【コラム】日中の不理解に挑む(13)

「爆買い」してもらうより大切なこと

李 やんやん


 この春節休みの期間中、中国人買い物客による「爆買い」が日本中を驚かせた。およそ50万人ほどの中国人が来日し、買い物に使った金額は少なくとも1200億と言われている。当初皮肉っぽく報道し、小馬鹿にする態度を見せるメディアも、後半はかなりトーンが変わってきて、「韓国での中国人観光客の消費額は年間2兆円、日本では年間5800億円程度なので、もっと頑張って来てもらわなきゃ」と意気込む。

 しかし、「爆買い」にみんな気を取られすぎてはいませんか?「買い物」だけでは、人々の関心と目線をつなぎ止めることはできない。旺盛な消費欲は高度経済成長期が過ぎればいずれ落ち着く。日本は経験済みなのでよく分かっているはず。大事なのは、この機会に「物」以外の日本の魅力を如何に見せるか、ではないでしょうか。

 私も、もっとたくさんの中国人に日本に来てほしいと思う。百聞は一見にしかずなので、是非実際に来て、自分の目で見て、体で感じてほしいと思う。日本に来ているのはいわゆる「富裕層」にとどまらない。ビザ条件の緩和により、実際いま来ている大多数は、中国の「中間層」。中間層の意識が変われば、中国全体の日本への見方も変わっていく。富裕層よりも中間層を丁寧にもてなしたほうが良い。
 信頼と秩序、礼儀と親切、細部に至る思いやり、丁寧な仕事ぶり、細い路地と高層ビルの調和、都会よりも豊かな田舎、控えめでありながら伝統と力量を感じさせてくれる技や達人たち、奇想天外なファンタジーから身近な友人関係まで幅広いテーマで、いつも心にしみる物語を見せてくれる上質な二次元作品の世界・・・。買い物して帰ってもらうのはもったいない。そういう半端なく面白くてかっこいい日本を、是非見せようよ。

 (筆者は駒澤大学教授・CSネット代表)

※ この原稿はCSネット47号から著者の許諾を得て転載したものです。


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