【沖縄の地鳴り】
二枚舌の安倍外交
—日本とともに東アジア共同体をめざす中国への対応
<沖縄の誇りと自立を愛する皆さまへ:第27号 2015年10月号>
辺野古・大浦湾から 国際法市民研究会
日本は2012年いらい、中国・韓国・ASEAN諸国とともに「東アジア共同体の
実現」に合意している。それにもかかわらず、安倍内閣は中国からの「脅威」
を強調し、日米軍事力の一体化(安保法制)と沖縄における軍事基地の増強(辺
野古・大浦湾埋立てによる米軍基地と与那国島における海上自衛隊基地の新設)を図っている。これは、二枚舌の近隣外交ではないか。
ASEAN(10ヵ国)+日中韓の3ヵ国は、1997年に「ASEAN+3協力システム」を設立した。分野別の実務協力を日常化するとともに、年に一度、首脳会議、外相会議、財務金融担当相会議を開催。2012年第15回首脳会議に15周年記念の共同声明を発表し、13ヵ国の協力システムが「長期目標としての東アジア共同体を実現する主要な手段」であり、ASEANが「その推進力」と言明。日本から参加したのは野田総理だった。(We reaffirmed that the ASEAN Plus. Three cooperation would serve as a main vehicle towards the long-term goal of building an East Asian community with ASEAN as the driving force.)
安倍総理が出席した2013年第16回と2014年第17回は、共同声明に至らなかったが、東アジア共同体については第15回と同じことを議長声明で明言している。安倍総理が、直前の野田総理の合意したことを継承したのでなければ、議長がこのようにいうことはできない。
それなのに中国を日本の「脅威」とし、それに対して日米軍事同盟を強化し、辺野古に米軍の新基地を、与那国島に自衛隊の新基地を、それぞれ建設することはともに東アジア共同体をめざすなかまへの態度ではない。“二枚舌の対中外交”といわれて弁解の余地はないだろう。
「東アジア共同体の実現」は、かつて金大中大統領の提案によって設置されたASEAN+3のシンクタンク「東アジア・ビジョン・グループ」が2001年に提唱。
同年の報告『東アジア共同体をめざして—平和と繁栄と進歩の地域』が、国家間の組織としては初めて提起したのである。
2012年に『東アジアビジョン・グループII報告—2020年までに東アジア経済共同体の実現』が発表されたが、ASEAN+3首脳会議はまだ「2020年まで」の合意には至っていない。この報告は「東アジア経済共同体」の四大要素として、(1)単一の市場と生産の基地、(2)財政の安定と食糧・エネルギーの安全、(3)公正で持続可能な発展、(4)世界経済への建設的な貢献——を指摘している。
以上の経緯と事実は、なぜか外務省のHPに紹介されず、日本の主要メディアも報道や解説を控えているようにみえる。
(文責=河野道夫、メール= International_law_2013@yahoo.co.jp、TEL=080-4343-4335 )