第112号(2013.4.20)

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メールマガジン「オルタ」112号(2013.4.20)
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 ◎ 『TPPで食の安全はどうなるのか』          
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女子柔道体罰問題と日本スポーツ界の課題    三ツ谷洋子

今年1月末、柔道の日本女子代表選手による監督の暴力行為に対する告発が表面化し、日本スポーツ界全体に大きな波紋を広げました。私は30年余にわたり、女性の視点から日本スポーツ界に問題提起をしてきました。その立場から、今回の女子柔道の問題と日本スポーツ界の今後の課題について考えてみました。 ●前代未聞の女子選手の行動  1月30日。日刊スポーツ新聞一面の巨大な文字に、目が釘付けになりました。「女子柔道代表ら15人 暴力パワハラ 監督を告発」。小見出しには「園田氏に平手や竹刀で叩かれケガでも試合出場強要」とあり、「本当なのか?」と目を疑いました。 

TPPが持ち込む遺伝子組み換え農業     濱田 幸生

■TPP「内国民待遇」とは TPPで本当に怖いのは、関税撤廃だけではありません。私はTPPの最大の脅威は、外国企業の国内投資が「内国民待遇」となることだと思っています。いまの農業TPP議論はあまりにモノの輸出入に重点が置かれすぎており、関税問題一色といった状況です。それは今までわが国農業界が、外国による国内投資というのを経験しておらず、いい意味でも悪い意味でも国内市場のみを気にしていればいいという体質があったからです。しかし、現実のTPPやFTAは、モノの移動より、資本の移動が重視されています。それを知るには隣国・韓国をみればいいでしょう。TPPに先行して始まっているEU-韓国FTAでは、EUは通信サービスをはじめとして金融、環境、専門職サービス分野でも韓国政府に自由貿易協定により法律改正を要求していく意向を見せています。

■【本の推薦】『遺伝子組み換え食品の真実』      濱田 幸生

今、私は手元に「遺伝子組み換え食品の真実」(アンディ・リーズ 白井和宏訳 白水社刊)という本を手にしています。このような見事な形にまとめられて、国民の手に間に合ったことを感謝します。訳者の白井氏に敬意を表します。さて今私は、あえて「国民」と書きました。なぜなら、この本はただの消費者でも農民でもなく、「TPPという災厄」に立ち向かおうとしている「国の民」に向けて書かれた本だからです。 

イラク開戦に見る政治決断の限界      藤生 健

2003年3月19日に米英連合軍がイラク侵攻を開始して10年になる。当時、英国は労働党のブレア政権であったにもかかわらず、積極的に侵略戦争に加担した事実は、政界に入ってまだ日の浅かった私にとって大きな衝撃だった。 米英のイラク侵略の発端となったのは、イラクが大量破壊兵器を保持しているという疑惑があり、それに対する無条件査察を拒否したこと、そしてアルカイダとの協力関係が疑われてのことだった。 

≪連載≫海外論潮短評(67)

世界の平和と安全のために、 第二期オバマ政権が現実に解決しうる10大課題         初岡 昌一郎

民主党に比較的近い国際問題専門誌『フォーリン・ポリシー』1/2月号が特別報告として表記のテーマを取り上げ、それぞれの分野における専門家、理論家、オピニオン・リーダーたちが10大課題について論じている。各論者の主張の核心のみを要約して紹介する。
  
≪連載≫宗教・民族から見た同時代世界    

新法王にカトリック教会の刷新を期待できるのか   荒木 重雄

新ローマ法王フランシスコは、初の中南米出身に加え、枢機卿時代の、自ら食事を作りバスや地下鉄でひょいと出かける庶民的な暮らしぶりや、気さくな物言いが伝えられて、人気が高い。また、「改革を忘れれば教会は哀れな慈善団体に過ぎない」とか、「すべての宗教者や無神論者とも力を合わせて貧者を救い平和を築こう」などの、法王としての開明的な発言も好感で迎えられている。 だが、新法王が取り組まなければならない問題は、バチカン銀行の不透明な構造、聖職者による児童性的虐待とその隠蔽、法王庁内の権力闘争と、あまりに底が深い。そのカトリックの宿年の課題を、前々代の法王にまで遡って片鱗を探ってみよう。 
  
≪連載≫落穂拾記(21)

様変わりの最近メディア事情       羽原 清雅

先日、毎日新聞、NHKの編集幹部から最近のソーシャル・メディアをめぐる問題について、5、60人の元新聞記者たちとともに聞き、かつ質疑する会合があった。記者生活を離れて10年余、この世界の状況がすっかり変わって、浦島太郎の心境を感じながらも、これからのメディアのむずかしさに思いを新たにさせられた。 そこで、会合の流れからいささか離れるところもあるが、私見を交えつつ、なにか一助になればと思い、いくつかの課題と現状を報告したい。

■【横丁茶話】

マルクスとおならの話                西村 徹

●「資本論」はしんどい 須磨がえりという言葉がある。「源氏物語」五十四帖を読破しようと志して十二帖「須磨」のあたりで大抵は挫折することをいう。 マルクスの「資本論」を投げ出すのはどのあたりだろうか。私は第一巻・第一篇・第一章・第三節のあたりで早くもダウンした。ほとんどスタートで棄権したに等しい。リンネル20ヤールはコート1着に等しいとか、5つのベッドは1軒の家に等しいとか、逆の場合もおなじだとか。苦手だった算数の文章題みたいで急速に興味が失せた。とにかく退屈で、とてもこんなしんどいものを読み通す根気はない。そう思ってきた。

■【北から南から】
中国・深セン便り

『春節・張家界旅行記 その3』  佐藤 美和子

2013年2月初旬の春節休暇に訪れた、湖南省張家界旅行記の最終編です。 久々の旅行だったので、張家界では少し贅沢をして、5つ星ホテルを利用しました。バスタブもあって湯量もたっぷり、部屋も広々と清潔で、なかなか快適に過ごせました。 その快適なホテルでトラブルが勃発したのは、宿泊3日目の朝でした。20年ほども前ならば、中国でもホテルに限らず高級な場に出入りする人は、相応の振る舞いができる人か、もしくは周りの状況を見てとれる人ばかりだったように思います。ところが今は、あまりに急激にお金持ちになりすぎて、マナー方面はどこかに丸ごと置き忘れてきたような人々も、大挙して現れてしまいます。社会常識や公共ルールはまるで無視、平気でその場にそぐわない行動を取っちゃうんです……。

ビルマ/ミャンマー通信(4)       中嶋 滋

ヤンゴン市役所前をはじめ街のあちこちに水掛け祭り用の舞台がつくられています。鉄骨を組んだ大掛かりなものから日本のお祭りで良く見かける竹や葦を組んだちょっとした小屋風なものやテントまで、本格化する暑さの季節と正月を迎える準備が進められています。 その一環でしょうか、寄附を募る宗教的活動も活発に展開されています。音楽と説法、呼びかけが、街角に机を置き、あるいは小型トラックを使い、かなりの音量で行なわれています。騒音防止条例などがないのを恨めしく感じることも度々あります。 今年の場合、4月12日から21日までが、水掛け祭りと新年を祝う休みとなります。多くの人々が故郷に帰ります。私たちの事務所のZさんもバスで10時間かけて祖母と3人で暮らしている父母のもとに帰ると嬉しそうに話しています。この期間は、旅行案内書にも旅行を控えた方がよいと書かれているように通常の営みは一切停止され、前半の期間は街を歩けば相手構わず水を掛けるまさにお祭り状態が続くそうです。

フランス・パリ便り(その7)難しい局面を迎えたオランド政権       鈴木 宏昌

東京では桜も散り、本格的な春になったと聞いているが、パリはいまだに冬景色で、厚いコートが目立っている。地球の温暖化とは逆に、今年は長い冬で、珍しくパリにも何回か大雪があり、そのたびに交通機関が大混乱に陥った。 私も1月の大雪の際に、その混乱に巻き込まれ、郊外の自宅に帰るのに苦労した。午後から雪が積もりだし、夜には電車やバスも止まったので、タクシーを拾おうとリヨン駅に行ってみたら長い行列。雪の降る中、真夜中に2時間近く待たされた苦い経験をした。

【韓国レポート】

最近の韓国事情       梁 世 勲

最近の韓国事情を語るなら、先ず北朝鮮のミサイル発射と核実験、韓国初の女性大統領朴槿惠政権の誕生である。それに新しい日本、中国の政権とアメリカ、ロシアの政権誕生が朝鮮半島を巡る国際環境を如何に作り上げるかであろう。1.北朝鮮のミサイルと核(1)政権維持手段北朝鮮は体制維持の為、核実験とミサイル発射をアメリカとの効果的交渉手段であると信じているようである。3代目となる政権は一貫してアメリカに対し体制を認めてくれるよう要請してきた。北朝鮮の戦略武器は体制維持の保障を求めるための唯一の手段である。アメリカを含め国際社会が求めている国際社会の一員としての責任とか開放、改革は、ライバルの韓国の経済、民主化に比べ、勝算はともかくひょっとしたら体制崩壊に繋がる恐れがあるとして絶対に受け入れられないものである。
■【エッセー】

映画「約束」の語るもの           高沢 英子

3月始め、私と娘は渋谷の小さな映画館「ユーロスペース」で、映画を見た。題名は「約束」。副題に―名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯―とある。 内容は、東海テレビ取材班が、真犯人として死刑判決が確定している人物に密着し、事件捜査の経緯を丹念に追った、半世紀に亙るドキュメンタリー映画で、死刑囚、奥西勝に扮したのは、仲代達矢であり、終生息子の無実を信じ支え続けた母親役は、樹木希林、監督は斉藤潤一。いづれも好演であった。 話は1978年に遡る。東海テレビの技術局で、ドキュメンタリーの取材や撮影に携わっていた門脇康郎記者が、1972年、最高裁において真犯人と確定され、死刑判決を受けた奥西勝という人物の判決文を読んで、疑問を抱き、独自に真犯人解明の取材活動を始めた。 

■【投稿】

児童ポルノ法改正問題の留意点  岡田 一郎

一部報道によれば、自由民主党(自民党)と公明党の政策担当者は、野党時代に国会に提出して廃案となった35本の法律案のうち7本を今国会に提出することで合意した。この7本には「児童ポルノ禁止法案」も含まれるという。自公両党が提出を予定している児童ポルノ禁止法案の内容は未だ明らかではないが、自公両党が2011年に提出した改定案と同じものだとすると大変な問題をはらんでいると言わざるを得ない。

■【俳句】   富田 昌宏

一票の格差違憲や春嵐  農といふ一字の重み風光る

【川柳】   横 風 人

戻れない 技術信仰と 自惚れは  肩車 重たい明日も 「想定外」

【編集後記】

日本女子柔道のナショナルチーム国際強化選手15名が園田監督らの暴力行為などをJOCに告発したことで社会の注目は日本スポーツ界の体質問題に集まった。しかしこの事件が意味するものは単に柔道や日本スポーツ界内部に限られた問題なのか、それとも広く日本社会に根差すものなのか。日本は世界経済フォーラムの2012年男女平等指数(ジエンダー・ギャップ)では世界135国中なんと101位という惨めな状態にある。中国に対して何かと先進国風を吹かす日本だが北欧各国が上位を占める中、中国67位のはるか後塵を拝している。