【編集後記】
◎反骨のジャーナリストむのたけじ氏が8月21日101歳で亡くなられた。むのさんは戦時中に従軍記者として戦時報道に携わった責任と向き合い8月15日の敗戦と同時に朝日新聞社を退職し、1948年故郷で自ら週刊紙「たいまつ」を創刊して1978年の休刊まで反戦平和を訴え続け、その後も著作や講演など活発な平和活動に取り組まれた
私は哀悼の気持ち以上に悔しい。重い気分である。もっと生きつづけ私たちの標べであって欲しかった。誰が100歳を超えた車いすの老ジャーナリストを5月3日の野外憲法集会にスピーカーとして招いたのか。恨みたい。週刊金曜日7月1日号「たいまつ」での本人説明によれば講演直後の5月7日に発作を起こし肺炎になり1か月意識不明状態で、その後肺炎からは回復されたがついに壮烈な生涯を閉じられた。
◎私は104歳の医師日野原重明氏・102歳の女性報道写真家笹本恒子さん・101歳のジャーナリストむのたけじ氏の3人を心から尊敬していた。それは皆さんが長寿だからではない。自らの戦争体験を深く心に刻み、その職を賭して非戦・反戦を貫かれたからだ。今、畏敬するその一人が亡くなられ、強い衝撃を受けている。私は彼の謦咳に接したことはないが映像や著書を通して心酔した。行動に裏打ちされた彼の言葉は人の心を鷲づかみにし、反戦・平和への熱情がほどばしる。私はそれを座右の銘やオルタの巻頭に掲げ戒めにした。
◎最近、阿部知子議員の対談企画で保守リベラル派の自民党河野洋平・山崎拓・民進党藤井裕久・元さきがけ武村正義など、かつて党の総裁・幹事長や主要閣僚を務められた大物政治家とお会いする機会が多い。彼らはいずれも少年期に戦争体験があり、戦争のできる国にしようとするアベ政治に強く反対していた。「日本会議」などの極右勢力と組む安部政治を阻止するためにはこういう方々とも広く手を組まなくてはと思う。
◎9月15日野党第一党の民進党大会は蓮舫さんを新代表に選んだ。3人の候補者からはエッヂの効いた政策が聞こえず安部政権に対峙する旗は高く掲げられなかった。本号では元朝日新聞政治部長羽原清雅氏が「民進党代表選は「再生」につなげられるのか」を論じた。今月から改憲勢力が3分2を確保した国会が始まり、彼らは衆院憲法審査会を舞台に動きだす。野党はどう迎え撃つのか。衆院憲法審査会会長代理鈴木克昌議員(民進)に聞き、元さきがけ代表武村正義氏と阿部知子氏の対談を載せた。政治論以外では、オランダからリヒテルズ直子さんに「性教育とオランダ人のアイデンティティ」を、元神奈川県副知事久保孝雄氏にはかつて「地方の時代」を唱えて注目された長洲県政を理論的に支えた市民派学者篠原一先生の回想をそれぞれ執筆して頂いた。
◎今月の書評執筆者、色平哲郎氏は地域医療の先進県長野の佐久病院医師で講演に執筆に国内外で大活躍され、矢吹晋氏は横浜市立大学名誉教授で中国経済論・現代中国論で著名な論客である。編集部としては広く知識人のお知恵を借りて書評欄の充実を図るため、最近号から【自著を語る】【本を読む】欄などを作ったがさらに工夫したい。今、紙媒体は苦境に喘ぐ。WEBオルタは出版文化を守るためにもメディアミックスなどで微力を尽くしたい。
◎【日誌】8月25日:調布・荒木重雄。27日:神保町・竹中一雄・浜谷淳・藤田裕喜・加藤周生・加藤真希子。30日:神田・武村正義対談阿部知子。
9月2日〜4日:松山・山口行き・小林吉雄・加藤ゆりか。7日:自宅・動画撮影・新垣毅・藤田裕喜。12日:議員会館・鈴木克昌憲法審査会会長代理・北岡和義・動画撮影。13日:稲城・仏教に親しむ会。16日:学士会館・北東アジア動態研究会・平川新元東北大学東北アジアセンター長・竹中一雄・大類善啓。17日:自宅・野沢汎雄。専修大学・アジア連合大学院機構特別政策研究会・共同通信論説委員石井勇人・東京大学教授鈴木宣弘・パルコ事務局長内田聖子。18日:三島・畠山忠芸術展・加藤真希子。
■【今月のオルタ動画案内】
YouTube 配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine
◎リベラルとの対話シリーズ:元新党さきがけ代表 武村正義・衆議院議員 阿部知子
◎「自著を語る〜沖縄の自己決定権」 新垣 毅