第115号(2013.7.20)

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メールマガジン「オルタ」115号(2013.7.20)
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 ◎ 『ともに生きる社会をつくろう。』          
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■◎少しずつ変えていくことに耐えられないならば原子力に負けるしかない。~電力自由化と脱原発は別次元ではないのか濱田 幸生

■電力自由化と脱原発はワンセットではないはずだ 私は、かねがね今の脱原発派の論理の立て方では政府の思うつぼにはまっている、と思うことしきりです。あらためて確認すれば、脱原発派の皆さんの論理はこんな骨格です。①[原発再稼働阻止]・[再処理阻止]→②[再生可能エネルギー拡大]・[FIT(全量固定価格買い上げ制度)推進]→③電力自由化[電力会社解体]・[発送電分離]私が危惧するのは、脱原発の戦略を再生エネルギー=FITの拡大におき、発送電分離による電力自由化に見いだしていくという、まったくの新自由主義的構造改革路線に変容していることです。しかも段階を経て実現するという斬新的改革ではなく、一挙にやってしまえという急進的路線です。

■◎参議院選挙で国民は何を選ぶべきか。     岡田 一郎

去る6月23日に執行された東京都議会議員選挙は、自民党・公明党候補の全員当選、共産党・みんなの党の躍進、民主党・日本維新の会の惨敗という結果に終わった。民主党は都議会第一党から第四党に転落、日本維新の会は石原慎太郎共同代表のお膝元である東京都議会でわずか2議席しか獲得できないという負けっぷりであった。

■◎都議会選挙2013の結果をみる.        藤生 健

7月の参院選の前哨戦として注目された東京都議選(定数127)は6月23日に投開票され、前回39議席に終わった自民党は擁立した59人全員を当選させた。逆に与党だった民主党は現有43議席を大きく下回る15議席に終わった。当選者数は、自民59人、公明23人、共産17人、民主15人、みんなの党7人、東京・生活者ネットワーク3人、維新2人、無所属1人。投票率は43.5%と前回(54.5%)を大きく下回り、過去2番目の低さとなった。 
≪連載≫海外論潮短評(70)

一歩前進、二歩後退逆進する世界の民主主義とその原因
                       初岡 昌一郎

アメリカの国際問題専門誌『フォーリン・ポリシー』3/4月号が、冷戦後拡大してきたグローバルな民主主義が今や後退期にはいっているという、表記の論文を掲載している。その原因は、民主主義の主体として評価されてきた中産階級の弱体化と無気力にあるという。 筆者のジョシュア・カーランチックは国際問題評議会東南アジア研究員で、近著に『後退する民主主義:中産階級の反乱と代議制統治の世界的な衰退』がある。
≪連載≫宗教・民族から見た同時代世界    

ミャンマー仏教徒に「イスラム嫌悪」を説く高僧が出現  荒木 重雄

奇妙な記事に出会った(毎日新聞6月22日)。仏教徒とイスラム教徒の宗教暴動が頻発しているミャンマーで、仏教徒にイスラムの脅威を煽っている高僧がいるというのだ。いわく、「イスラム教徒はこの国のすべての町や村で仏教徒をレイプしています」「彼らは人口を増やして国家を乗っ取るつもりです」。 古都マンダレーの3千人もの僧を擁する僧院の幹部であるウィラトゥーというこの僧は、「イスラムの陰謀」に対抗するためとして「969運動」を提唱する。「969」とは仏教の三宝(仏法僧)を意味する数字とされるが、ヘイトスピーチ(憎悪表現)にまみれた彼の主張はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じて急速に広まり、仏教徒大衆の反イスラム感情を増幅させているという。
≪連載≫落穂拾記(24)

松本良順・夏目漱石・犬養毅、そして堀部安兵衛 ≪上≫  羽原 清雅

筆者が50年以上住む自宅は、新宿区馬場下町にある。格別卿土史などに関心があるわけではないが、たまたま「新宿区史」(1955年刊)を見ていたら、この「馬場下町」に1869(明治2)年に松本良順(順)が西洋医学の私塾を設け、50人の医学生を抱えていた、と書かれていた。松本良順についてはかつて<漢方医と蘭方医>の抗争を調べていたので、興味を誘った。 ≪馬場下というところ≫ この「馬場下町」は地下鉄東西線「早稲田駅」の周辺一帯で、近くに早稲田大学、早稲田中学校・高校、また「一陽来復」で知られる穴八幡宮がある。 


【横丁茶話】

貧乏と貧困                  西村 徹

●本当は低賃金な日本 日本のこどもの7人に1人は貧困状態だという。相対的貧困率というものがあって、国民一人あたり所得を順に並べ、真ん中の人の所得の半分に満たない人の割合をいうものだそうだ。日本では09年、17歳以下で約16%、320万人超。片親世帯の子なら50%を超える。先進国では最高の貧困率になるという。『貧困大国アメリカ』という本があるくらいだから日本はアメリカよりはましと思っていたが、そうではないらしい。 


【北から南から】
中国・深セン便り

『中国・我が家の家電事情』           佐藤 美和子

我が家では最近、大物家電にトラブルが相次いでいます。いえ、やっぱり訂正します。中国では家電に住居は常にトラブル続き、何事もなく無事に過ごせている時はあんまりない、というのが正しいです(笑)。 私が中国で初めて買った家電は、洗濯機でした。91年の北京留学時代、同じ寮に住む留学生仲間数人でお金を出し合って買ったものです。当時、50人弱がいた留学生寮には2台の古ぼけた共同洗濯機があったのですが、なかなか順番が回ってこないことや古すぎて清潔な感じではなかったので、自分達専用に中国製日系N社製品を買うことにしたのでした。
【北から南から】

ビルマ/ミャンマー通信(7) 日本製農機への願望       中嶋 滋

日本では梅雨が例年より早く明け記録的な猛暑が続いているようですが、ここミャンマーは雨期で、ヤンゴン近郊では毎日数回1時間から2時間の降雨が、時には車のワイパーが全く用を為さないくらい激しくあって、気温が下がりその分過ごし易くなっています。とは言っても南国のことですから、雨が上がってしばらくすると30度を軽く超す気温になります。雨は乾期に干上がっていた田に水をもたらし、農民たちは田植えに取り組んでいます。


【北から南から】

オランダ通信(3)子どもの幸福度が教えてくれる、脱産業化社会への離陸
                        リヒテルズ直子

去る4月、ユニセフは5年ぶりに先進国の子ども(11、13、15才)のウェルビーング調査の結果を発表しました 。(注)「ウェルビーング」という聞きなれない言葉は、文字通りに訳せば「良きあり方」、日本人にとって馴染みやすい言い方をすれば、「豊かさ」とでも言えばよいでしょうか。 今回のユニセフの調査では、ウェルビーングとして、①物の豊かさ、②健康や安全性、③教育、④行動やリスク、⑤住居と環境の5項目を挙げ、ヨーロッパ27か国とアメリカ合衆国、カナダを含む29か国の調査結果を報告しています。 それによると、オランダは、29か国中、5項目平均が最も高く、前回5年前の調査に続き、第1位という結果でした。2位以下の上位には、ノルウェー、アイスランド、フィンランド、スウェーデンと、北欧諸国が続いています。(ヨーロッパ以外の国は、カナダ17位、アメリカ合衆国26位との結果で、日本は、前回同様、データ不足のためランキングには入れられていません)。


【特別報告】

経産省の一角に脱原発テントは存続している(2)       三上 治

■土地明け渡し裁判が継続中である 経産省前のテントの入り口に張り出されている日付表には674日(7月15日現在)とある。参院選の最中であるが、7月22日には土地明け渡し請求裁判の2回目が開かれる予定であり、その準備に追われている。といってもテントでは変わらない日々があるだけだが最新の姿を近々の日誌から見てみよう。 


【アメリカの話題】

ジェンダーの平等を目指して .              武田 尚子 

2013年7月4日、独立記念日である。1776年、 アメリカが独立をかちえてから、237年の歳月が流れた。アメリカは、未曾有の富を築き、巨万の移民を迎え入れ、世界最強の軍事力を持つ一等国として自他ともに許してきた。建国の理念に基づき、民主主義のもとにさらなる市民権の拡大をめざして、いくつかの過失をおかしつつも、業績を上げてきた。 現在、政治的、社会的な問題の一つとして重要視されているジェンダーを、上述の背景において考えてみよう。過去30年にわたって、貧しい人々、ゲイやレズビアン、女性や子供などを新しい立法で擁護しようとする運動が世界のあちこちに存在する。 現在享受できる平等な機会と雇用、限られているとはいえそれらへのアクセスについての政策は、直接、間接に、こうした社会運動から流出したものである。


【エッセー】

ジェンダー、いま、女性の役割の再構築を目指してできること     高沢 英子

■はじめに 「若い男の人生への出発点を比較的容易にするのは、人間としての使命と男としての使命が矛盾しないからである」と云ったのは1949年、『第二の性』で大胆な告発をこころみ、50年代の世界に大きなセンセーションをまき起こしたフランスの女性作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールである。彼女は「ひとは女に生まれない。女になるのだ」という有名な言葉を残し、膨大な資料を駆使してこの課題への先駆的な道を切り開いた。 もちろん、それまでもこれに関して、さまざまな告発や提言は無かったわけではない。わが国でも明治以来、平塚雷鳥らの青鞜運動や、高群逸枝の女性史の掘り起こし、その他もろもろの勇気ある仕事がある程度評価されはしたが、残念ながら、それが日本社会に正当に受け入れられ、女性の社会的立場の変革に大きく寄与した、とはとうてい言い難い状況で推移してきたというのが実情である。


【書評】

『世界の99%を貧困にする経済』 ジョセフ・E・スティグリッツ著/楡井浩一・峯村利哉訳       松永 優紀

著者のスティグリッツは、ジョン・ベイツ・クラーク賞、ノーベル経済学賞の受賞者であり、また、クリントン政権下で大統領経済諮問委員会委員長、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストなどを務め、実務家としても活躍する「行動する経済学者」である。現在は、コロンビア大学教授。 本書は、著者が言うには、「“ねたみの政治”ではなく、“効率的かつ公正な政治”についての本である(第10章)」。と同時に、現代社会の問題の“根っこ”に正面から取り組んだものでもある。(最上層がすべてを搾取できるような社会的影響力について)「政治と経済が社会的影響力――社会道徳と社会慣行――を形作る一方、社会的影響力によって政治と経済が形作られ、この相互作用が不平等の拡大に拍車をかけるわけだ(序)」。この社会的影響力こそが“根っこ”の部分であり、(本文にはない譬えだが)そのパッケージには「公正な競争は大事」と印刷されているが、中身は「悪い不平等という麻薬」である。


【書評】

反乱 三上隆著          仲井 富

◆老いるとは未知との出会ひ 80歳といふ世界に入って、想像もしなかった人生に突入したという思いが強い。これは70台という世界とはまるで違うなという思いだ。わたしが俳句の師と仰ぐ本誌主宰の一人富田昌宏さんの句に「老いるとは未知との出会ひ桐一葉」という句がある。これは、2007年に富田さんから戴いた年賀状のなかにあった。わたしは天啓のようにこの句に感動した。さっそく当時出していた四国歩き遍路のミニコミ『老人はゆく』に「未知との出会ひ」なる欄をつくり、遍路で出会ったり、住民運動、社会党などで出会った先人、知己、友人のことなどを書きはじめた。


【本の自薦】

原発をゼロにする33の方法     柴田 敬三

この4月末に、『原発をゼロにする33の方法』というタイトルの、ハンディーな単行本を出版しました。(1200円+税 四六判160頁強。ほんの木刊) PART1は、私、柴田敬三編で、原発ゼロへの33の方法を見開きワンテーマで。PART2は、官邸前で毎週金曜日のPM6時~8時に頑張る、反原連や、たんぽぽ舎、経産省前テントひろばなど、リーダーたちや、東電株主代表訴訟、福島原発告訴団、また世田谷区長の保坂展人さんらを取材。活動の実情とその目指すことや、訴えの主な論点を語ってもらいました。 33の方法は、自分で書いていても苦戦しました。まずアメリカをどう相対化できるか。また霞ヶ関の官僚を民主化できるのか? 原子力村とりわけ経団連を脱原発へ転換させられるのか。その具体的で有効な方法はあり得るのか?


【投稿】

グローバル化を深く知る      柴田 敬三

~日本はガラパゴス化している?~小学校での英語教育、社内公用語を英語に、企業の世界展開。官僚の国家試験にTOEFL?TPPの賛成、反対? 歴史認識や従軍慰安婦問題、ヘイトスピーチにみる、世界からの厳しい視線。日本は今、どうしたらよいのでしょうか?グローバル化は待ったなし! 国家戦略の大胆な見直しをしないと、日本衰退? 日本は、戻れない。突き進め世界へ! 守ろう未来を。 なぜ今、グローバル化対策か? 羅針盤の無い船で、荒海に投げ出された? これがグローバル化を読み切れず20年以上も思考停止している日本の姿ではないでしょうか。 日本の20~30年後、100年後を見据えて、「ほんの木」は、あえてグローバル化を推測し、直言します。 皆様のお子さんや孫の未来と生活のお役に立つことを願って……。


【俳句】   富田 昌宏

◎ 藷(いも)さすや戦(いくさ)無き世を永(とこし)へに  ◎ 早苗饗(さなぶり)といふ語は遥か独り酒


【川柳】   横 風 人

むしかえす 新自由主義で 投機呼び  雇用なく 「働け」ハラスが 蔓延し>


【編集後記】

◎W高気圧と台風が三つ重なつたとかで猛暑がつづき、今年の夏はとにかく厳しい。私たち庶民は節電と熱中症を天秤にかけながら過ごしたから、毎日汗を拭きながらも意識は原発とエネルギーに向う。 最近、ある週刊誌の見出しに、原発を推進する通産省の役人が『猛暑が続けば国民の意識なんてすぐ変わる。猛暑が来て欲しい』と云つたとかいうのがあつた。彼等にはおあつらえの暑さということになる。しかし、その通産省の前では、この暑さの中で脱原発のテント村闘争(本稿『経産省の一角に脱原発テントは存続している(2)』)や、毎週の金曜日官邸前デモも規模は一時のように大きくはないがしつかりと続いている。そして街に節電の目標数値もない。>


■【今月のオルタ動画案内】
 YouTube配信 https//www.alter-magazine.jp/0615

※『憲法改定と平和・民主主義を考える』 杉田敦法政大学教授
※『尖閣諸島問題の見方~領土ナショナリズムの魔力~』
                    岡田充共同通信客員論説委員