠れ家に間借りして隠れていた連中が、私も私もと、ゾロゾロ出てきた、出てきた。潰れた紙風船から、出てくるは、出てくるは!
最近の新聞は、毎日、毎日、日本の自民党総裁選挙の顔写真をトランプの札のように並べては、並べ替える。しかし、日本の実力者たちは、そんなに 熱心に仕事をしてきたか?
そんなに首相の権力というものが、多極的だったとは思われない。むしろ一本道で、単純明解。そう、安倍政治の継承だけ。
トランプを交えて、カード遊びをするのは、アメリカ大統領選挙ゴッコの方ではなかったのはないか。保守主義と民主主義の激戦対決。
これに対して真逆の現象が現れたのが、日本の首相選びでは無いのか、と思っていたら、日本もカードを並べて、人気投票ゴッコが始まる始末。多彩な顔触れに依る裏金隠し。
みんなで隠せば、恐くない。
こんなふざけた総裁選挙を平気でやる政権与党の政治家たち。
自民党の総裁選挙は、9月27日、投開票。今号、9月号が皆さんの手元に届くのは、9月20日。選挙結果は、まだ、出ていない。
次号、10月号は投票後。選挙結果は、もうニュースではない。しかし、まだ、解散総選挙、政権交代など政治の光景は、先が見通せない。
(了)
ジャーナリスト
(2024.9.20)
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