【コラム】大原雄の『流儀』

2024年、マスメディアは、何を伝えるべきか

大原 雄
 
 能登半島、2024年1月1日に発生した地震では、海岸線が最大で4メートルもの隆起を記録した。この地域ではこれまでの知見を超える規模・内容の地震となった。
 能登半島に立地されていた北陸電力の志賀(しか)原発は、一部の系統の外部電源が失われた。危機一髪の状況だったという。
 
 一方、能登半島で深刻な被害に見舞われた奥能登の珠洲は、1980年代、関西電力と中部電力の原発誘致計画があったが、住民たちの反対運動もあり、計画が凍結されていた。もし、原発が稼働していたら、今回の地震でどのような事態になっていたのか。
 
 24年3月7日。四国電力伊方原発3号機(愛媛県)運転差し止め住民訴訟で、大分地裁は7日、訴えを棄却する判決を言い渡した。武智舞子裁判長は、地震と火山噴火に対する対策は十分とする四国電力の主張をほぼ全面的に認めた。原告団の一人は、「まるで四国電力の準備書面を読んでいるような判決だった」と話したという。原告側は福岡高裁に即日控訴した。
 
 原告側は控訴審では、能登半島で隆起が原発のある場所で起きた場合を想定して原告の避難のあり方を争点に加える方針だという。①珠洲に原発を造らせなかった先人たちの慧眼、②自然災害による想定外の事象への懸念という叡智、③細長い半島という地形で塞がれた逃げ道無しという能登の現実が改めてクローズアップされている。能登半島の被災地の復旧、復興が遅れているのは、なぜなのか。法廷でも改めて問われることだろう。
 
 ★ 2024年3月9日 TBSテレビ「報道特集:地震と原発 東日本大震災から13年 
 能登でもトラブル発生「避難」不備続々」。
 
 ★ 1990年 NHKテレビ「原発立地はこうして進む 奥能登・土地攻防戦」。
 
 メディアも、がんばれ! 
 
 ★ ★ セキュリティクリアランス法案と特定秘密保護法とをシームレスに運用
 
 
 2014年に施行された特定秘密保護法で導入されていた「セキュリティクリアランス(適性評価制度)」の場合は、防衛・外交・スパイ防止・テロ防止の4分野の情報が漏れないよう、秘密を守ることができる「人物」かどうかを調査して、「問題なし」と判定されれば、認証がもらえるという。適性評価では、犯罪・懲戒歴・薬物の使用・飲酒の節度・精神疾患・借金状況など7項目を国が調べ、秘密を守ることができる人物かどうかを確認する。
 
 今回国会に提出された「重要経済安保情報の保護・活用に関する法案」では、この仕組みを経済分野に広げるという。2022年成立した、先端技術への国の関与を強める「経済安保推進法」では、研究開発の官民協力や特許の非公開などに官民シームレスで運用するという。岸田首相が良く使う「シームレス」ってなんだ? 情報の共有化、情報の濫用、情報の漏洩(リーク)。「。」では、停められない。使い方は、いろいろあるよ!
 
 そのため、セキュリティクリアランス制度の対象は、研究者を含む民間人に一挙に拡大される。政府が「重要」と考える情報というだけで「重要経済安保情報」というレッテルが指定貼付される。これをそのままヘッドラインにしたのが、冒頭の見出しの文言である。判りにくいたら、ありゃしない。
 
 防衛・外交・スパイ防止・テロ防止に加えて、経済安保が重要と言われて、国会の審議なしに、あるいは、短時間の審議で、政府の一存だけで決められるのか、なぜ、閣議決定で済まされるのか、憲法の専門家たちも疑問を呈する。
 
 裏金つくり防止については、「政治倫理審査会」では、モタモタしていて統治能力の欠如だと揶揄されている岸田首相が、セキュリティクリアランス制度つくりでは、スピード違反で捕まりそうな拙速運転をしているのではないのか。
 
 実は、この「セキュリティクリアランス制度」の幅広い運用は、「安倍総理からの宿題」に対する高市早苗経済安保大臣の答案なのだという。
 
 この制度の運用にあたっては、「重要経済安保情報の指定状況の国会報告には規定がない、という。何か情報を巡って問題が起きた場合、報告の規定がないのなら、何をベースに議論するつもりなのだろうか? 官僚のメモ? 都合が良ければ、メモを提供し、政府にとって都合が悪いことは、官僚の作文だと言って見せないということなのだろう。
 
 ★ 政治資金収支報告書:キーワード解説篇
 
 最近、都に流行るもの。政権与党自民党の政治家たちが集う「派閥」というワンダーランドの物語。自民党の裏金作りに合わせて、急激に知名度を高めたタームがある。
 「中抜き」、「キックバック」など。そういえば、こちらも自民党の誰かに宿題を残した「先生役」は、同じ人だったのではないのか? 
 
 さて、引き継がれた伝統の技というと、まずは、以下の通り。ご覧じろよ!
 
 まず、「中抜き」。舞台は、政治家のホームグラウンド(「村」とか「派閥」などという)が主催する「パーティ」という大道具が必須の装置となる。派閥所属の議員たちは派閥から預かった(ノルマという)パーティ券を売り歩く。額面通りの金額でノルマ分を売り切ると、手元に残ったパーティ券や現金は、派閥に納めずにそれぞれの懐に入れても良いことになっているという。ノルマ以上の現金は、どこにも記録を残さずに、余分に売り切った議員の「裏金(秘密のお小遣い)」として、闇の世界へ飛び立って行く。この飛び立つ現金こそ、「中抜き」という。「ちょろまかし」とか、「ネコババ」とか、「横領」とか、不名誉な渾名を書いた荷札を付けられて、あるいは、「留保金」などというもっともらしい総額でも書いてあればまだ良い方。美味しそうに、つまみ食いされながら、派閥に還流されずに消えて行く。こういうお金の生み出し方は、政治の世界に限らず、日常的に経済、あるいは商売などでも実行されていて、パーティ券の中抜きも、そういうレベルまで引き下げてみれば、何も奇異なことではないから、当初は、金額の大きさに驚かされていた人々も、だんだん、違和感を感じなくなり、やがて、忘れてしまうらしい。中抜きした当人も、後片付けは、面倒らしく政治資金収支報告書には、金額は「不明」としか、追記されていないということが多いらしい。
 
 「キックバック」は、ノルマを超えた金額は、「手間賃」だよ。ご苦労さんとばかりに議員側に還流されるシステムの名称という。こちらの肩衣には、「還付金」という文字が染め抜かれている。
 
 政治学専攻の学者たちは、こういう現象をどういう風に分析しているのか。
 
 「中抜き」も、「キックバック」も、収支報告書に記載しないという点では、一緒だ。しかし、キックバックの方は、派閥が金額を把握しているが、中抜きの方は、議員側だけが知っている。いずれにせよ、なぜ、裏金の資金を二つに分けて掌握する必要があるのか、自民党の説明では、まだまだ不明だと解説している。
 
 情報の出し方が、歪なせいなのか、漏洩されてくるあいだに情報が変質しているのか、分かりやすそうで、判りにくい。
 
 政治資金の問題は、自民党政治の本質に突き刺さる。
 1994年、自民党は衆議院選挙のシステムを中選挙区から小選挙区に改めた。その結果、派閥は、党内の党派。ミニ政党のような組織に変わった。政党政治は派閥政治に変わった。つまり、自民党は派閥連合政党という本質を露呈するようになったと私も思う。派閥による密室政治が体質に合う自民党だから、いま、政治資金の裏金づくりをめぐって、あのような醜い政争を演じているのだろう。派閥政治は、自民党という政党の意思決定プロセスを「見えない化」するための装置なのだろう。変わらない。いや、変われないのだろう。解党・大混乱という手術が必要かな。
 
 以上、この項目は、朝日新聞2月28日付朝刊記事、同紙3月9日付朝刊記事ほかを参照、一部引用した。
 
 ★★ ウクライナ侵攻2年
 
 
 アメリカの「二重基準」、ロシアの戦争犯罪がそれぞれ罷り通っている。
 「ウクライナ揺らぐ支援」というタイトルの国際報道部・喜田尚記者の記事(以下、朝日新聞2月26日付朝刊「記者解説」参照、一部引用)。
 
 「14年のクリミア半島の併合以来、うそを繰り返してきた人物を相手にする交渉は、ロシア軍を不利な条件に追い込んだあとでなければ不可能だ。第2次大戦後の国際秩序が揺らいでいる。(略)そのためにも、侵略は許さないという最低のルールは明確にしなければならない」。
 
 プーチン側が窮地に追い込まれない限り、交渉のゴールに到達することは難しいということか。
 
 ① ウクライナ支援
 国際社会は、2度の世界大戦などを経験して、原則的な戦後処理の方法を確立している。
 それは、ウクライナ戦争に当てはめた場合、ロシアの軍事侵攻を停めるために国際法や人権を尊重して戦争犯罪を防ぐということだ。
 
 これについては、大国・アメリカほかNATO諸国が進めている施策が、民主主義的だろうが、11月の大統領選挙が近づくにつれてアメリカの国内政治の状況(トランプ大統領候補問題、つまり、「もしトラ」(もしかして、トランプ前大統領が復帰)ということらしい)が、それがリアルになり、民主党の施策、特に予算案問題)が、不透明になり、トランプ政権の言語同断戦略が打ち出されるようにでもなったら、目も当てられないということだ。
 このまま、投票行動でのアメリカ国民の意識が変わらなければ、無党派層のアメリカ有権者がしっかりしなければ、国際社会におけるアメリカの民主主義原理の普遍性は、地に落ち、プーチンが目指すロシアの優位が実現するという「激動」状況が生まれる可能性が高くなる、と思われる。
 
 2024年の「ウクライナ支援」問題とは、そういうことだろう。支援が実行されれば、民主主義が勝つだろうし、支援が実行されなければ、民主主義の終焉を迎えることになる、というのがバイデンの原理。
 
 ② イスラエルの民間人無差別殺人とアメリカの二重基準
 バイデン大統領の二重基準が、アメリカのウクライナ支援の足を引っ張っている。バイデンのアメリカは、マッチポンプのような自作自演で、「股裂」状況を自ら創り出している。
 
 パレスチナ自治区ガザ地区に対するイスラエル軍の民間人無差別殺人は、戦闘という概念を飛び越えてしまっていて、アメリカもイスラエルをコントロールできなくなってしまっている。それを支持するアメリカの対応は、バイデン政権の二重基準と言われている。
 アメリカは、ウクライナ侵攻で、ロシアが国連安全保障理事会でしばしば拒否権を執行するのと同様に、パレスチナ問題では、イスラエルのために、国連安全保障理事会で拒否権を執行する場面が目につくようになっている。ウクライナ支援とイスラエル支持では、行動原理のベクトルが、見事に逆方向を向いている。
 
 イスラエルのためのアメリカの二重基準は、ロシアのウクライナ問題での二重基準の、いわばメタルの裏表現象と共通している、と言える。これでは、二重基準は、スタンダードとは、とても言えず、土俵に行事役がいない。いわば、「二枚舌」と言われても反論できないのではないか。
 
 ロシアによるウクライナ軍事侵攻も、アメリカが支援するイスラエルのパレスチナ戦闘も、二重基準という矛盾をかかえたままいつまでも存在感を持ち続け、国際社会は、普遍的な国際ルールを掲げられないのではないか。ロシアの戦争犯罪も、アメリカの戦争犯罪も、継続されてしまう。
 
 ロシアによるウクライナ軍事侵攻停止とアメリカによるイスラエルの戦争犯罪停止は、国際社会の民主主義度を測るバロメーターだろう。アメリカは、しっかりしなければ、国際社会の民主的な原理から見捨てられてしまうだろうし、国内社会からも愛想を尽かされるだろう。
 
 ★★ 予兆:① 世界は、「激動」の年へ動き出したか
 
 
 2023年は、末期になってから、誰言うことなく2024年は「激動の年」になるのではないかと予測する声が声高になってきたような気がする。3月半ばに行われる予定のロシア大統領選挙は、プーチン体制の下で強行される非民主主義的な、特殊な権威主義的な選挙だから、選挙を通じてロシアでは大きな変化の兆しは見られないかもしれないが、ウクライナでは、激動、激変、激闘など、違う兆しが見えてくることだろう。
 メルマガ「オルタ広場」最新号が届く頃、結果は出ているだろう。
 
 ★ 3回目の2・24
 
 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ軍事侵攻からマル2年になるのを前に、2月8日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍トップのザルジニー総司令官を解任することを明らかにした。去年の末期からザルジニー総司令官とゼレンスキー大統領の間で軍の対応をめぐる軋轢(あつれき)が表面化していたという。背景には、深刻化するウクライナの兵員不足がある。ウクライナ軍は、前線に約100万の兵力を展開しているが、「軍事大国ロシア」との差は、改善されず、戦況も日々厳しくなっていると言われる。軍事侵攻開始の2年前当時のような志願兵の交代もままならず、動員の強化が進められた結果、国民の間で動員増という不安が掻き立てられることになる。ゼレンスキー大統領は、去年の12月、新たな動員の規模を45万から50万と国民に説明したが、国民に不人気な新規動員をめぐり、ゼレンスキー政権側と軍側で「責任」の押し付け合いが続けられていたのである。戦闘が予想以上に長期化していることからウクライナ軍の消耗が激しいという。
 
 さらに、ウクライナの政治状況。3月に予定されていたウクライナの大統領選挙は、延期された。ウクライナでは、ロシアの軍事侵攻に対抗するため、戒厳令と総動員令が全土に発令されているが、2月6日の最高会議(議会)では、戒厳令と総動員令を5月半ばまで、90日間延長する法案が可決されている。ウクライナでは、戒厳令下での国政選挙の実施は禁じられているから、大統領選挙も取り敢えず、5月半ばまでは行われない。
 
 ウクライナの国営テレビが報じたところでは、「大統領選挙は、戒厳令が解除された後に実施される。従って、ウクライナは、ロシアに勝たなければならない」と国民に呼びかけたという。今の戦況で、ウクライナがロシアに勝つということは、容易ではないように私は思っている。
 
 というのは、以下のようなデータである。
 ゼレンスキー大統領にとって気がかりなのは、国民からの「信頼度」の低下というデータがあるからだ。メディアが伝える世論調査では、ゼレンスキー大統領が解任したザルジニー総司令官の方が、国民に人気があるのだ。正義の人は、清廉潔白でなければならない。
 
 ザルジニー総司令官:信頼できる 88%
 ゼレンスキー大統領:信頼できる 62%
 
 どういう選挙システムか判らないが、複数回答、信頼度(人気度)方式か。ゼレンスキー大統領は、ロシアの軍事侵攻初期には、信頼度は90%前後だったというから、ゼレンスキー大統領の国民からの信頼度には、翳りが見えるということだろう。さらに、ゼレンスキーは大統領の権力を利用して、いわば「政敵」ザルジニー総司令官を切ったという形になっていることも、マイナスイメージになりかねないと私は思っている。プーチンと似たり寄ったりの対応だと受け止める有権者もいるのではないか。また、プーチンの陣営には、情報機関などを通じて、こういう状況を利用してウクライナの大統領選挙に工作・干渉してくるのではないかという懸念もありうるのではないか。いや、懸念ではない。プーチンにとって、それは、ルーティンワーク。真っ当な施策の一つであろう。
 ウクライナ報道に関わるメディアは反ゼレンスキーの動きについても注意深く見極めなければならないだろう。
 
 ゼレンスキーは、大統領選挙を勝ち抜けるのか。ウクライナは、ロシアとの戦争に勝てるのか。ロシアは、ウクライナとの戦闘状態に終止符を打てるのか。
 
 ロシアの大統領選挙は、3月に行われるだろうが、「演出・プーチン」という猿芝居。現在までの状況では、立候補するのは、プーチンのほかに、いわゆる「体制内野党」(下院に議席を持つ3つの政党)の3人の候補、合わせて4人の見込みだという。
 全員が軍事侵攻を支持している。それでも、お山の猿の大将・プーチンは、80%の得票を目指しているという。茶番選挙。現在の国際社会は、トランプ、バイデン、プーチンなどという駒しか持てないのか。私たちは、こういう政治家に翻弄されるしかないのか。
 
 ★ ★ ナワリヌイ氏:死因の謎
 
 
 ロシアの良心。反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が、2月16日にロシアの北極圏にある刑務所内で「急死」したという衝撃的なニュースが世界に流れ出してきた。47歳だという。「急死」というより、「不審死」? 本当だろうか。情報の出所は、すべてプーチン政権側からだろう。これでは信用できないと私は思う。死因は不明。ロシア当局は「死因の調査が終了したが、犯罪は立証されなかった」という。収監されていた北極圏の刑務所に到着したナワリヌイ氏の母親らは、「死因」は「突然死」だと告げられたという。当局から指示された遺体安置所にはナワリヌイ氏の遺体はなかったという。遺体との対面もできない。引き渡しも一時、拒否されているということだった。
 
 以下、2月20日付朝日新聞夕刊ほか参照、一部引用。
 ナワリヌイ氏は獄中で死去したとテレビ、新聞を含めメディアは伝えるが、簡単に断定できるのか?
 本記筋の情報は、当局側の発表通りに垂れ流しているのではないのか?
 一方、妻のユリアさんは、SNS に動画を投稿した。
 ナワリヌイ氏の「遺志を継ぎ、激しく闘い続ける」と宣言し」ているという。
 
 「プーチンは私の夫を殺した。同時に、私たちの希望や自由、未来を、私たちから奪おうとした」と訴えた(という)。
 
 一方、ナワリヌイ氏の母、リュドミラさんと弁護団には、「遺体の引き渡しを拒否し」ているという。追悼の献花や抗議行動なども続き、19日にかけて約400人が拘束された」という。
 
 母・リュドミラさんは、刑務所の建物を背景に雪の中に立ち、カメラに向けて訴える。
 「背後に息子が死去した刑務所がある。5日目でも遺体を見られず、どこにあるかも教えてくれない」と嘆いている。
 
 こんな謎だらけの、不可思議な情報が、いとも容易く国際ニュースとして流れて良いのか。3月にはロシアの大統領選挙が行われるだろう。権力者が権力を振り回し、対立意見を表明した人を殺したり、妨害したりしながら、絵に描いた餅を食って見せるというロシアの大統領選挙で、いかにプーチンが圧勝しても、その当選に正当性はないだろう。こんな見え見えな猿芝居の国家が「大国」として国際社会に通用させてはならないだろう。尤も、ロシアは、大国から滑り落とされただけに、拗ねているのかもしれない。
 
 ロシアでは、大統領選挙に見られるような猿芝居は、幕を閉めたり、開いたりしながら繰り返されて行く。
 
 ★ ナワリヌイ氏獄死続報:前掲同紙2月26日付朝刊記事参照、一部引用。
 
 以下、見出し。「母親へ遺体引き渡し」
 
 「ナワリヌイ氏の報道担当者は24日、同氏の母リュドミラさんに遺体が引き渡されたと(略)伝えた。(略)当局が作成した死亡診断書には『自然死』と書かれていたという」。
 
 それにしてもロシアは、ウクライナを取り巻く政治状況をどのように分析をし、今後の国際社会を泳ぎ抜けようとしているのか。北朝鮮や中国とロシアの関係は、どうなって行くのか。まずは病めるロシアの軌跡を持続的に描いて欲しい。
 国際社会で活動しているメディアの取材者は、ロシアの現況をしっかり報道して欲しい。伝えるべきは、事実。フェイクな情報は、要らない。
 
 また、アメリカの政治状況もウクライナには、不安材料を積み重ねることになる。まず、アメリカ議会における民主党の不安定さは、相変わらずだ。さらに2024年11月に行われる大統領選挙での共和党の大統領候補のトランプの人気ぶりは、民主党候補のバイデンの選挙戦にもとっくに影を落としている。「もしトラ」。トランプ候補が、アメリカの大統領に再選されるのか。高齢化が懸念されるバイデン候補が引き続き大統領に再選されるのか。国際社会でバイデンは、リーダーシップを発揮してプーチンに勝ち抜くことができるのか。フットワークが、老化している、もう一つの大国、アメリカの姿も何か羅針盤が壊れているようである。針は、どっちを指している?
 
 岸田首相が握っている日本の政権は、どうなるのか。政権とアメリカの関係は、どうなるのか。今年の夏から秋にかけて、国際社会は、やはり不安定化しそうな予感は、ぬぐいされないというのが、前半を見てきたウォッチヤーとしては、気がかりなところである。
 
 このように、アメリカを巡るヨーロッパなどの国際状況も不安定だ。アメリカを軸とする中東の戦闘状況の複雑さ。特に、イスラエルとパレスチナの「関係」の変化は、今後どうなって行くのか。アメリカやウクライナに対するNATO対応の変化は、どうなるのか。
 アジアは? 中国は?
 (朝日新聞2月9日、10日付夕刊・朝刊記事など参照、一部引用)。
 
 ★★ 予兆:② 地球沸騰化
 
 
 今年の夏は、去年以上の猛暑化となるのか、沸騰化? 怪物が、動き出さないか?
 冬の寒波は、どうだったのか。北海道の沿岸では、この30年で流氷の厚さが3割も薄くなったと推計されるという。また、2050年には、流氷の面積も3分の1に縮小されるという予測だという(前掲同紙2月29日付夕刊記事参照、一部引用)。冬の気温が高いのだろうか。その結果は、植物プランクトン、動物プランクトンの変化に繋がる。海の生態系にも影響する可能性がある。地球温暖化、猛暑化。人類の生態系。やはり夏は、今年も要注意ということか。
 
 2024年、元日の夕方、日本の能登半島を襲ったような災害は? いつ起きても不思議ではない。また、次なる原発の事故は? 活断層の上に、わざわざ原発をつくる必要があるのか? こちらは、人災だ!
 私には考えられない。
 
 過疎からの脱却の前に、ウクライナのチェルノブイリのように、原発事故で被曝し地域社会が崩壊してしまわないか。人跡未踏の「絶対過疎」化した社会が、出現するような事態になったりしないようにしなければならない。能登半島の地域社会は、その先ブレではないのか。以前視察に行ったチェルノブイリ原発周辺の無人の町や村を思い起こす。
 
 誰も住めない被曝地区の出現なんて、もう、あってはならない。ウクライナからは、軍事侵攻当初、ロシア軍から攻撃されたチェルノブイリ原発周辺のその後が、伝わってこないが、どうなっているのか。引き続き、メディアは、どこが世界の限界地か、原点かを絶えず見抜きながら情報を書き継がねばならない。
 
 ★ メディア断章/ノート:「供述の自由権」
 
 皆さんもドラマを観て知っているように警察に捕まった時、日本国憲法が国民に保障する権利には、黙秘権や弁護人依頼権というのがある。嫌疑をかけられた人が、「弁護士を呼んでほしい」と叫ぶドラマや映画の場面を観たことがあるのではないか。刑事訴訟法では、取り調べにあたって、弁護士の「立ち会い」ができるともできないとも書いていないが、憲法は、弁護士の立ち会いができると保障しているという。
 
 日本弁護士連合会(日弁連)では、いま、全事件について警察や検察に対して、弁護士の立ち会いを申し入れるように呼びかけているという。そう言えば、最近の犯罪報道で、ニュース原稿に「黙秘します」というフレーズが入っているのが増えたような気がするが、如何であろうか。これに対して、黙秘すると、取調官は、揺さぶりをかけてくるだろう。黙秘を続けるのは、かなり苦しいようである。
 (朝日新聞2月8日付朝刊記事オピニオン&フォーラム面記事参照、一部引用)。
 
 ここで大事なのは、供述調書は、取り調べで話した言葉を「そのまま書いたものではない」ということだと弁護士は強調する。警察は、逮捕すると「検察に起訴してもらえるように、見立てに沿った調書を作ろうと懸命になるものです」というのである。
 
 そのために取調官は、例えば次のような対応をしてくるらしい。
 
 「否認被疑者」(黙秘する人のことだろう)は、朝から晩まで調べ室で調べろ。
 「被疑者の言うことが正しいのではという疑問を持ったら(警察の)負け」というのは、どこかの警察の「被疑者取調べ要領」に明記されているという。
 
 憲法で保障されているはずの供述の自由が確保されていないから、立ち会いが必要」だと弁護士は言う。
 
 日本の裁判は当事者主義。
 被疑者と取調官の力関係は対等でなければならない。
 国家:強制捜査権。被疑者:黙秘権。
 取調べの録音録画は義務化された(2019年)が、録画の下でも、「ひどい取り調べ」があるという。
 だから、立ち会い制度の立法化が必要。
 
 「準立ち会い」という制度もある。弁護士が取調室の外で待ち、被疑者には数十分おきに取調室から出てきてもらって、弁護士が助言をする。取調官の姿勢が丁寧になるという。
 
 日弁連では、去年の末、立会い費用を基金から支援する制度も作ったという。
 
 交通事故や痴漢冤罪など、普通に暮らしていても、突然捜査の対象になることがある。日弁連は、10年以内の制度化をめざしているという。
 
 ★ メディア断章/
 ウクライナ哀歌① 〜置き土産
 
 ウクライナ軍は、「大軍」ロシア軍の軍事侵攻に対抗してまる2年が過ぎ去った。ウクライナ軍にとって、兵力や軍備の規模で勝るロシア軍との戦闘は、苦しいものだったろうと思われる。ロシア軍に対抗する軍備のうち、ミサイル、ドローン、アメリカから供与されたクラスター弾、(核兵器)などが、いわば「三種の兵器」なのではなかったか。中でも、軍事的に重要視されているのが、アメリカの置き土産であるクラスター弾ではないか。
 
 クラスター弾というのは、親爆弾から多数(数十から数百個)の子爆弾が飛び散り、広範囲に展開する兵士たちを攻撃する砲弾である。ウクライナ軍から見れば、クラスター弾は、ロシア軍の地上侵略に対する有力な「抑止力」(ウクライナ軍トップだったザルジニー総司令官の特別顧問氏の評価)になっているという。しかし、クラスター弾は、非戦闘員の民間人を巻き込んで殺したり、その場では、不発だった子爆弾が何年も後になって爆発したりする「厄介もの」である。1970年代のベトナム戦争下にアメリカが大量に投下したカンボジャでは、いまも後処理(不発弾を見つけ出し、爆発しないように処理する)に苦労している。国際社会では、「非人道的な」兵器として使用が禁止されているのだが、アメリカは、置き土産をウクライナに供与した。ロシア戦に使用しているのではないのか。ロシアも使っている?
 
 4年間続いたコロナ感染。コロナ感染で、「医療用語」で使われるタームの「クラスター発生」(集団感染)もクラスター弾と同義の用語ということか。
 
 ウクライナ軍には、在庫は、まだあるのか?
 ロシアやシリアは、クラスター弾をどこで、どうやって入手しているのか?
 
 2008年に調印されたオスロ条約では、クラスター弾の生産・使用・移転が全面的に禁止されている。条約には、日本やヨーロッパの主要国を含む120以上の国と地域が参加している。しかし、アメリカ、ウクライナ、ロシアは参加していない。
 
 ウクライナ戦争の局面だけを見れば、侵攻を続けるロシア軍が撤退すれば、ロシアもウクライナも、クラスター弾の使用は避けられるかもしれないが、プーチンは、2年前から国際的な軍縮の流れに逆行する蛮勇を振るい続けているのである。その悪影響が、内戦が続くシリア国内でのクラスター弾の使用であり、ウクライナ戦争での使用である。
 
 ウクライナのゼレンスキー大統領は、2023年7月のNATO首脳会議の記者会見で、次のように語っているという。
 
 「ロシアは我々の領土で常にクラスター弾を使っている。すべては公平性の問題だ」と主張している(朝日新聞2024年2月12日朝刊1面、2面記事参照、一部引用)という。
 
 どっちもどっち。フィフティーフィフティーと、言いたいのか。
 権力者の判断は、権力の維持と「さらなる強力化」しかないのだろう。ああ、どいつも、こいつも、困ったものだ。
 
 戦争の論理は、公平性とか、損得勘定とか、自分らの都合優先。
 世間の論理では、決着しないだろうから、戦争の時代に遭遇した指導者が、どれだけ卓越した判断力を発揮できるか。そこに戦争終結の鍵があると言えるのではないか。ウクライナ哀歌が、聞こえて来るような気がする。
 
 ★ メディア断章/
 ウクライナ哀歌② 〜人さらい
 
 ロシアとの戦闘が続くウクライナでは、戦場と隣り合う地域で、子供を連れ去る「人さらい」(強制連行)が出没しているという。徴兵年齢前の子供たちが狙われているという。ロシアに徴兵されてしまえば、ロシア兵として登録され、ウクライナ人がウクライナと闘うようにと武器を持たされることになる。
 
 ウクライナでは、大人は、ロシアに殺されるか、ウクライナ人を殺せと武器を持つことを強制される。軍事侵攻の2年間。15歳の少年は、17歳の多感な青年になり、徴兵年齢になれば、戦場に追い立てられる。
 
 ウクライナとの絆が薄い孤児や貧困家庭の子どもは、ウクライナの孤児院や養護施設から攫われ、ロシアへ強制移送されるという。
 ロシアに送られた子どもらは、
 例えば、鉄条網に囲まれた施設で毎日4、5時間ロシア国歌を聴かされる。歌わされる。
 施設の教師から「ウクライナはテロリスト国家だ」「ゼレンスキーは薬物中毒者だ」などと虚言を弄されたという。軍事教育などロシア人への同化政策を取らされる。
 
 ロシアの狙いは、ウクライナの国民からアイデンティティを消去させることだという。
 ウクライナの領土を奪い、国民の命を奪い、アイデンティティを消し去る。
 プーチンは、ウクライナ国民の命を奪うだけでなく、ウクライナ国民の心をも永久に盗み出そうとしているようだ。特に、子どもは、ウクライナから引き剥がされ、ロシア人化されてしまう。人間改造。まさに悪魔の仕業としか言いようがないのではないか。
 
 「子どもがいなければ、その国に未来はない、
 ロシアの目的は、現在を消し去り、その国の未来を奪うことだ」
 
 施設の子どもたちは、キャンプ地など数箇所を転々と移送されるケースも多いため、国際的な人権団体の追跡も難しいという。
 
 その挙げ句、こうした子どもたちの中からは、ウクライナへの帰国を自発的に拒否するケースもあるという。子どもにとって、「天地が逆転」したまま、後の人生を送らされるということになるのか。
 (「ウクライナ哀歌」は、前掲同紙2月11日付Globe版ほかの記事にヒントを得た)
 
 ★ メディア断章/
 コロナ感染者12週ぶり減少
 
 コロナは、綱引きしながら、人類と共存。前掲同紙2月17日付朝刊記事。
 以下、一部引用。
 
 「厚生労働省は16日、(略)5日〜11日の(略)新規感染者数は計6万7614人で、1定点あたり13・75人だったと発表した。前週(16・15人)の約0・85倍で、12週ぶりに減少した。」
 
 増やしたり、減らしたり。継続した対応が必要。
 
 続報:前掲同紙2月27日付朝刊記事。
 ★ 見出し「コロナ感染者2週連続減少」
 
 「厚生労働省は26日、(略)定点医療機関に12〜18日に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数は計4万9821人で、1定点あたり10・10人だったと発表した。前週(13・75人)の約0・73倍で、2週連続で減少した。」
 
 さらに、続報:前掲同紙3月2日付朝刊ベタ記事参照、一部引用。
 ★ 見出し 「コロナ新規感染全都道府県で減」
 
 「厚生労働省は1日、(略)計3万9124人で、1定点あたり7・92人だったと発表した。前週(10・10人)の約0・7 8で、3週連続で減少した。全都道府県で減少した。」
 
 さらに、続報。3月9日付朝刊ベタ記事参照、一部引用。
 ★ 見出し 「コロナ感染者 4週連続減少」
 
 厚生労働省は8日、(略)計3万4488人で、(略)4週連続で減少した。」
 
 前週(7・92人)→ 今週(6・99人)。
 
 
 ★★ 見出し。丁寧なお辞儀をして、「訂正して、おわびします」
 
 
 幾重にも、背を折って、お詫びします。メディアが報じるニュース画像を見ていると、お詫びの場面が増えているようだ。最近では、お詫びのノウハウを指南する会社があり、企業からの需要が増えているらしい。丁寧に腰を支点に上半身を曲げる。90度、頭をさげたまま、30秒とか、1分とか、2分とか、不動の姿勢を保つなどと教えているのだろうか。お詫びのマナー教室なんて、あるのかな?
 
 大手全国紙が作った折れ線グラフも、訂正された。
 一目で判る、というのがグラフの妙味だったのではないのか。一目で判るだけに、実害も大きい。
 
 今回の訂正記事本記は、以下の通り。朝日新聞2月16日付朝刊に掲載されている。
 
 15日付1面「ベア要求 歴史的高水準」の記事につくグラフで、2021年の数値が誤っていました。回答ではなく要求を集計した数値でした。正しくは0・55です。正しいグラフを掲載します。
 
 この本記につけて、折れ線グラフの線の位置が、訂正されているようだが、これでは私には余り良く判らなかった。以前の、このコーナーは、もう少し丁寧な説明で訂正をしていたし、その訂正内容の理由も、懇切に書いてあった。「記者が間違えた」などという説明もあった。担当デスクが代わったのだろうか?
 
 20年、21年、22年の正しいグラフの折れ線は、ほぼ横ばいになっている。
 ところが、15日付の記事をみると、グラフは逆に、つまり訂正後、21年が「ヤマ」になっていて、22年が「タニ」になっているではないか!
 
 データは、ほぼ横ばい。グラフは「激変」なのに、記事では触れていない? 
 
 「デスク!、この記事おかしいよ」。記事がおかしくないなら、グラフがおかしいと気付くはず。
 校閲記者なら、すぐ気付くのではないのか?
 
 せっかく、記者が取材してきた情報が、グラフ製作の意図が間違ったせいで、1日間、結果的に大手全国紙は、特落ちのグラフ。
 誤報になってしまったのだ。残念。
 
 また、「おわび」記事がでていた。朝日新聞は、偉い。
 のらくらと、同じことを繰り返す政治家の言動を連日のテレビで見せつけられた後だけに私の印象は、鮮明。やっと、まともな人に出会ったという感じだ。前掲同紙、3月2日付朝刊記事参照。一部引用。以下の通り。
 
 「2月16日付1面の天声人語で、『句読点おもしろ辞典』とあるのは『句読点おもしろ事典」』の誤りでした」という。
 
 天声人語は、朝日新聞のお宝コラム。執筆者も名文記者に限られている。ケアレスミスなどあってはならない。一字一句、乱れてはならない。万全のチェク体制じゃないのかな?
 
 また、また、「訂正して、おわびします」が出てしまった!
 私とイタチごっこか。前掲同紙3月8日付朝刊記事参照。一部引用。
 
 「6日付オピニオン面『交論 ロシアの戦争観』(略)スターリンの命令に基づき、後退する将兵の射殺が実行されるのが『1942年4月』とあるのは誤りでした。命令が出されたのは同年7月でした。」
 
 なんで、間違ったのかな?
 何かと勘違いしたのか?
 
 注)
 調べてみると、1942年7月28日のこと。
 独ソ戦で対戦中、スターリンから赤軍(ソビエト軍)に対して 「一歩も下がるな!」という命令が出された。
 
 命令の文言を入れたソビエトの郵便切手が 大戦中に発行されている。
 ロシア史に詳しい人なら、誰もが知っているエピソードではないのか。
 
 訂正とは、不思議な話?

(2024.3.20)
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